197話 ヴィスターンの過去③
「五光星……名前だけは知っていたが、誰が五光星なのかはあの大天使様さえ知らないそうだ。一体どんな人達なのか」
指定の場所に着いたヴィスターンは、腰を掛け待機していた。
(かなり静かな所だ。)
呼ばれた場所は天上要塞の中層ではあるが、あまり手入れの届いていない森林でほぼ放置されている。基本的にだれも来ないような場所だ。
(いつまで待てば良いのか。そもそも何かのいたずらだったんじゃ。)
「なに……?」
瞬きをした時、ヴィスターンは別の場所に立っていた。
「ようこそ。五光星の間へ」
そう言った人物は、ヴィスターンがよく知る人物だった。他にも後方に4人立っているが、光で顔が良く見えなかった。
「父さん……!」
「五光星の間に呼ばれる程の実力をつけるとはな……本当に強くなったな。ヴィス」
目の前に現れたのは紛れも無くヴィスターンの父親、ヴィンティスだった。
「今まで、なんで一度も会いに来なかったんだよ……! 僕はずっと姉さんと二人で……そ、そうだ! 父さん! 姉さんがどこに行ったか知らないのか!?」
ヴィンティスは黙ったまま何かを考え込んだ。
「五光星である私は、天上要塞の事はほぼ全てを掌握していると言っていい。だが……お前に真実を知る覚悟があるのか? ヴィス」
「何の話だよ……。僕は姉さんの居場所が分かればそれで……」
「ヴィス! 今のままではもう姉さんに会うことは出来ないんだよ。お前はただの中層生まれの天族だ。天上要塞の事を知り、姉さんに会うには実力で五光星になるしかないんだよ……!」
くそ、五光星じゃないと会えないってどういう事なんだよ……。
「分かった……僕はとにかく姉さんに会いたい。五光星にはどうやってなるんだ。何だってやってやる」
「いい返事だ。ヴィス」
父親は振り返り、他の五光星を見た。
「聞いたか五光星たちよ。ヴィスターンの意思は聞いた。これより継承試験に移る」
「継承試験……?」
「そうだ。これから結界の中で私と戦うのだ。闇の剣星である私に打ち勝ち、闇属性最強の剣士と言う事を証明してみせよ!」
そうして父との試合が唐突に始まった。
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「流石……私の息子だ」
「父さん……。貴方は……」
長い戦いの末、結果はヴィスターンの勝利。父親は明らかに手を抜いていた……。ヴィスターンに真実を教える為なのか、理由は分からない。
「さて、お前は五光星の資格を得た。私から五光星の祝福を受けることになるが、私自身も継承の儀式を行わなければならない」
「また明日、同じ時間にあの森へ来てくれ。あの扉の先、そこを抜け真っ直ぐ行けば元の場所へと戻れる。お前は全ての情報を受け取り、真実を受け入れ立派な天上要塞兵となる事を信じているぞ」
「ありがとうございます……。父さん」
「真っ直ぐ寄り道せずに帰るんだぞ」
そう言われ僕は開いた扉を越え真っ直ぐに薄く光る道を辿って行った。
「もうすぐ姉さんに会えるのかな……。元気にしているかな」
真っ直ぐ進む間にいくつかの扉はあったが、気にせずに前に進んでいた。しかし、ある一つの扉の前でヴィスターンは止まった。
「姉さん……?」
ヴィスターンはその扉の先に姉さんの気配を感じとった。
真っ直ぐに進めと言われていたが、その気配を感じると居てもたっても居られなかった。
「この先に絶対にいる……!」
ヴィスターンはその扉を開け、階段を上がっていった。
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「なんなんだ……ここは……」
階段を上がり、その先にある扉を開けたヴィスターンは絶句した。
そこには鎖につながれた全裸の女性が何人も居て、皆半分虚ろな目をしている。
その女性達に対して、全裸の男が腰を振っていた。
「おい……なんだこの部屋は」
「ああん? 誰だお前。あ、新しい選出者か? なら説明がいるな……といっても簡単な事だ」
男は話している間も腰を止めようとしない。正直女性もこの男も直視できない状況だ……。
「ここに居る女達を犯せ。体力が続く限りな……うっ……ふう……」
男は行為を終え、全裸のままこちらへと向いた。
「まぁ殆ど反応が無いから楽しみも何もねーけどな」
「何の為に……こんな事を……」
「は? お前ちゃんと話を聞いてこなかったのか? 天族繁栄の為だろうが。聖母に覚醒した女をここに捕らえ、子供を作る為に働く……力尽きるまでなあ」
「繁栄のために捕らえて……無理やりこんな事をするのか……」
「まぁそこは気にすんな。何も感じちゃいねーよこいつらは。3年間専用の牢獄で眠りにつき、皆あんな状態になるからな! まぁ……3年間では起きちまう場合もあるみたいで、今後は5年間そこに入れられるそうだがな。あ、ちなみに子供が生まれたらあの端の泉に入れろよ? 下で誰かが拾って、育ててくれるからな」
「なら……僕もこうやって生まれたのか。本当の親はお前の様な奴らだと……言う事か」
「あっはっは! お前まだ若いな? 実は俺の子かもしれないな!」
その言葉を聞き、ただ唖然とするしかなかった。絶望しているのか何なのか分からない……。これも天族の真実の一つだと言うのか……。その時、ふと一人の女性が目に映った。
「ね……姉さん!!」




