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(完結済)異世界に転生したら俺が二人になってた。  作者: TOYA
第6章 ジャックの依頼編
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170話 神冶さんとジャック

――神冶さんラボ


「神冶さーん!」

「おお! 二人とも帰ってきたか! 久しいのう」

「神冶さんも変わりなく元気そうだね!」

「ふぉっふぉ! そりゃほぼアンドロイドじゃからのう!」


 久しぶりに来たラボは色々改造されており、よく分からない機械や液体が稼働している。とりあえず聞いたら帰れなくなりそうなので、触れないようにはするが……。


「そうじゃ! ネビア君! また新しい複合魔法の魔方陣が出来たんじゃよ! 良かったら使ってみんかの!」

「おお! 本当ですか! 見せて下さい!」

「ふぉっふぉ。食いつきが良くてやりがいがあるのう。これじゃ!」


火+土+風

プリズムウォール

超火力の火で砂を燃やし、光学ガラスを生成、エアカッターで研磨・形成を行う。

出現する壁は大きな正三角柱の形で、光を分散・集束させたりする。

対魔法強度はそこそこあるが、物理的なダメージには弱い。


 魔方陣の形はスチームエクスプロージョンとそこまで変わらないが、3つの魔方陣が三角形に並んでいて、その上に大きなの魔方陣が重なっている。もうごちゃごちゃしていて全然理解が追いつかない奴だ……。


「プリズムって……そんな物が生成できるんですか……?」

「そうじゃ! 込める魔力は寸分の狂い無く、均等に込めねばならんぞ? 砂の形状・形態変化の部分がめちゃくちゃシビアでな……。ここの術式を見てくれ」

「む、ここ……凄く繊細ですね……」

「そうなんじゃよ! これでもかなり緩和はしたんじゃ!」

「なるほど……また覚えるのが大変ですね……!」


 おいおい、また始まっちまった……これは放っておいたら長引くな……。


「ネビア! それも大事だけど、伝えないといけない事があるだろ! 神冶さんにさ!」

「え? ああ……そうでした!」

「む? なんじゃい?」


 俺は20階の出来事を全て話した。施設が生きていた事、ジャックという人が居た事、そいつが施設の機械を熟知していた事。色々だ。


「ジャック……まさかこの世界でその名を聞く事になるとは驚きじゃわい……」

「てことは……神冶さんの知っている方なんだね……?」

「……そうじゃ。ジャックは同じ研究所に入った後輩じゃった。分野は少し違ったが、研究所に入る前から親交はあってのう。お互い分野は違えど意見を言い合い、その意見が役に立ったもんじゃ……」

「じゃがある日、人体実験に手を出してのう……非人道的だと思っておったが、わしは知らないふりをしておった……。それを境にぱったりと話さなくなり、交流も途絶えた。その後しばらくして、ジャックは人体の生命エネルギーを力とする、ライフトリガーを開発し、自国の戦争に大きく貢献したんじゃ。久しぶりに見たその姿はもうわしの知っているジャックではなかった。何があったのかは知らぬ……」

「人体実験に、ライフトリガー……」

「生命エネルギーを使用するライフトリガー……。人体実験が役にたったんじゃろうな。すなわち、いまこの世界に出回っているトリガーとほぼイメージは一緒じゃ」

「そうなんですね……」

「何故トリガーと言うこの世界に合わない武器が出回っているのか。これでやっとはっきりしたわい! ジャックが量産していたんじゃな……!」

「なるほど。確かに唐突過ぎる技術な気もしてました……」

「その20階のラボにはそういうトリガーが量産されている光景はあったかの?」

「いや……無かったと思う。大きさもここ位だったし……」

「そうか。とにかく、ジャックにはわしが居る事は黙っておいてくれんか?」

「え? どうして?」

「いや……なんだか面倒な事になりそうじゃろ? この世界は大きく改変したくはないし、わしは魔法の研究ができればそれで満足じゃからな」

「あはは、何か単純な理由ですね」

「あとな、この姿を見られたら解剖されかねんわい」

「それは……ありそうだ」

「てかジャックさん、若い成人男性って感じの姿だったけど?」

「そうか……奴は自身の肉体をもいじるようになったんじゃろう。本来ならわしより少し下の歳なだけじゃからな」

「まぁとにかく……奴には気をつけることじゃ」

「分かった!」


 とはいったものの、結局分かった事って神冶さんとジャックは同じ世界に居た人だったってことだけだな……敵か味方かも今は良くわからないし、とりあえずは様子見……といった所かな。


