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13話 一人

 気がつくと私は立ち上がっており、シャドウナイトを見つめていた。身体の痛みは無い。ものすごくすっきりした気分だ……。

 目の前にいるシャドウナイトは私に向かって、剣先で貯めていた大きな漆黒の瘴気を放ってきた。先程までは絶望的な状況だったはずなのに、今は全く負ける気がしない。飛んできた瘴気を右手で受け、消滅させたあと、ウィンドスピアを8本瞬時に放ち、同時にアイススパイクを目の前のウォーカー達全員に打ち付けた。

 アイススパイクで身動きが取れなくなったウォーカーたちはウィンドスピアに貫かれ、次々と消滅していく。そのまま一瞬でシャドウナイトの背後に行き、漆黒の剣を持つ腕を木の剣で切断した。

 シャドウナイトの腕ごと地面に落ちた漆黒の剣をそのまま奪い取り、魔装・一閃を放ち、立て続けに魔装・剣舞12連を放った。

 わずか3秒ほどで12連撃を放ち終わり、シャドウナイトはボロボロになっていた。止めにシャドウナイトを脳天から両断するとともに、大きな爆発を起こした。

 シャドウナイトは跡形もなく消え去り、立ち込めていた瘴気が綺麗に消え去っていた。辺りをふと見渡すと、おばあさんが傷一つつかないと言っていた岩壁がボロボロになっていた。あの場所からおばあさんを出してあげられるのでは無いか? と思い、その場所に戻ろうとした瞬間、ふっと意識が途切れてしまった。


・・・


 また気絶していたのだろうか。目を開けると、目の前には生まれて間もない頃に見た女神のような方がいた。


「一つ目の試練、達成おめでとう御座います」


 俺はその言葉でシャドウナイトを倒したことを鮮明に思い出した。ネビアはどうなったんだろうかと思った瞬間、ふと横に目をやると、ネビアも女神を見ていた。


「ネビア! 無事だったのか!!」

「え? フィアン! 生きてたんですね!!」

「いやー、土壇場で魔法使いながら剣術連発でなんとか勝てたよ! 本当に無事でよかった!」


 すると、ネビアが首を傾げていた。


「あれ、最後は僕がそれをしたはずなんですけどね……?」

「え?」


 そんな会話をしていると女神が咳払いを行なった。


「あ、とりあえず女神様の話を聞きましょう……」

「では、改めまして試練達成おめでとう御座います。よくぞ達成出来ました。最初試練を伝える時は達成出来るなどと、思ってもおりませんでした……」

「あ! それで気になったんだけど、試練は人それぞれ違うものなのか?」

「そうです。最初の試練でここまで難解なものは初めて見ました。達成時の状況をお見せ致しましょうか?」

「あ、見たいです!」


 そんなの見れるの!? 試合のハイライトみたいな感じかな? そんな事を思いながらも記憶がごちゃ混ぜになっているから、確認はしておきたかった。


「では、目をつぶってください」


 目を閉じると、俺とネビアがしっかりと抱き合って死に掛かってる場面からだった。今思うと俺と俺で抱き合うってどんな状況だよ……とか思いながらも、その瞬間俺たちの周りが眩い光に包まれた。そして、光が消えたとき、綺麗な紫色の髪の少年が一人突っ立っていた。

 いや、誰なのこの子! と思いつつも、その後記憶にしっかりと残っている技を連続で叩き込んで行った。そして場面はふっと消えた。


「えっと、知らない人が映ってたのですが……?」

「あの人は貴方達ですよ。珍しい魔法をお持ちなのですね。スライムでいうと融合に近い……ヒト族で一つになる技があるとは知りませんでした。後でしっかり戻ることができているから融合とも言いにくい……。本当に不思議な方達です」


 つまり、俺たちは二人でフュー〇ョンができると。でも、あれは間違いなく俺だったし、二人の魂が混在って感じでもなく……。何というか、俺は俺だったんだ。

 でも、フィアンかネビアか……そう言われるとフィアンだったとは言い難い気分だ。うむ、人智を超えてますわ。深く考えないでおこう……。横を見るとネビアも頭を抱えていた。同じようなことを考えてるんだろうな。


「では、早速ですが達成報酬を授与いたします。魔力か闘気の潜在力及び、現在値を底上げいたしましょう。どちらになさいますか?」

「フィアン、どうしましょうか」

「うーん、正直長所を伸ばした方がいいような? 二人で補っていけばいいしさ!」


 魔力が増えるのも魅力的だが、現実的に言えばネビアに遠く及ばない。追いつくかもしれんがそれでは意味がない気がする。二人で勝てればいいのだ。


「そうですね、フィアンがそういうのであれば!」

「女神様、俺は闘気で」

「僕は魔力でお願いします」

「わかりました。では早速……」


 そういうと女神は何かを詠唱しだした。二人は光に包まれだしたが……。


「あら……? 申し訳ありません……今お二人の潜在値をチェックしておりましたが、フィアンは闘気、ネビアは魔力の底が見えませんでした。私の見られる範囲を遠く超えて先へ行っているようです。貴方達は一体……」

「つまり、どういうことでしょうか……?」

「失礼いたしました。こんなことは初めてです。貴方達に出会ってから初めての事ばかりで驚きを隠せませんね……」


 女神は微笑みながら、話をつづけた。


「それぞれ魔力と闘気が無限に近い……そんな総量をお持ちなのです。私に見えないとなると無限といっても過言ではないです。片方が無限に近くとも、魔力と闘気を完全に分離して使用することは出来ません。かならず疲れなどは出てきますが……」

「俺ら、実はすげーんじゃない……?」

「魔法をどれだけ使っても疲れないわけですね……。フィアンも全然疲れないのはそのおかげでしょう……」


 女神は申し訳なさそうに話をつづけた。


「底が見えないので、潜在力はその……あげられません……」

「えー!」


 二人揃って不満の声を漏らした。


「フィアンは魔力、ネビアは闘気でしたら上昇できますが、それでもいいでしょうか?」

「それしかできないなら仕方ないよね……!」

「ですね」


 俺たちはもう一度女神の詠唱で光に包まれた。

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