117話 覚醒の時
「二人とも……! 無事だったのですね!」
「あ……女神様!」
「二人は見事……レッドを倒すことに成功致しました。アジトの場所は掴めなかったとしても十分な働きでしょう」
「有難う御座います……」
一瞬ぼーっとしていたが、今はっきりと思い出した。俺達はレッドを殺した……。
「ほっほ! よくやったな二人とも!」
「大天使様……有難う御座います」
「本当によくやったわ……。そもそも人族に堕天使を倒させるって異常事態ですよ……。それをまた達成した貴方達もある意味異常だけれどね……」
「女神様……もっと女神様らしく話さないんですか?」
「いや……もういいわよ。貴方達にはバレちゃってるし!」
「サクエル、しっかりと仕事をしないと減給されてしまうぞ……?」
「はっ……! それは困ります! 大天使様……今のは無かった事に……」
女神様はサクエルって名前があるんだな……。にしても……この人達も全然悪い人には見えないよな……。腐った体制とは、一体何をさしているのか……。
「とにかく。二人は見事に試練を達成し、天族になる資格を得た。改めて……おめでとう」
「有難う御座います」
「だが……完璧な達成ではない。レッドを倒しはしたが、結果アジトを突き止めることが出来なかった。達成度で言えば、6割と言うところじゃろうな……」
「それは……」
たしかに言われていた任務はまだ完璧に終わっていない。学園の正常化を目指すってのもまだ出来ていないしな。
「じゃが、ある条件を飲めるのであれば……このまま天族になることが出来るぞ」
「……! その条件ってのは何でしょうか?」
「天族になった後は、君達二人には天上要塞兵となってもらう。これが条件じゃ」
「天上要塞兵に……!」
アルネさんの夜の話の中で天上要塞兵に従事するか冒険者としてそのまま今の仕事を従事するかを決める事が出来るって話が出てたよな……それの事か。
「といっても警備兵ではないので、基本的には地上で活動してもらってよい」
「おおまかに言うと、天上要塞の要請があればすぐに集合する。天上要塞の任務を最優先にする。天上要塞に必ず月1回は顔を出す。これが天上要塞兵の責務じゃ」
「細かいところは無事に天族になったら伝えるが……何かあればここに呼ばれると思えばよい」
「自分で報告に行く場合はどうすればいいんでしょうか?」
「天族になれば転送ゲートを開く為のリングを渡しておる。そちらから信号を送ってもらい、天上要塞で承認すれば転送できるという優れものじゃ」
「転送ゲート……! 地上では開発等をすれば重罪になるというあれですか……!」
「そうじゃ。天族でもこのゲート以外は使用、開発は禁止されておるし、見つかれば無限牢獄に入れられるか殺されるじゃろう……」
「そうなんですね……」
トゥーカに行く時に使ったから内心めちゃくちゃびびった。まぁ個人的にこっそり使う分には……大丈夫か……。
「で……どうじゃ? その条件は」
俺達は顔を見合わせた。それしか選択肢が無いのなら答えは決まっている。
「その条件で大丈夫です。お願いします」
「よし! では早速じゃが天族に覚醒する為の場所へ移動する。二人ともついてまいれ」
俺達は大天使様の後ろをついていった。
「ここじゃ」
「凄い……綺麗なところだな……」
連れられてきたのはとても綺麗な場所だ。鮮やかな緑の草木に囲まれ、真っ白な柱など立っているのが目立つ。その中心に泉が広がっていた。
「二人にはこの泉に頭まで浸かってもらう。そしてわしが覚醒の儀を行い、無事に終われば自身の天衣名を授かり天族に覚醒完了じゃ」
「天衣名……?」
「そうじゃ。天族になれば天衣という技を使う事が出来るようになる。まぁなっていきなりは無理じゃがな……」
「ふむふむ。天衣……か」
「最初に天衣名は皆平等に授かる。だが、実際にそれを使いこなせるかはその者次第じゃ」
「天衣について詳しく教えてもらえますか?」
「俺も気になる!」
「ふぉっふぉ。勉強熱心な子達じゃな。どれざっくりと説明してやろう」
~天衣について~
天衣は特異種と通常種がある。通常種から特異種に突如変わる者も居る。
通常種:天力が備わり、身体的能力が大幅に上昇する
特異種:天力が備わり、身体的能力が上昇し自身の一番得意な属性効果が付与、その属性の天級以上の技を使う事ができる。
天衣の名称
基本的に2文字の名称が多いが、稀に3文字、4文字と存在する。
文字数が多いほどより強力な天衣となる。
2文字から3文字、4文字に進化する事も稀にあるが基本は増えるとしても一文字まで
通常種は共通名な為、通常種の場合はおおよその力を判断する事が出来る。
強さの順番(確認されている天衣)
兵翼 < 兵長 < 軍曹 < 将校
「思ってたより奥が深いですね……天衣……」
「そうじゃろう。ただ一ついえるのは……」
「言えるのは……?」
「天衣を扱える時点で、ほぼ地上では敵なし……じゃろうな」
「敵なし……」
「そうじゃ。それほどまでに天衣天族とその他の種族では圧倒的な差がある。シャドウはまた別じゃがな」
実際それは何となく感じていた。試験の時とレッドとの戦い。全くの別次元の戦いだった。
それに対応出来た俺達を褒めてもらいたいものだが……。
「とにかく! 今から行う覚醒の儀をしっかり行わなければ話は進まぬ。さて……そろそろ始めよう。準備は良いかね?」
「わかった。よろしく頼む!」
「お願い致します」
「では……この泉に入るんじゃ」
そういって泉の中へと俺達は入っていった。