「よし、じゃあ魔方陣の続きじゃ!」

「はい!」

「ネビア、先に家に帰ってるぞ……?」

「了解です! 僕もすぐに戻りますので!」


 いや……絶対すぐじゃねーだろ! と心で突っ込みを入れながら俺はラボを後にした。


・・・

・・


「ただいまー」

「まあ!! フィアン!! 帰ってきてたのね!」


 そういって母さんは俺をぎゅっと抱きしめた。


「ちょっと母さん……苦しいよ」

「流石成長期ねっ! まだまだ大きくなるわよ!」


 母さんは俺を撫でまわしながら周囲を見渡した。


「ところでネビアは?」

「ちょっと寄り道してて……夕方までには帰ってくるんじゃないかな……」


 俺はとりあえず椅子に腰掛けて一息ついた。


「フィアン。天族に覚醒……本当におめでとう」


 父さんは祝いの言葉を口にしたが、完全に喜んでくれているようには見えない。

 天族として色々あったから仕方がない……。


「有難う。父さん」

「天上要塞にはもう行ったのかな?」

「行ったよ。あれも転送で行くもんだからびっくりだよね。自分らが使うのにそれ以外は完全に使用禁止だなんてね……」

「頑なに転送を禁止にする理由……未だによく分からないからね。まぁどちらにせよ今の人の技術では、フィアンが使うあの超危険な転送が関の山だけどね」

「そうだよね。そんな中、あの転送は危険もないし良くできてるよね……」

「とにかく、謎が多いよ……! 探究心が止まないね本当に!」

「あはは……父さんらしいね」

「神冶さんのお陰でより色んな事がわかってきたけどね! 気になる事は何でも聞いていいよ!」

「んー。じゃあこの世界ってこの島しかないのは本当?」

「……」

「あれ、父さん?」

「いや……いきなり壮大な質問だったから驚いただけだよ……」

「もしかしてそれは知らない?」

「いや、実はそれも神冶さんのお陰で少し分かったんだよ」

「おお!」

「結論から言うと、多分それで間違いない」

「そ、そうなんだね……!」

「神冶さんのナノマシンを使用して、広域拡散して海を渡らせてみたんだ」

「超遠隔操作だから、綺麗なイメージ映像を作成する事はできなかったんだけど……海の端はこうなってるんだ」


 ゼブは自身のデバシーを見せて、俺に説明してくれた。もうデバシーをかなり使いこなしているぞこの人……。

 その画面に移ったのは画面いっぱいに続く滝で、その下は真っ暗で何も見えず、どこまで続いているのかも分からない。ナノマシンもその場所を越えると闇に飲み込まれ、帰還が不能になるような場所だそうだ。


「これが世界の端……」

「そうだよ。綺麗な正円状にこの滝が世界の端になっている。これ以上先はナノマシンも行けない……無の世界が続いているんだと思う」

「吸い込まれそうなほどの真っ黒だね……」

「海にぽつんとあるような島も無かったし……本当にこの島だけかもしれないね」

「そうなんだねー。面白くない結果だな!」

「いや、父さんは諦めないよ。まだ見落としている何かがあるかもしれない。海の中も見てないしね! これからも色んな研究をしていくよ!」

「うんうん。頑張ってね父さん!」

「ただいまですー」

「あ! ネビア! やっと帰ってきたか!」

「まあ! ネビア! おかえりなさい!」


 こうして家族が揃って、久しぶりに皆で食事をする事になった。

 こうやってのんびりした時もたまにはいいもんだな……。

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