123話 帰還もズルして
「神冶さーん! 帰り用の空間移動魔法ちょーだい!」
「おお! 二人とも! あれを改良すべく奮闘中じゃ。まだ出来上がっておらんよ。魔力に引っ張られる事は多分なくなったんじゃが、危険度はまだそのままじゃ……」
「いや! 俺達はあれでいいからさ!」
「そうはいってものう……」
「フィアン! あまりあれを多用しない方がいいよ……万が一にも天族にばれたら終わりだよ……?」
ゼブがまたにゅっと出てきた。コールした時大体いるなゼブ……ティタは怒らないのかな……。
「父さんの話をしたことを覚えているだろう? 空間転移の研究を重ねた結果、逃亡者で指名手配だよ……」
すっかり忘れそうになっていたが、父さんと母さんは天上要塞から逃げてここに来た。空間移動の魔法を研究し続けたせいで……。
とは言いながら今もやってるけどな……。
「いや、それでも父さん研究続けてるから説得力無いよ?」
「あはは、たしかにその通りだね……!」
「まぁまぁ早々バレるもんじゃなかろうて。ただ、着地地点は人目のつかない場所にしたほうがええじゃろう」
「どちらにせよ、普通に戻ったら授業を凄く休まないといけないよ! 勉強したいのにっ!」
「そうだね……。よし、今回だけだぞ?」
「やった! ありがとう父さん!」
そういって帰りもとりあえず空間移動魔法を用いて帰ることになった。
「そうじゃ! 少しおもしろい情報が耳に入ってのう」
「なんでしょうか?」
「剣と魔の学園の丁度中央当たりに、地下ダンジョンがあるそうなんじゃ」
「あ! それ何となく知ってますよ。学園のイベントの項目にも地下ダンジョン演習ってのがありましたし……」
「おお! そんなイベントがあるのじゃな! んでじゃ、そのダンジョンなんじゃが、レジェンド級パーティがちょくちょく攻略しているそうなんじゃが……」
「てか神冶さんレジェンド級パーティの存在とか知ってるんだな……」
「わしをなめちゃ行かんぞ! 情報収集は日々しておる! もちろんゼブとティタにも手伝ってもらってな!」
「んでじゃ! その地下ダンジョンの地下20階に妙な噂があってのう……」
「妙な噂……?」
「そうじゃ。ある壁1面だけ真っ黒な壁になっており、光る線が走っておるそうなんじゃ。その走る光の中心に窪みがあるらしくてのう」
「窪み……?」
「んでその横には謎の記号が書いており、更にその横に9つの記号が書かれた光る壁があると……」
「え!? それって……!」
「そうじゃ。わしのラボと同じセキュリティを施してある壁じゃ」
「窪みはこのデバシーを入れるとこじゃろう」
「どういうことだよ……!?」
「それはわしにも分からん。もし入れそうであれば中を調べてきて欲しいんじゃ。もしわしの居るこのラボと同じような環境で、色々設備が生きていたら、デバシーや空間魔法を含め大幅にアップグレードできるかも知れぬ」
「まじか! それは調査するしかないじゃないか!」
「でも、そんな地中奥深くに埋まってるなんて一体何故なんでしょうね……」
「うむ。分からない事だらけじゃ! だからこそ気になるじゃろうて!」
「それは間違いないね!! よし! 地下ダンジョン演習で20階まで行って、調べてみようぜ!」
「そうですね!」
「無理はするんじゃないぞい!」
これは……かなりわくわくするな! 地下20階なんで深さのダンジョンに何故デバシーを入れられるような壁が……?
神冶さんみたいに飛んできてしまったのは一つじゃないって事なのか……? とにかく、行って確かめるしかないな!
「よし、とりあえずセントラルの近くまで飛ぶように座標を書き込んだ触媒紙の準備が出来たぞい」
「おお! ありがとう!」
「近くといっても……歩いたら半日以上はかかるのう」
「まぁでもその位離さないと怖いしな……。むしろ近すぎるかもしれない……!」
「とりあえず飛んだ後は狙ったポイントについているかしっかり確認するんじゃぞ!」
「はーい!」
そうして城からかなり離れた、人気の無い場所で俺達は触媒紙を使用し、またセントラルの方へと空間移動した。
・・・
・・
・
――ドーン
「いてて……飛ぶ前は大丈夫だけど、こっちに来た時に結構地面に叩きつけられるのがきついね……」
「そうですね、全身打撲になっちゃいますよ……」
「まぁでも! 無事に中央都市領に来たな!」
「そうですね……。本当に一瞬で凄すぎます……」
「でもバレたら怖いから……使用は控えような……」
「そうですね。ゆっくりと向かうのも急いでなければ旅の醍醐味ですし」
「うんうん。さて……セントラル城のほうへと向かうか」
そういって俺達は服についた砂をはらって、デバシーを広げ、セントラル城を目指した。
ちなみに着地座標は目標とほぼ誤差範囲で着地できている……。素晴らしい精度だな……。