5話 手紙 その2
よろしくお願いします。
ヨーとウガミの前にそれぞれ同じセットメニューが用意されていた。
ハンバーガー、フライドポテト、それに小さめのドリンクがトレーに並べられていた。
それを指してウガミは言う。
「いつ頼んだ? 」
「頼んだのはウガミ君が歩いて来た途中かな」
「ウガミ君のことを見たいって妹が言って聞かなくてさ。だから見張りについてもらったんだ。ウガミ君を見つけたら連絡入れるようにして」
「ウガミ君は」
見分けやすいし、家こっちのほうじゃないから、と言おうとしてヨーは止める。
別にヨーの言葉に引っ掛かったわけではない。
妹がいたのか。
ヨーより下、女子生徒?に見られていたことに気づかなかった。
こっちの方はあまり通らないからか、通行人にはよく見られていたな。
それだけ自分の容姿は人目につくものなのだろう。
周りの目に慣れつつあるウガミ。
「双子の妹とかか? 」
「まさか、中学二年だよ」
「……嘘じゃないよな? 」
眉間に皺を寄せて、視線でヨーを牽制する。
同じクラスの彼女はヨーの妹ではない。何故だかウガミは確認せずにいられなかった。
「当たり前だよ、ウガミ君に嘘つけないよ」
「言いたくないことは言わないだけの、僕は嘘がつけないタイプの人間なんだ」
変な言い回しだと思いつつ、ウガミはヨーを信じることにした。
3年後の件も結局、自分では何一つ情報掴めなかった。
自分はヨーを信じるしかなかったのだ。
ウガミが考え込もうとするところを、ヨーは制止した。
「せっかく頼んだから食べてよ」
「ありがとう、貰うぞ」
「どうぞ」
放課後の店内の少しの賑やかさ。ファストフード店独特の腹にガツンとくる油の匂い。
腹を空かせていたウガミはありがたくヨーの好意に甘えた。
二人は食事をしつつ、会話する流れになった。
ヨーはニコニコ気味悪い表情をしていた。ニコニコよりギコギコがぴったり当てはまる表現だ。
ウガミはいつもと変わらない表情。
「あの手紙はなんだ? 」
「僕の思いを綴ったんだ」
「気持ちは伝わったかな? 」
「伝わったよ。お前は俺のことが好きなのか? ホモか? 」
「あんまり、伝わってないかな」
ヨーはギャッと笑う。
「僕は、ウガミ君が好きだ」
「あい りすぺくと ゆー だね」
「君は僕の憧れであり、理想像なんだ」
ウガミは周りの視線が気になる。
俺らはどう見られるのだろう。時刻は午後6時前。
目が真っ黒で傷だらけの男。顔を気持ち悪く歪ませて愛の告白ともとれるようなセリフを男に向かって吐く男。二人揃って化け物とでも思われるのか?
「だからね……」
ヨーは机に身を乗り出して続けるも声はウガミの耳に届かない。
「……」
「友達になってほしいんだ」
声のボリュームを下げて、優しくウガミの耳元で囁いた。
「ああ、うん」
「本当に? ありがとう! 」
「僕たち今日からいい友達だよ」
フライドポテトを摘まんでいたウガミの手をとるヨー
驚いてウガミの口からでた、「ああ」
目の前で喜ぶ人がいる。それだけで良かった。否定する材料が思い浮かばない。
「おお、ウガミ君は笑ってもかっこいいね」
「お前は気味悪いけどな」
「なんで顔を戻しちゃうの? 」
「その表情はもったいないって」
「知るか」
取り残された二人だから、仲良くなれるのか、高校生になって初めて友達ができたからか、
胸が高揚していくのをウガミは感じていた。
☆☆
会話はヨーが想像していたよりもずっと続いた。
「それを妹に書かせたのか? 」
ウガミは文面でヨーが考えた文ということはわかっていた。目を褒められたのは初めてだった。自分の目を褒めるなんてことをするのはヨーしかいないと思っていた。
字が丸文字風なのはただの疑問点。それも解決していた。
「兄が兄なら妹も妹だな」
「自慢の妹なんだぞ」
「ウガミ君でもその発言は許せないよ」
そう言うヨーは微笑んでいるのか、ほっぺがぎこちなく持ち上がる。
兄妹のいないウガミにはわからないが、羨ましい関係だと思った。
きっとこんな気持ち悪い表情する奴でも慕われるような兄貴なのだろう。
二人は携帯端末機の連絡先を交換して別れた。
ヨーはウガミを知りたい。近くにいたい。そのためならウガミを何でも手伝うと言った。
ウガミはヨーにしてほしいことなんて浮かばなかったし、あったとしてそれを強要させるのは正しい友達の在り方と思えなかった。
だからウガミは勉強を教えてほしい、そうお願いした。
自分の中で、これが一番正しい答え方だと思うことにした。
ヨーと別れた後、ウガミは夕飯を用意するのが面倒に感じた。
フラッと寄った名前も知らないスーパーで惣菜を一つ買って帰った。
ウガミの腕時計は、だいたい午後8時前を指していた。
ありがとうございました。
これから、僕が書いてて楽しくなる展開なので
ちゃんとお話を考えなきゃいけません。
更新遅れます。