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6話  ウガミと図書室

よろしくお願いします。



放課後午後5時30分


ウガミは図書室にいた。

ヨーを待っていた。ただそれだけ。進学クラスの補修授業が終わるのを待っていた。

教室、自習室やラウンジには人がたくさんいたから、図書室にした。部屋の広さに対する人数の比が、ウガミを図書室へと誘導した。図書室には一年生のオリエンテーションの時に一回だけ来たことがある。それはおよそ2ヶ月前のこと。意外と校内の配置を覚えてるもんだな、とウガミは思った。




<図書室にいる>

という簡素なメッセージをスマホでヨーに送った。このままスマホを弄る時間にしてもよかったがウガミはヨーを待つ間、図書室を回ることにした。ウガミのスマホには暇潰しになるようなアプリが入っていない。


本の背表紙に目をやりながら、本棚に沿って歩いていく。

ラベルに変な番号がついてる。これなんだっけな。本のタイトルなんか目にも止めないで、ウガミはただ数字を見ていた。ラベルの数字に注目して歩いているうちにすぐ図書室を回りきってしまった。ウガミは始めの位地に戻った。今度はちゃんとタイトル見て、手に取ってみようと考えて歩き始める。


「……」


誰かに見られているのを感じた。

視線のする方向を見ると一人、女子生徒と目があった。女子生徒は席について本を開いているのだが、顔はウガミの方を向き、じっと見ていた。


ああ、俺みたいのはここに不釣り合いだな。それに図書室の中を歩き回りすぎた。迷惑なことをした。ウガミは女子生徒から目を反らし、本棚に目を移して反省した。もっと本に興味ある感じを出さないとな。難しい。ため息をつきそうになるところ、


「ねぇ」


横から急に声をかけられて、ウガミは体が硬直した。


「時間潰してるの? 」


横には、席からウガミを見ていた女子生徒がいた。笑顔で語りかけてきた。


女子の無垢な笑顔を鼻の先で見たウガミは思わず後退りしてしまった。失礼だと思いつつも自分が最近見た笑顔とはあまりにも違い過ぎて戸惑った。


「わかるのか」


「いや、わかるんですか」


ウガミの声のトーンは変わらない。中履きのシューズのロゴが赤色だった。ただ二年生の先輩だとわかり言葉を変えた。


「ふふっ、わかるよ。それくらい。だってそれ、本を読む宛もない人がすることだもん」


へぇ、くらいにしかウガミは思わなかった。それより聞きたいことができた。


「あの俺のこと、怖くないんですか。目とかすごいでしょう」


自分の両目を指で示すウガミ。


「少し怖いかもね。でも君に興味持ったからかな、話かけられたよ」

「私は二年A組のメグミ」


「……俺は一年C組、ウガミです」


「よろしくね、ウガミくん」


「こちらこそよろしく……です」


初対面の人への挨拶を頭の中で反芻する。これでいいんだっけ? 人から離れていたウガミはちゃんと挨拶できているか気になった。


「私も人を待っていたの。でもそろそろ行かなきゃ」

「じゃあねウガミくん、また今度会えるかもね」


「はい」


そう言って、手を振りメグミはひらりと身を返して図書室を後にした。甘い残り香がウガミの鼻腔をくすぐる。ヨーにあの笑顔を見せてやりたい。またメグミに会えることを願ってのポジティブな考え方だった。


怖いと思うんだけどなぁ、俺の顔面。実際、ウガミは教室で話かけられることはまずなかった。

メグミはすごい。女子との関わりがなかったウガミでもわかるほどの美人だった。でもあんなに簡単に人に近づくなんて変わってる。ウガミは自分に興味関心を持って近づく人間は、変わり者か悪者のどちらかであると思っていた。



メグミが去った後、図書室にはウガミを合わせて生徒四人になった。

夜に近づき、人数は次々減っていく。

ウガミはスマホを弄って待つことにして、適当な席に着いた。

スマホを弄る。特にやることのないウガミはアラームのプリセットを作っていた。暇潰しねぇ。クラスではスマホゲームとかが流行ってるらしいが、全然わからない。興味がないから入れようとすら思えない。人が集まるコンテンツには悪が蔓延る、なんてネガティブに考えているところに待ち人が来た。


「待たせちゃってごめんね、ウガミ君」


「ん。まぁ頼んだのはこっちだし。授業お疲れ」


「やさしーね、ウガミ君は」


二人は声量を下げたひそひそ話をして、ヨーはウガミの隣に並んで座わった。

ウガミは無表情、ヨーは醜く微笑む。


「今さ、廊下ですっごい美人が歩いてたんだけどさ」


メグミさんのことか、ウガミはすぐわかった。


「その人の横を通ろうとした時、すっごい気持ち悪い笑い方してたんだよ。鳥肌たつかと思ったよ」


ヨーを睨み付けてウガミは言う。

「嘘言うなよ」

「二年生の女子生徒だろ? 」

「さっきまで、ここにいたけどいい笑顔する人だぞ」

「お前の感性がズレてんだよ」


「そうなのかなぁ」

「ごめんね、僕の勘違いかもしれない」


そうだろ、と言わんばかりの強気のウガミに対し、ヨーは弱気に出た。

目尻がトロンと垂れ下がり、歯は剥き出しになっていた。


今日、メグミに会ったからか変わった人もいるが、世界は優しさで溢れている。ウガミはそう信じてみたくなったのだ。



その後、ウガミはヨーに課題を手伝ってもらい、図書室の退室時刻の午後8時前には無事終わらせることができた。中間テストの成績が悪かったウガミには、課題がいくつも出ていた。一人でできないと判断したウガミがヨーに放課後の指導を頼んだのだ。




☆☆☆


「ウガミ君は数学、物理、英語が特に苦手なんだね」


「ああ。今日は本当に助かった」

「俺の頭じゃ、絶対に終わらなかった」


「大袈裟だな、ウガミ君は」

「まぁ、勉強でよかったらいつでも相談乗るよ」


「また、頼む」


そう言いながら校舎を出た二人は夜道を歩く。




高校近くのファミリーレストランに入った。

時間を考えて二人は夕食を取ってから帰宅することにした。




ありがとうございました。


そろそろホラー要素入るかなあ。

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