青木 駿の場合3
途方に暮れていると、メール着信音が鳴り、メールが入ってきた。
宛名は注文の多い携帯電話店。
数年前から噂になっている、何でも願いが叶う携帯電話を販売する販売店があるという。
あるプロ野球選手はその携帯電話を受け取って補欠からレギュラーに昇格し、メジャーで大成功を収めたらしい。
ある起業家はアルバイトから社長まで出世し会社を世界有数の大企業に成長させたらしい。
ある政治家はホームレスだったが、政界に進出し自身の政党を立ち上げ首相にまでなったらしい。
『初めまして青木様。 お困りでしょうか? この度の事件に関してお伝えしたいことがあります。 是非当店までお越しください。 つきましては、ご自宅のポストの中に招待状を入れておきますのでよろしくお願いいたします。 支配人より』
最初はイタズラの可能性も考えたが、ポストの中から一通の手紙を見たときに確信したのであった。
そして、封を開けた瞬間、僕は森の中にいた.......
仰向けで今まであったことを考えていると、少し先から物音が聞こえてきた。
目の前に古びた洋館があった。
表札には携帯販売店 LYNXと書いてあった。
そして、扉の前には一匹の黒い猫がいた。
こちらを金色の瞳でじーっと見ている。
僕を値踏みしているような視線だ。
呼ばれているような気がしたので、館の前まで行くと猫は僕に向かって。
「やぁ、いらっしゃい」
猫が喋った......
驚いてものすごくバカみたいな顔をしていたのだろう。
猫は僕の様子を見てニヤリとくっくっくと笑う。
「しゃべる猫は初めてかい?」
ただ、首を縦にふるだけの僕。
「初めまして! 僕はリンクス、この店の看板猫だ、ようこそいらっしゃったお客様」
彼は二本足で立つと熟練の執事のように綺麗な礼をした。
あっけにとられているとリンクスは肉球と肉球を叩いてパチンと音を鳴らした。
すると館の扉が自動的に開いて行ったのであった。
「さぁ、入ってくださいお客様歓迎いたします」
この世ならざる扉が開く。