13話 【歩道橋の通り魔】
スペース開けるようにします。
ここ数話読みにくかったですよね。
すみませんでした。
区切りついたら遡って文を直していきます。
よろしくお願いします‼
時間が大切っていうのはこうやって気がつくのか。
彼女と図書室で話すほんの数分間がいとおしく感じる。
「電車の中、同じ時間、決まった位置に、制服を着た、手がとても綺麗な女の子がいたの」
「その子の手元をいつも見ていたら、ある日色も形もまったく違って見えてね、それで顔を見上げたらその子まったくの別人だったの!!」
「そうなると昨日も一昨日も別人を見ていたんじゃないかって、頭がこんがらがっちゃったんだよ」
「私はその子の綺麗な手を見ていたかったから、これは大失敗だったの」
「つまり、小さなことに執着してると大きな変化を見落としてしまうってこと」
「見逃さないように視点に気を付けましょう、これが私の結論です」
彼女は魅力的であり、変わっていた。
綺麗な微笑みで変なことを伝える。
メグミの実体験による教訓めいた小話はウガミを興味深くさせる。
会話の中でわかったこと。
同じ年代とはとても思えないような物事全般における造詣の深さがメグミにはあった。
それは同時に自分が単に常識知らずであることも示していた。
それが前日の6/22のこと。
6/23
黒く固そうな塊に覆われた空。
雨はいつ降りだしてもおかしくない。
ヨーとウガミの共同生活 最終日
それはヨーの雪辱を晴らす日である。
ヨー曰く全てが順調らしかった。
「負債を払って、僕は全部取り戻すよ」
ヨーは別れ際に確かにそう言った。
見慣れた顔に笑みはなかった。
ウガミが最後に見たヨーの横顔には蕁麻疹による赤い斑点ができていた。
数日前からだった。
ヨーの体は限界らしい。
ヨーは抱え込んだ過度なストレスから自律神経失調症になってしまった。
体温調節ができなくなり、体に激しい痒みがあるとのこと。
昼夜時間を問わずに突然全身に蕁麻疹が浮かび上がる。
ヨーは辛いなんて姿は決して見せなかったし、
自分の手で犯人に痛みを与えることで全てが良くなると信じて止まなかった。
いくらか楽な解決法もあったがヨーは困難に身を置いて自分自身が納得いく方法を選んだ。
現在 ウガミがいるのは高い塀で囲われた路地。
人通りはないが、誰にも見つからないようにウガミは物陰に身を潜める。
午後7時10分
スマホにメールが1通届く。
ウガミはそれを確認してすぐにスマホをしまった。
メールの件名 <無事到着>
本文はなかった。
ヨーから送られたものだ。
これは事前に聞かされていた予約メール。
10分ごとにウガミに届く設定になっている。
そのメールが届かなくなって初めてウガミは行動することになっていた。
ヨーの方は問題なく進んでいるらしい。
ヨーは7時30分にここに来る予定だ。
それまでの間、ウガミは共同生活を少し振り返ることにした。
ヨーの状況を考えると不謹慎かもしれないが、楽しかった。
勉強も少しずつだがやるようにもなった。
自分で言うのもなんだが、良い傾向にあるとウガミは思う。
ヨーのことも続けて考える。
教え込まれた喧嘩殺法に目を輝かせていたヨーの姿は偽物だったのか。
ヨーは自分を押し殺して、無理矢理にでも体を奮い立たせていたとしたら。
騙し騙しやっていたヨーの体がストレスに耐えきれなくなったとしたら?
