17話 休息の時
凄い……頭の中に直接知識を放り込まれるような感覚だ。
光に包まれながら、入ってくる知識を超高速で理解し、自分なりに組み立てて行った。知識が入ってからは試したい事が山程増えた。
終わってみれば、時間にして5分くらいだったと思うが、非常に長い時間に感じた。それだけ脳がフル回転していたんだろうか。光が終わり目を開けてみると、まだ女神様の前に俺達は居た。
「あれ……? 流れ的にはこれで帰るもんだと思っていたけど……」
ふと目をやると、女神様の横に、クリーム色のような綺麗な顎鬚を生やしたおじいさんが居た。
「ほう、君達が噂の子達か。ふむ……」
おじいさんは俺達の事をまじまじと見つめ、なにやら一人で頷いていた。
「君達は凄いんじゃよ! 試練の達成速度、最速記録を大幅に塗り替えたんじゃ! 過去に一番早かったのが、試練を受けてから、2年と半年じゃ。君達はたったの1時間ちょっとだからのう……もうこれを越える事はよほどの運と実力が無いと無理じゃ。もう現れないじゃろうて」
「えっと、そういうランキングみたいなのがあるのでしょうか……?」
「ふぉっふぉ……順位付けはあるぞい。我々で厳重に管理されておる。試練達成速度や総合剣術ランキング、総合魔術ランキング、各属性、型別ランキングなど……まぁ色々じゃ。5年に一度、天界より順位を決める決闘が開催されたりするんじゃ。それ以外でもランキングは変動するんじゃが、適正を図る為にそのような事もされておる。君たちも頑張っていれば声がかかるかもしれんのう」
すごいな! そんな決闘みたいなのがあるのか。一回くらい参加してみたいもんだな。正直シャドウナイトに手間取る程度の実力じゃ全然だめだろうな……今自分がどのくらいの強さか知りたいな。
「大天使様、そろそろ覚醒の儀を……」
「おや、すまないのう。アルネ、ではこちらへ……」
アルネおばあさんは大天使と呼ばれているおじいさんに呼ばれそのまま傍までゆっくりと近づいた。歩くのも結構大変そうだ。
「アルネよ。全ての試練達成おめでとう。達成報酬として、君は天族への覚醒の権利を得た。報酬は受け取るかの?」
「はい、ありがたく頂戴致します。こんな老いた身体で何ができるかわかりませぬが……長年天族になるのは私の目標でした」
大天使様は微笑みながらアルネに伝えた。
「そうか。では儀式の間に移動するとしよう。一緒についてきなさい」
「あの、僕たちはどうすれば……」
「おおそうじゃった。君たちはそこで少し待つんじゃ。3人一緒に帰還させよう」
「てか、ここに来てから結構時間経ってるよな……? 俺達どうなってんだろ……?」
「心配は要りません。ここの次元は通常の世界と逸脱しております。1時間居ようとも、戻った時には1秒すら経っておりませんよ」
「それはすごい……ですね」
そんな場所もあるのかこの世界は! まっさきに浮かんだのは時の止まったところで修行をして強くなるとか、そんなアニメ的な事だった。
まぁ自分の意思で入ったり出来る訳では無いから、そんな事は不可能だろうけど……。しかもこの場所は非常に不思議な感じで、光球とかをだしてみようと思ったら、乱されるような感覚になりうまく発動できない。自分が出した魔力が空気に引っ張られるような感覚だった。
闘気も同じで、魔装魂を纏おうとしても、うまく纏えない。身体ぎりぎりには纏えたが、いつものような硬さは無いだろう。
そういった事を考えているうちに、目の前が光りだして、大天使様と中学生か小学生位の女の子が戻ってきた。
「おや、坊や達まだおったのかい。終わって先に帰ってると思っとったんじゃが」
そうやってその女の子はおばあさんと同じような話し方をし始めた。
「にしても、本当に坊や達のおかげじゃ! 天族に覚醒して、この通り身体もぴんぴんじゃよ!」
「……え? えっともしかしてアルネさん?」
「おお、そうじゃよ! 若かりし頃の姿に戻ったんじゃ! 覚醒前はええ歳じゃったが、天族年齢で言えば、わしの歳でもこの辺からスタートだそうじゃよ」
「アルネよ、あまり詳しくは話してはならんぞ。この子たちはまだ天族ではないからのう」
「あ、大天使様……。申し訳ございません」
アルネさん、すごく肉体美というんだろうか。ものすごく健康的な体つきで、少し褐色がかった夏のような雰囲気を醸し出した少女だ。話し方はおばあさん口調なのがまた面白いというか……可愛い!
「では皆様、そろそろ帰還いたしますよ」
女神さまがそう言うと、辺りは光に包まれ、また意識が一瞬遠のいていった……。