132話 夢の中
「なんだこれは……」
真っ白に包まれた後、目の前に現れてきたのは何も無い平原で、少し奥の方に対立している二つのグループが見える。
「あれは……俺……?」
いや……俺ってなんだよ……。とにかく、赤い髪の男の子が青い髪の男の子が対立しているように見える。
何を言い合っているのかは遠くて聞こえない……。というか皆翼が生えているな……。天使達か何かだろうか……。
でもなんだろうこの感じ……凄く胸が苦しくなる……。
俺はきゅっとなる胸を右手で押さえ、その様子をじっと見つめていた。
するとお互いは背を向けそれぞれ別の方向へと向かった。
「おい……! 行くな……! だめだ……!」
走ってその場へ行こうとした瞬間場面は切り替わった。
そこはまるで宇宙空間の様な所で足がどこについているのか分からない。そして目の前に1枚の紙が浮かんでいた。そこには文章が書かれている……
――――
この先、大きな選択を迫られるだろう。
その選択次第で、君は魂で強く繋がった者と離れ離れになるだろう。
だが、君は君が正しいと思う道を行きなさい。
それぞれの道はその先で繋がっている。
繋がった時に、未来へと進む大きな力を得る事が出来るでしょう。
立ち止まらず……突き進みなさい。
――――
「……どういうことだろうか」
読み終えた後、その紙は突然消滅し、また辺りは白く包まれた。何となく心地よい浮遊感だ……。
――ァンさん!
遠くから呼ばれるような声がする……。懐かしいような……安心するような声だ。
――フィアンさん!!
「ん……」
「フィアンさん!! やっと起きましたね! こんな所で寝たら風邪を引いちゃいます!」
「あれ……俺なんでこんな所で……。というかルーネ!」
俺は目の前のルーネを抱きしめた。なんだか凄く抱きしめたい気分だったんだ……。
「フィアンさん……? どうしたんですか急にっ」
「何か……変な夢を見たんだ……」
何故ここで眠っていたのかはすっかり忘れてしまったが……、夢の内容は割と覚えている……。
最後のお告げの様な夢……あれが本当に神という存在のお告げなのかただの夢なのかは分からない。
とりあえずデバシーには書き込んでおく事にしよう。
「そうだったんですね。よしよし~大丈夫ですよ~」
ルーネ……夢の内容は聞かないんだな……。あんまり言いたい内容でも無かったからそれを察してくれたんだろうか。
どちらにしても帰ってきて本当に良かった……。てか何で返事無かったんだろ……。
「そういえば、朝は反応が無かったけど……大丈夫だった?」
「はい! 大丈夫と言うか、ごめんなさい全然呼びかけに出れなくて……」
「いや、いいんだ! ルーネに何かあったのかなって心配だったけども……」
「そうですよね……ごめんなさい……。実は精霊界で婚姻の儀がありまして……それに出席してました……」
「婚姻の儀?! 何それ気になる!」
色々と突っ込みたいところはあるが、用は結婚式に出席してたって事だよな……?
精霊も結婚式とかやるのか……。
「あ……とりあえず、茶屋にでも行こうか。折角ここまで来たんだしな!」
「本当ですか! 行きましょう!」
そうして以前行った、茶屋に場所を移し、話をすることにした。
「んー! ここのお菓子は甘くて美味しいですねー!」
「そうだな。甘い物は中々食べる機会も無いもんな……」
「あ! でですね、婚姻の儀なんですが……実は風の精霊が契約者と結婚する事になりまして、その儀式に私とテーネも行ってたんです!」
「ほう……! 風の精霊かっ」
「そうです! 精霊は皆で6人居ます! 火・水・風・土・光・闇の6属性ですね」
「逆にそれぞれ精霊は一人しか居ないんだな……」
「そうですね。精霊獣とか精霊虫はそれぞれの属性で沢山居ますけど、精霊は6人、大精霊様は2人しか居ません」
「ほー。そうなんだね……。てか、風の精霊さんは誰と結婚したの?」
「契約者のエルフ族の方と結婚しましたよ!」
「へー! じゃぁ二人はとても仲良しだったんだね!」
「そうですね! 6精霊の中で結婚したのはこれで2組目ですね……」
「契約した後に結婚って流れか……」
「まぁ結婚といってますが……別名高位契約ともいいます。より密な契約ですねっ」
「ほー。それってするとどうなるの?」
「そうですねー。まず契約者は更に精霊の力を使用することが出来ますね! 精霊側もより契約者様の魔力や闘気に触れる事ができ、幸せですよ! あと……そうなった時には契約者様の精霊界に入れますね!」
「ならお互いにとってメリットがいっぱいって訳だな! 精霊界……一度は行ってみたいよな……」
「そ……そうですかっ! 興味を持ってくれると嬉しいですー!」
ルーネが顔を赤らめた。あ……俺が精霊界行きたいって、結婚したいって言ってるみたいだな良く考えたら……。
「ただ、デメリットといいますか……それは人それぞれだと思うんですが、その契約をすると契約者が亡くなった時に、精霊も消滅します」
「死んじゃうのか……」
「まぁ一人で残される事が無いので、ある意味幸せかも知れませんけどねっ」
「なら少しでも長生きして一緒に居たいね。てか精霊が死んじゃったらどうなるんだ……?」
「その場合、その属性の精霊獣で一番魔力を持つ子が転生し、新たな精霊になります」
「色々あるんだな……」
「精霊も人族も獣人も、婚姻の儀は形が違えど絶対ありますねっ!」
そんな会話をしながらお菓子を堪能した。
おれ自身が何故、あんなところで寝ていたのか……気になるけどどうしようもないな。
とりあえず生活に必要な物を買ったら帰るか。