135話 新たな問題
「そこまで!!」
結局、決着がつかないまま試合は終了した。
「では少しリセット入れますのでそのまま待ってくださいねー」
そういうと結界は光り輝き、少し前の状態へと戻った。
「ふう……傷は治るけど、ついでに精神的な疲れも取れればいいんだけどな」
「贅沢を言っちゃだめにゃ」
そんな会話をしながら両チームは握手をし、試合を終えた。実に良い試合だったな……。得る物は無いかと思ってたけど、そんなことなかったな。たまには覗かせてもらおうかな。
そう思いながらも他のコートをちらっと見るに、多分勉強になるのはこの二組だけだろう。他の奴らより遥かにレベルが高いや。
「おいおい! やっと終わったのか。つまらねー試合を長々と続けやがってさー」
「! ああ……申し訳ないです。キャップさん……」
な! あの強気なケイトが敬語を使ってるだと……?
その男を見ると身長は結構高く、体格もでかい。贅肉と筋肉が凄くついてるって感じの奴だ。隣にいかにもコバンザメの様な奴……というかこいつ、いつかのやんす君じゃねえか! ちょいちょい見かけるな……。
――バシッ!
キャップは突然ケイトの頬を叩いた。そしてケイトはそのままこけてしまった。
「おい! 俺様の名前を呼ぶときはキャップ様と呼べ! 何度言えば分かるんだ!!」
「は? お前なにして……」
俺は割って入ろうとしたがケイトに手を止められた。
「いや……フィアン。いいんだ」
ケイトは立ち上がり埃を叩いた。リッタ、オリアも拳を握り締め我慢してその様子を見ている。何故……何を我慢する必要があるんだ……?
「ふん。じゃあ行くぞ。今日は約束の日だ。しっかりと全身を見せるんだぞ……?」
「そ、そうだな……じゃぁみんな……またな」
ケイトは無理やり手を引っ張られながら、キャップに連れて行かれそうになった。その顔には涙が見えた。あいつが涙……だと……。
「おい」
――バキッ!
キャップは思いっきり俺に殴られ吹き飛んだ。
「はわわわわ! 何をしてるでやんすか!!」
「いってぇ……。この俺様を殴ったのはどいつだ……?」
「フィアン!! 全力で謝るでやんす! 死ぬ気で謝ったら今なら許してくれるでやんす!」
「何故こんなクズに謝らないといけないんだ……?」
「こ……この方はニューハット家のご子息でやんすよ!?」
「誰だよそれは?」
「理事長の息子さんでやんすよ! 貴族の中でも最高クラスの方達でやんす! ほらあやまるでやんす!」
「お前……ケイトをどこに連れて行くんだ?」
「ふん……教えてやろう。こいつの母親はニューハット家が経営する病院に入院しているんだ。ずいぶんと支払いが滞ってるから、差し押さえとしてこいつを少しの間、借りるのさ。つまり……俺様のおもちゃになるんだよ!!」
気色悪い笑い方をしながらキャップは話した。
「そうだ。元々はこういう契約だった。最後にリッタ達と試合をしたら行くと言う約束だったんだよ……」
「情けで昨日中に赤3払えば延期してやろうと言ったのによ。一つも持ってきやがらねえ!」
「じゃぁとりあえずこれで今日は帰れや」
そういいながら俺は赤2をそいつに投げつけた。
「代わりにお前が払うってか!? どっちにしろ赤1足りねーだろうが全部もってこ……」
俺はそいつの胸倉を掴み持ち上げた。
「うぐ……貴様……まだ俺様に対してそんな事を……!」
「これで全部だ。お前は女性に暴力を振るい泣かした。これは慰謝料赤1以上の最低な行為だ。本来なら赤2でも払いすぎだと思うが?」
「ぐぐ……はな……せ。わがった。これでいい……!」
そう言われ俺はぱっと手を離した。その勢いでキャップは尻餅をついた。
「お前……フィアンと言ったな。覚えておけよ!!」
「まぁ……どちらにしよ次の時に払わなければ、約束どおり俺のおもちゃになってもらうからなぁ……?」
キャップはそう言って赤2を握り締めそそくさと退散してしまった。
「フィアン……」
あの気の強いケイトはその場でへたり込んで俺の名前を呼んだ。
とりあえず頭をぽんぽんと撫でた。
「フィアン……! 怖かった……覚悟はしてたけど、やっぱりその時になると……!」
「お前は俺のパーティと連合組んでくれるんだろ? つまり仲間だ。仲間は助け合わないとな」
「ありがとうフィアン……!」
とりあえず落ち着くまでは頭を撫でてあげた。それを皆何も言えずただ黙って見守っていた。