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11話  ヨーの背景

!!!閲覧注意!!!

暴力表現あります。

胸糞悪い感じがあります。


よろしくお願いします。




利用できるものを全て利用して何としてもやり遂げる。


ヨーは自分の中に掲げた復讐を再度確かめる。


奪え。ぶっ壊せ。取り戻せ。

その後で僕は笑えばいい。


自分の中に芽生えた初めての感情をヨーは上手く認識できない。自分が自分でなくなる感覚。綺麗な自分が汚れていく、なんて自分を驕り高ぶった表現ではない。ただ嫌な奴になりそうってだけ。それでも強さを手に入れられるのなら、喜んでこの言いようもない不安を手離そうと思う。


嫌なことから目を背け続けた。だから向き合う時が一番怖い。まずは思い出すことから始めることにした。深呼吸を何度も繰り返す。震える体、ざわついた心臓を落ち着かせて、ヨーは横になりそして目を瞑る。いつもと違う匂い。ウガミの部屋に漂う匂いは、ヨーに過去と向き合う勇気を与えた。




五月と思えない暑さ。むせかえりそうな感覚は自分の偏見か、それとも気温の関係か。

その日は晴れだった。

五月の大型連休の最終日、僕はアキと二人で買い物に出掛けた。

アキが僕を兄として慕ってくれるように、僕も妹としてアキを可愛がった。

仲の良い兄妹の遊び疲れた帰り道だった。

そこで通り魔に襲われた。

後ろから表れた男は中肉中背、背丈は僕とあまり変わらない。どんな格好をしていたかはあまり覚えていない。男の狙いはアキだということは異常にギラついた目線からわかった。男が刃物を出して、アキに突っ込んできたところを僕が遮って刺される。男は僕に目もくれないでアキを刺そうとした。アキは棒立ちだった。僕は男をアキに近づかせないようにした。何度も何度も刺されて、やっと刃物を奪うことに成功した時、殴られた。眉間に衝撃が走った。刃物で刺されたところにも拳が飛んで来た。殴られたのは人生で初めてだった。出血の量に伴い体の力が抜けていく。足がふらつく。僕はたまらず膝をついてしまった。男はそれを逃さずにアキのところへ行こうとする。僕は男の服を掴んで注意をこちらに向けさせた。奪った刃物で刺せば止まると思ったがダメだった。刺せないまま、男の膝蹴りをもらってしまった。顔を変に反らした分、膝蹴りはこめかみに入った。頭がはねあがって、さらに血が出て、力は入らなくても、握力だけは残っていた。僕はずっと男の服を掴んだ。男は僕に暴力を振るった。慈悲の欠片もない悪意の塊をぶつけられ、何度も意識が飛びそうになる。服を掴んでおく力もなくなったが大丈夫。アキは僕と男からすでに離れていたし、男が僕に憂さ晴らしをするだけだったから。

男は急に何か叫んで走ってどこかへ消えた。

アキが僕のところに来る。

何か言っているようだが何も聞こえない。ぼやけた視界に写る景色は正しく見えているものかわからない。

わかるものは血の味、血の臭い。横たわる僕の体にアキが手をそっと重ねてくれた。

啜り泣く声と共にアキの無事を確認できたところで意識がなくなり、僕は病院で目を覚ました。



心臓の鼓動が早く打つのを感じながらも、

目を開け、体を起こしたヨーは回想を補って考える。

ここ周辺の通り魔の被害者は僕とアキを除いて四人いる。その四人はいずれも一人の時に殺されたらしい。襲われて生きているのは自分とアキだけ。考えを掘り下げようとしたところでヨーは情報が必要だと判断した。午前中に図書館で通り魔関連の記事を探す。ウガミのアパートにいる時は自前pcを使って調べる。ヨーは犯人特定に勤しんだ。


自分が避けてきた、逃げた時間を埋めるように、この二週間は何としても奔走するというヨーの意思の表れだった。



ウガミと一緒に暮らすことはヨーにとって、いい刺激になった。

ウガミは人の意見を基本的に否定しない。人間味がないようで、それが人間にとって一番ありがたい。

ヨーは通り魔を調べることと平行して体を鍛えなければならない。通り魔に復讐するための土台作りだ。夜を克服し基礎体力を上げるためのランニングや、公園でウガミから教わる喧嘩殺法や人の蹴り飛ばし方はどれもウガミがいて初めてできることだった。

ヨーはウガミに感謝しても感謝しきれない。


ウガミの薦めた本は読みこむほどヨーを興奮させた。


ボクシングにはウガミから教わった喧嘩殺法をヨーは活かした。ジムの仕事を手伝うことでヨーはジムに長居させてもらっていた。その中でヨーはボクサーという人種を目に焼き付けた。拳一つで人を地に這いつくばらせる方法を見て学んだ。




ボクシングジムに通いつめて4日目、ヨーは初めて人をノックアウトした。

殴り合いで人に勝った。


拳に残る確かな手応え、感触。周りは自分を褒めた。才能、センスと語りかけられる言葉が自分の心にチクチク刺を立てる。自分が通り魔にコテンパンにやられたことをこの場の誰一人知らない。ヨーは笑って周りの言葉を流す。上手く笑えているかはわからない。

僕は物足りなさもどこか感じていた。ダウンした人間をなぜ10カウントも休ませるのか。


人を殴ると頭がヒンヤリ冷える。冷たくなった頭は次に何を出せば相手が苦しむか、答えをくれる。

それを試そうとするうちに相手が倒れる。リングの上では拍手でさえも無味乾燥にヨーは感じた。




ありがとうございました。


あと4か5話くらいでヨーの話は終わると思います。

更新は気長に待ってもらえると幸いです。

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