この件は実は俺が先導してやらせていることじゃないのか。
ウガミは体に熱が帯びるのを、額に冷たい汗が浮かぶのを感じた。
ウガミの格好はゴーグルに防刃グローブ、セーフティスニーカー、体を覆う袖の下、腕にも腹にも脚にも対策は施されていた。
まぁ、犯罪者にはお似合いの格好だ。
ウガミは自身を軽く卑下してみた。
【歩道橋の通り魔】
それがウガミの全国紙での呼び名だった。
ウガミが上記の通り魔であることはヨー以外知らない。
ウガミにとって
周りに言わない自分の中の秘密が2つになった。
それだけだった。
人を襲っていないが、特定されたら逮捕は免れない。
そんなことをウガミはやってのけた。
ヨーに頼まれたことを1から10まで完璧に具現しただけでウガミは有名人になってしまった。
ヨーの思惑通り上手くいった。
☆☆☆
6/15
「この犯人は通り魔じゃない。ていうよりストーカーって表現がいいかも」
ヨーは自分の中で明らかにした部分と今後の展望を語った。
ヨーはウガミにわかりやすいよう噛み砕いて伝えた。
「犯人は単独犯で男。多分自制が利くタイプ」
「歩道橋と時間に熱狂的に拘っているね」
「ある時間にある歩道橋の上を通ることが犯行の引き金になるんだ」
「その後、犯人はターゲットを20分ほど尾行する」
「ターゲットが襲われるに相応しいところ、人のいないところに来たところで犯人は殺人に移項する」
「犯行が失敗する条件は
歩道橋を同時に多人数で渡る。
20分後、人通りの多い場所にいること。
午後8時を過ぎること。
時間が来たら犯人は撤退するはず。僕の場合がそうだったように」
「一つの歩道橋につき一人を襲う。多分殺したがってる。歩道橋の条件は階段が二つの一般的な形。だから駅とかには現れないとみていいんだ。天候や日付、曜日に左右されない。犯人は暇が多い人なんだよ」
「それでも被害者は僕をいれて6人。
ほぼ無差別にしては多くない。
自分で掲げた条件がかなり厳しいんだと思う。
時間に厳しく依存しているんだ」
「憶測が大部分を占めるけど信用してほしい。特に時間に関しては自信がある」
ヨーは犯人が歩道橋と時間に拘る理由については言及しなかった。
そこまでわかっていないのかもしれないし、
あえて犯人の背景を隠しているようにも思えた。
この犯行の被害者はヨーを最後に増えていなかった。
限られた情報の中で
ここまでの推理ができることに、ヨーの頭の出来の良さを感じずにはいられなかった。
頭の良さ、で済ませるには言葉が足りない。
ヨーの強い執念であるともウガミは思った。
ヨーが言うには、殺人に移る条件が厳しいだけで、犯人は常に殺しを狙っているとのことだった。
「じゃあ、犯人の次のポイントを決定させよーか。
新たな歩道橋通り魔を作り上げよう。
被害が出てる地域から離れたところに歩道橋通り魔を出現させる」
「なんでもいい。
犯行の条件を崩すこと。
歩道橋通り魔が新しく現れたことを犯人に知らせればいい。
ここに近寄るなのラベルを貼ればいいだけのこと。
ニュース報道なんかされれば儲けだね」
犯人の出現場所を狭めさせるため、犯人が狙うであろう場所を前持って潰すことにした。
ウガミは犯人と陣取りすることになった。
やることは簡単だった。
6/19~6/25の間
19:00~19:30に
この歩道橋を一人で渡る者を無差別に殺す
ヨーが指定した場所と時間にウガミは大量のこの文面をばらまいた。
噂は近隣に瞬く間に広がり、週刊誌もテレビも取り上げ、毎夜警察が常駐するようになった。
ヨーによると
「この程度では犯人は犯行を止めない。
むしろ、存在意義が揺らいで確実にターゲットにありつくことを優先させにくる。
もう何日も人を殺せてないからね」
なぜ、そんなことまでわかるのか。
なぜ、心理的な部分まで把握できるのか疑問に思ったが聞くことはできなかった。
ウガミはそれらを気にしないことにした。
☆☆☆
午後7時30分になった。
スマホに3通目のメールが入ったと同時に視界にヨーが映る。
時間通りにヨーが到着した。
ヨーの格好は限りなくラフなもの。
学生の私服といった感じ。
ヨーはターゲットになりきっていた。
精悍な顔つき、爽やかな格好の中にどんな感情を秘めているのか。
ヨーの武装は、しいて言えば鉄鋼芯加工されたスニーカーくらい。
拳を使うのに覆うものは用意しなかった。
どうやらヨーにも拘りがあるらしい。
ウガミはヨーとは真逆の格好で身を隠しながら辟易していた。
自分にはまるで関係ないと言われているような感覚。
安全なところで安全な格好、それはウガミに対するヨーの配慮であった。
これから起きることについて
ウガミは少し考えた。
この状況を他人が見た時、誰が罪を被るのか。
四人を殺しているが私刑の被害にあう者
復讐で殺人犯に私的制裁をする者
歩道橋の通り魔として全国紙デビューした完全武装の見届け人
……きっと三人とも捕まるんだろう。
ウガミは見上げた空に息詰まりそうな閉塞感を感じた。
誰にも邪魔されない空間で自由に暴れる二人をウガミは見届ける。
ヨーの言葉が頭に再生される。
「決まりごとをいくつか。
多分僕らが相手にするのはまともじゃないやつ。
相手がどんな人間でも反応しないこと。
なるべく言葉を口にしないこと。
自分から捲き込むこと。
相手の土俵に入らないこと。
徹底的に叩くこと。
これは相手に痛覚があることを祈ろっか」
ヨーは歩きを止めて後ろを振り向く。
目当ての殺人犯とヨーは対峙した。
ありがとうございました。
あと2話書いたらヨーの話は区切りがつきます。
順次修正入れながら話も更新させていくつもりです。
更新は遅くなりそうです。