129話 すごい瞑想の練習
「という訳でもうしばらく戻れないと思う! ネビアも修行頑張れよ!」
「分かりました。救助係になれるようにがんばって下さい! とりあえず落ち着いたらまた連絡くださいね」
デバシーでネビアに連絡を取った。何日も帰ってないのに伝えるのが遅すぎる気もするが……。
とにかくこれで修行に集中できる。そう思いながら俺はエリリアさんの元へと戻った。
「お待たせ!」
「終わったか? じゃぁここに座るんだ」
「はい! 所で一体何を……?」
「まず、はっきり言うと1週間不眠不休で見ておけって言うのはかなりきつい。仮に起きられたとしても万全の状態ではない。わかるな?」
「そうだね……。そもそも俺の場合は完全に眠りこけてしまう……」
「だが、ここだけではなく神経を長いこと張り詰めなければならない状況ってのが、冒険者をしていると結構あったりするんだ。最近は大抵しっかりパーティを組むから交代で寝たりで対応するがな……。それでも、神経は集中したままで、何かあった際に休止モードから即座に切り替える事が出来るとすれば便利だろう?」
「凄く便利だそれ……! 早く教えて!」
「まぁあわてるな。とにかくまず、お前がどこまで感知できるかを確認する。私に背を向けて、目を瞑り、危ない予感がしたときだけ手を上げるんだ」
「分かった!」
言われるがままに俺はエリリアに背を向けた。
・・・
何も感じないな……。そう思って目を瞑っていると、後ろから大きな闘気を感じた。一瞬手を上げようと思ったが、危険な感じはしない。とりあえずこれは手を上げなくてもいいだろう……。
その感覚が終わったと同時に、刺さるような闘気を感じた。殺気を感じた時に近い……身の危険を感じたのでそれに対しては手を上げた。
手を上げていると、次第にその闘気は感じなくなり、俺は手を下ろした。何となくだが、聴力検査を思い出すな……。
それを何度が行い、俺は手を上げたり下げたりを行い続けた。
「よし! いいぞ。目を開けてこちらを向いてくれ」
「うん……どうだった……?」
「フィアン……お前凄いな!!」
「え! 何が……?」
「これは色々な奴に行う感知能力テストなんだが……。フィアンの精度は100%……ありえない程完璧な精度なんだよ!」
「おお! 何となく凄そうだ……」
「何となくどころじゃないよ! 大体60%越えたら達人と言われるんだ……。私は70%、レッドは85%だったよ」
「ほえー。闘気の事なら負ける気がしないな!」
「よし! この調子で魔力の感知テストも行うぞ!」
「おおう!」
・・・
「魔力は……55%か……。いや! これでも凄いんだが……闘気感知を見た後で感覚がおかしくなっているな……」
「やっぱ俺は剣士だから、闘気の方に特化してるのかな……?」
「まぁそういうことだろうな。だが、闘気と魔力の感知能力はとりあえず40%を超えていれば十分だよ」
ということは多分ネビアがこのテストをしたら、逆の感じで数値が出るんだろうな。短所は二人で補えばいいんだ。まったく問題なしだな。
「さて、早速本題に入ろう。今回フィアンに伝えたい技の事だが……」
「おお。待ってました!」
「技の名前は[極意瞑想]だ。簡単に言うと瞑想の上位技と思えば良い」
「極意瞑想……! 普通の瞑想と何が違うの?」
「まぁあわてなさんな。まず、瞑想だが、これは柔型の初級技だが、極意瞑想になると上級技に跳ね上がる」
「瞑想も柔型の技だったのか……」
「効果としては比べるとこんな感じだ」
瞑想
全身系を集中させ、パフォーマンスを大幅に向上させる。
極意瞑想
パフォーマンス向上 + 心・体の回復を図る。極意瞑想中は自分の周囲の小さな変化をより肌で感じることが出来る超集中状態でもある。
「すごいな、極意瞑想……!」
「そうだ。レッドも私もこれで1週間、セーフティリンクを管理していたんだ。極意瞑想中は、何かあれば即座に反応できるが、殆ど寝ている状態と同じレベルに回復するんだよ」
「じゃぁ、ずっと普通に起きてた訳じゃないんだな……」
「そうだ。ここまで教えるつもりは無かったから、ある程度遊んだら帰ってもらおうと思ってたからな……許してくれフィアン!」
エリリアは笑いながらそう言った。子供だからといって馬鹿にしすぎだろ! でもこうして教えてもらえるようになったんだから、俺も笑って許そうじゃないか!
「いいよ! 代わりにしっかりと教えてくれよ!」
「もちろんだ! それで救助係になってくれれば私としても最高だ!」
……待てよ、今更ながら一つ思ったのだが……救助係になったら俺は外で見張りだよな……? そうなったら、その時中に入れないじゃないか! 俺のばかばかー!
「ん……? どうした?」
「いや……なんでもないっす……。お願いしますエリリアさん!」
「よろしい。フィアンよ……私の修行は辛いぞ?」
「頑張るよ!」
とにかく今は目の前の事に集中だ。極意瞑想はどちらにせよ覚えている方が絶対に良い。どうやってダンジョンに入るかは後で考えよう……。
「じゃぁ……まずは瞑想の形を取れ」
「はい!」
「そのまま瞑想をキープするんだ」
「いつまで……?」
「ずっとだ。そのまま完全に眠ってしまうまでな。ただ、眠りにつこうとは思うな。あくまでも瞑想を続けるんだ」
「地味に辛そうだな……」
「ではスタート!」
そうして俺は集中し、瞑想を始めた。終わりが見えない瞑想……とにかく寝ないようにできるだけ長く続けよう。