180話 フォート城到着
「ウォレックさん! 本当にありがとうございました!」
「じゃぁおっちゃん! ピックとナイフ宜しくね!」
「おうよ。二人が戻るまでにはしっかりと用意しておこう! 気をつけるんじゃよ」
「じゃぁ行って来ます!」
翌日の朝、俺達は荷物をまとめ、フォート城を目指した。ここからだと2~3日で着くらしい。早いものだな……。
「ピックとナイフ、楽しみですね!」
「そうだな! めちゃくちゃ贅沢なピックとナイフになるな」
新しい武器とか道具とか……やっぱりわくわくするよな。俺の場合はシャドウノヴァ(仮)から武器を変えるつもりは無いけど……。
・・・
・・
・
その後も山道が続いた。幸いな事にさっきの村からフォート城までは道は整備されている。別でトロッコの道ができてからはあまり使われていないようだが……。
一応フォート城まで行く方法は2パターンあった。この道を通るか、トロッコ道を進んで行くか……。
この道を選んだのは道中でもしかしたらターゲットのシャドウキメラに遭遇するかもしれないと思ったからである。
……まぁ会わずにもう2日経っているが……。
「む……フィアン、見て下さい目の前……」
「うわ……なんだこりゃ」
道より少し外れた所に、明らかに自然現象ではない小さなクレーターが無数にあり、その部分だけ一帯更地と化していた。
「少し近くで見てみるか」
俺達は馬をその場に停めて、その場所へと下りて行った。
「爆撃でも受けたのかなってレベルだな……」
「ですね。しかもこの痕、そこまで古くないですよ」
「てかこのクレーターのサイズ……ゴルフボールくらいじゃね……?」
「たしかに……9割方ランク10の仕業な気がしますね……」
「とにかく、ここから一切警戒を緩めないようにしよう。突然攻撃されるかもしれない。姿が見えないしな」
「ですね」
ずっと気は引き締めているつもりだったが、この惨状を見て改めて注意深く進もうと思った。
・・・
・・
・
「やっと見えましたね!」
「よっしゃあー。お疲れ様だね!」
その後は何事もなく、フォート城付近へとやってきた。フォート城は岩山に囲まれており、出入り口以外からの侵入は困難だ。言ってみれば岩山が自然の防壁になっているのだ。標高も高いし、津波で水が溜まってしまう事も無いのだろう……多分。
俺達の来た道はあまり人通りが無いが、横を見ると、トロッコが忙しそうに動いている。
それを横目に俺達は城下町へ続く門前へとやってきた。
「おや、坊や達どこから来たんだ?」
「こんにちは。瘴気の森方面から来ました。僕達こんななりですけど、天族です」
俺達はこの前のように、冒険者カードと天族のリングを提示した。
「ほう……すごいな。こんな子供の天族は初めてみたよ……」
「そうなんですか?」
「ああ、そうだとも! 天族で冒険してる人たちは大体もっと成人の人とかだからね」
「まぁ子供の天族って言えば、天上要塞に住んでる純粋な天族ばかりですから見ることはあまり無いのでしょうか……」
「ということは覚醒天族かい! すごいなあ。私なんて結局試練の内容は分からず、ここで警備兵だよ……」
「いやいや、それも立派な仕事ですよ!」
「ありがとうね……。おっとすまない足を止めてしまって。通っていいよ!」
「有難う御座います!」
俺達は簡単な会話を終えて、城下町へと入った。
「この国だけ孤立しているからもっと静かな町だと思ってたんですが……」
「ああ、かなり賑わっているな」
賑わい方はなんとなくトゥーカを思い出す。
鉱石業で賑わっており、製鉄所や鍛冶屋、武器や鉱石が忙しそうに搬入出されている。
「トゥーカと同じく鉱石関係の仕事が盛んみたいですね」
「そうだな……」
トゥーカとフォートの鉱石業には大きな違いがある。
簡単に言うと取れる鉱石の種類が違うって事なんだが……。
トゥーカは安価な鉱石が大量に採れる鉱山が多いのに対し、フォートは品質の良い鉱石が豊富だ。その分産出量はトゥーカと比べるとかなり少ない。
特にフォートは魂片を帯びた素材がよく採れるみたいだ。立地の悪さも相まって、中央都市では鉱石は死ぬほど高く取引されている。
俺達がここで仕入れて、ワープで販売したら値段が崩壊するだろうな……。天族がワープを禁止しているのは、こういう理由もあるかも知れないな。
「フィアン! ここに食事処がありますよ!」
「お! いいね。ちょっと飯にしようぜ! ルーネもテーネも食おう!」
「わーい! 嬉しいですっ!」
「……甘い物不足」
元気良く飛び出したルーネテーネと一緒に、目の前の飯屋に入る事にした。