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7話  ウガミとファミレス

よろしくお願いします。



ファミレスで食事をとることにしたヨーとウガミ。


学校近くのファミレスに入り、向かい合って席につくヨーとウガミ。

すぐ席につくことができた。あまり混んでおらずウガミは少し気が楽だった。


何かおかしい。

ウガミはヨーの顔が優れていないような違和感があることに気づいた。

ヨーはウガミの前では、いつだって気味悪い笑顔や歪んだ表情をしていた。しかし今日この場において、普通の顔をしている。普通に普通。無表情に近いものだった。考えごとでもしているのだろうか。


「今日は課題手伝ってもらったからな」

「好きなもの頼んでいいぞ」

「奢りだ」


「ありがとう。ウガミ君は優しいね」

ヨーは笑った。いつもの周りをゾッとさせる表情が戻っていた。


「甘えさせてもらうよ」

「じゃあね~、これとこれとこれだね」


「……そんなもので足りるのか? 」


「……うそ」


ヨーが3品、ウガミはその倍を注文した。店員は坦々と注文を取った。


見てくれがおぞましい二人だが、店員は気にしていないようだった。


容姿と周りの反応に敏感なのは、まだ自分が若い証拠なのかもしれない。高校に通う期間はずっと悩み続けることなのだろうか。


二人は無言でただ料理が運ばれるのを待っていた。


ヨーの前に

チキンステーキ、海鮮サラダ、ペペロンチーノが並ぶ。


ウガミは

ラーメン、豚カツ定食、シーフードグラタン、手羽先、ミックスサラダ、さらに食後にデザートを一品。



ウガミは、ヨーと自分の前に並んだ料理を一瞥して言う。


「少しもあげないからな! 」


ヨーは苦笑いして応える。


「僕はそんな食べられないからね」

「むしろウガミ君はそれ全部食べられるの? 」


「ああ。食べられるうちに食べておかないとな」

「家帰って食事の準備とかめんどい」


「へえぇ」


ヨーはゆっくり料理を口に運んだ。ウガミはガツガツモリモリ食べていた。

いくらでも会話が弾みそうな華やかなテーブル上だったが、二人は静かであった。


「質問あるんだけど、いいかな? 」


「おお」

返事しつつ、料理を口に運ぶ手は止めない。顔はお互い自分の料理を向いている。


「中間テストクラス何位だった? 」


「37位……40人中」


「芸術の選択は? 」


「美術」


「身長体重は? 」


「181、77」


「体力テストはどうだった? 」


「オール10」


「誕生日は? 」


単純な一問一答のような質問が続く。


二人はテーブル上の料理を食べ終え、あとはウガミの頼んだデザート待ちとなった。ウガミはデザートを待つ間、背中のシートに身を任せて足を遠くに置き天井を見上げるような姿勢になっていた。


ヨーは顔をあげて、

ウガミの目を見て質問するようになった。


「高校で友達ってできた? 」


「お前以外できてない」


「怖いものってある? 」


「……しいていえば夜」


「……」


ヨーの質問責めが止まった。


「俺からもいいか? 」

「何で俺なんだ。教えろ! 」


「……」

「僕はウガミ君を見た時から憧れてた。ウガミ君と僕が似てるってわかった時、どうしようもなくなった」

「ウガミ君の強さが欲しい」

「強くありたい。自分が自分であることが一切ぶれないような人になりたい」


「まったくわからねえよ」


ウガミはヨーという人間を見た時、かなり上等にできた人間だと思っていた。


ヨーと接触する前からも噂でウガミの耳に入っていた。入学式直後の4月あたりは有名人と言ってもいい扱いを受けていた。進学クラスで勉強できる。スポーツもできる。見てくれも良く、周りからの評判も良い。ヨーには高校生が羨む機能がたくさんついている。しかし5月中旬あたりからヨーの噂は否定的なものとなってウガミの耳に入る。内容はヨーが笑えなくなったというところだろう。


笑顔がなくなったことを考慮してもヨーは上等な人間には変わりないとウガミは思う。







RRRRR……


スマホの着信音が鳴る。

ヨーは断りを入れてトイレの方に行った。


席を立ったヨーと入れ換えで来た店員はデザートをウガミの前に置く。


ウガミはモヤモヤした。

俺は何も知らない。

あの日のことだって、

ヨーのことだって、

今日だって俺が質問責めになっただけ。ただそれだけのことに苛つきをおぼえる。ヨーは親身に課題を手伝ってくれたのに……。


今、苛立ちを感じているこの状況は成るべくして訪れたものだ。


ウガミはデザートのアイスクリームを丸飲みした。体内を冷たい塊が流れる。腹の奥で熱が下がるのを感じた。



RRRRR……


ウガミのスマホの着信音が鳴った。知らない番号からかかったものだが、すぐさまその場で電話に出た。考えるのが面倒くさかったのだ。


「ウガミか? 」


第一声に警戒するも、声は若い女性のものと思われた。知らない声だ。


「ああ。お前は? 」


「私はヨーお兄ちゃんの妹のアキ」


「……何で俺の番号を知ってる? 」


「お兄ちゃんのスマホからとった」


「要件は? 」


「ウガミお前、お兄ちゃんを家まで送ってこい!! いいか!! 間違っても寄り道なんてするんじゃねえ!! 」


「は? 」


「言うとおりにしろよ、ウガミィ」


最初の一言からわかっていたがヨーの妹の俺に対する口が悪い。おまけに声量がひどく大きい、ミシミシ鳴る音も向こうから聞こえる。何か物にあたってるような感じ。


「なんで俺が連れていくんだ? 」


「絶対やれ! 一緒に家まで来なかったらお前を潰すから!! 」

「あと私が電話したことはお兄ちゃんに言うなよ!! 」

「わかったか!! 」


「……わかった」


そこで通話が切れた。

ヨーの妹を名乗る人物は一方的に電話を切った。


ヨーがトイレから帰ってくる。

浮かない顔をしていた。


「誰からの電話か聞いてもいいか? 」


「うん。家からかかってきた」

「早く帰って来いって」


「食い終わったし俺会計するわ」

「その前にちょっとだけスマホ見せてくれねえか」


「いいよ」


ヨーからウガミにスマホが渡る。

触れたヨーの手がひんやり冷たい。顔を見てもやっぱりヨーに元気がない。


スマホの着信履歴を見た。

さっきの番号は間違いなくヨーの妹だ。ていうか着信履歴のほとんどが妹からのもので埋められていた。


さっと数秒で確認して、ウガミは表情を変えずにヨーにスマホを返す。


「ありがとう、ちょっと見たかっただけだ」


「どうも」


ヨーの目に覇気がない気がしてならない。

今日は何かおかしい。ウガミは引っ掛かる何かをわからないでいた。





☆☆


会計は発言通りウガミが全部出した。


計4795円




「……別にこの金はカツアゲして手に入れたとかじゃねえからな」


「その発言はかえって怪しまれると思うけど」


店員は苦笑いしていた。



ファミレスの外へ出る二人。

少し肌寒さを感じた。風もある。

空を見上げればすっかり夜だ。


「じゃあねウガミ君」


ヨーはすぐウガミに背を向けて歩き出した。ウガミはそれについていく。


「ウガミ君って家こっちなの? 」


「違う」


前を歩くヨー、その後ろをついていくウガミ。

ヨーは前を向いたままウガミの方に振り向いたりしなかった。


「もしかしてストーカーってやつ? 」


「ちげーよ。ただお前の家まででいい。」

「話がしたい」




ウガミの腕時計は午後10時前を示していた。





ありがとうございました。


ここからお話盛り上がらせたい!!!ってところです。

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