175話 兄妹に修行
「ううん、かあちゃん……。あれ……」
「目が覚めたか。ギル」
俺達も気づいたら寝ていて、朝を迎えていた。
おれたちはこれからフォート領へ行かなければならないが、この二人を置いて行く訳にもいかない……。
困った俺達はゼブに連絡を入れることにした。
「……というわけでさ、その村に迎えてあげたいんだけど」
「なんて酷い話なんだ……」
「ぐすん……。フィアンとネビアの部屋が空いてるし家に住まわせてあげましょう!!」
ゼブとティタは号泣していた。
「父さん達ここまで迎えに来てくれないかな? それまで俺達はここで待ってるからさ」
「そうだね。そこまで行ったのに、戻って往復となれば余計に時間がかかっちゃうもんね。わかった。僕とティタで迎えに行こう」
「了解! 座標は送っておくから、気をつけてきてね!」
そういってデバシーでも会話を終え、ギルたちに予定を伝えた。
「あと2週間の辛抱だ。それまで頑張れよ?」
「わかった……! ありがとう兄ちゃん!」
とりあえず旅の予定は遅れるが問題は無い。
「なあフィアン兄ちゃん……!」
「おうどうした!」
「おらに剣を教えてくれませんか!」
「剣術をか……?」
「うん! フィアン兄ちゃん腰に剣装備してるし、剣士様なんだよね? おらは今まで何もせずに生きてきた! でもそれじゃ妹は守れない……! 自分も力をつけて、妹を守れるようになりたいんだ!」
「そうか。いい心がけだな! 2週間程しかないが、基礎はしっかりと叩き込んでやるよ!」
「ありがとう!! おら頑張るよ!」
とりあえずデバシーに予備として突っ込んでいた、鋼鉄の剣を取り出し、風切の籠手と一緒に貸してあげた。
「サイズは微調整でいけるな! 俺より少しちっさいだけだもんな!」
「結構おもたいんだね……」
「これを重く感じるのか……なら筋トレもしっかりやっとかねーとな!」
「あっ……フィアン! 二人で盛り上がっちゃって……」
「……」
「ミリュちゃん、魔法でも覚えてみますか?」
ミリュは物凄く頷いた。ミリュもただ守られるだけなのは嫌らしいな……。
・・・
・・
・
こうして2週間という短い期間だけど、二人には基礎体力作り及び魔装魂、そしてミリュには水と火の初級まで、ギルには柔型の初級までをしっかりと伝えた。
「二人とも何となく顔つきが変わりましたね!」
「へへ……本当かな?」
「おーい!」
「あ、迎えが来たぞ!」
あっという間の2週間だった。それにしても人に教えるのがこんなにも難しいとはな……。いい経験になったな。
「じゃぁこの子達は父さん達でしっかり連れて行くからね」
「シャドウがきても私達が二人をしっかり守るわ!」
「フィアン兄ちゃん、ネビア兄ちゃん! 本当に有難う!」
「気にすんな! また帰る事があれば教えてやるよ!」
「うん! あ、この剣と籠手……」
ギルは籠手を外して帰そうとしてきたが……、
「ん……いや、いいよ! それは俺からのプレゼントだ。しっかりと使いこなせるようになれよ?」
「え、でも……!」
「どうせ、殆ど使うことがなかった代物だ。倉庫に眠るより使われたほうが良い。貰ってくれ」
「わかった!! 大切にするぞ!」
「ミリュ、僕からはその溶岩の盾をプレゼントです! しっかりと魔方陣覚えるんですよ?」
「……」コクコクッ
「母さん! ギルは剣の筋が凄くいいんだ! 時間がある時に教えてあげてほしい!」
「ミリュも魔法は結構出来ます! 父さん! こっちもお願いしますね!」
「ふふ……君達二人を卒業させてすぐに新入生か。いいよ! しっかりと教えてあげるよ」
ミリュも心なしか嬉しそうにしている。今からしっかりと練習すれば……こいつらもきっと強くなるだろう……。楽しみだな。
「さて……。じゃぁ俺達もそろそろ行くよ。っていうの二回目だな……」
「あはは。そうだね。気をつけて行って来るんだよ」
「ああ!」
会話もそこそこに俺達は再びフォート領へ向けて歩み始めた。