109話 突き進む。
「このローブを装備している奴は基本敵です。見かけ次第倒しますよ」
「ああ、分かっているさ」
レッドは凄く楽しそうにしている……やはり感覚がどこか僕とは違うみたいですね……。アリシアもその気があったし、仲間は皆そんな奴なのかな……。
「む、お前ら! 顔を見せろ」
扉の前で座っていた男が話しかけてきた。
――アイススピア!
「なっ……!」
僕は近寄ってきたローブの男にアイススピアを放ち、消滅させた。
「ふっ……迷いが無いね。素晴らしい」
「素晴らしいのか……分かりませんけどね……」
そのまま監視塔の屋上まで行き、屋上に居た一人も消滅させた。そして、監視塔で周りを見渡した。
「ふむ。完全にあっちでは戦いが始まってそうですね。ここからだと煙が良く見えます」
「そこに武装して纏まっている奴らがいるな……」
「ですね。ここからやっちゃいます」
僕はライトペイントを散らし、気付かれない様にそれぞれ配置させた。そしてそのままその纏まっている奴らの足元に速攻で魔方陣を描いた。
「む……! なんだこの光……」
――ファイヤエクスプロージョン
「ぐああああああ!」
一気に族を爆破させ、撃ち漏らした奴はアイススピアで追撃した。
「そう言えば、君のライトペイントは黒いんだな!」
「そうですね……。さて、目に見える範囲の敵は処理しました。下に戻りましょう」
というか、ライトペイントを飛ばした事自体には驚かないんだな……。知っている魔法なのかな?
そのまま監視塔を降りて、採掘場の入り口へと向かった。
「よし、私はここにある小屋を調べよう。君は中へと行くんだ」
「わかりました。奴隷等任せましたよ!」
「分かっている!」
そうして、レッドと僕は二手に分かれ、進む事になった。
・・・
「そのまま突き進むんじゃ!!」
アルネとセイヌは先程の戦いで行った作戦をもう一度実行し、門を破壊した。この作戦自体は対策していなければかなり有効のようだ。
「ここは、採掘所までのエリアが非常に広い! 敵の潜伏数も先程の比では無いだろう! 皆気を抜くでないぞ!!」
「おおー!!」
兵士達の指揮は高く、じりじりと族を跳ね除け進行していった。
「アルネよ! 後方からも来ているようだ! 後方を頼む!」
「了解じゃ! 私が回ろう!」
アルネが後方へ移動し、後方の敵と対峙した。兵向きを一部反転させ、上手く立ち回ることに成功した。敵数を見るに、兵士に任せて大丈夫そうだ。……そう思った瞬間の出来事だった。
~~ファイヤエクスプロージョンx3
前方セイヌ側で3回大きな爆発音がした。
後方に居たアルネははっと振り向き、前の様子を見た。その瞬間、こちらの兵士が吹き飛んでいるのが見え、直ちに前方へと戻った。
「なんじゃ……突然……!」
前方に居た兵士がかなり消滅させられており、セイヌが一人の男と対峙している。
「なんだぁ? もう一人強そうな奴がいるじゃねえか」
その男は少し小柄で、オールバックの様な髪形をしている。右手にはダガーを一本持っており、かなり軽装だが、全身に炎を纏っている。多分、[オーラ・ファイヤ]だ。
「アルネ!! こいつが火鼠の族長だ!!」
「こいつがか!」
「よそ見している場合じゃねーぞ?」
族長が短剣を振り、セイヌはそれを回避し続けている。
「くっ……!」
「今行くぞセイヌ!!」
「まて!」
「隙あり!」
族長がセイヌの隙を突いて、短剣を胸の方へ突き刺そうとした。それは辛うじてセイヌの剣で防ぐ事ができたが、その瞬間……
~~ファイヤエクスプロージョン
「……かはっ!」
セイヌの武器と族長の短剣が触れた瞬間、大爆発が起こった。両所とも巻き込まれる形だったが、大ダメージを受けたのはセイヌだけで、族長は無傷である。
「な……ッ! どうなっておる!」
「へっへ!! トドメだ!」
「させぬッ!」
アルネは咄嗟に前へ出た。
――ウィンドウォール!
~~ファイヤエクスプロージョン!
アルネの盾に短剣が触れ、大爆発は起こったが、ウィンドウォールで爆発の流れが少し変わり、ダメージを最小限に抑える事が出来た。
「おい、セイヌ! 大丈夫か!」
アルネがそういって振り向くと、そこには消えかかっているセイヌの姿があった。
「セイヌ……!」