生意気な後輩と素直な新人
…こうなったら、とことんコキ使ってやる!
神谷は切り替える事にした。
どうせ、面倒な事を押し付けられたんだ。
だったら、とことんこっちだって、利用させてもらおう。
厄介な仕事はどんどん、彼に任せようではないか。
OJTの名の下に!!
真田君、君に恨みはないが、俺の手となり足となり、馬車馬の様に働いてもらうぜ!
グフフッ。
「…神谷さん、どうしたんですか?朝から悪い顔してニヤけてますよ…」
「…野村?!」
見ると、野村が少し引いた様な目で神谷を見ていた。
やばい!どうやら思いっきり顔に出てた様だ。以後気をつけよう…。
にしても、こいつは先輩に対して全く遠慮がないな…。
「新しい仕事、大変らしいじゃん?」
元はと言えばこいつがやるべき仕事だったのに…!嫌味の一つでも言ってやらなきゃ気持ちが治らない。
神谷が話しかけると、野村は少しだけ驚いた顔をしたが、すぐにいつもの少し、人を小馬鹿にした様な表情に戻った。
「あー、聞きましたよ。新人君のOJT、神谷さんが担当する事になったんですってね。すみませんねぇ、本来なら僕がやるべきでしたのに。今、新事業任せられてて、とてもじゃないけど、新人君の面倒まではねぇ。神谷さんは僕と違って器用ですから、きっとこなせますよ?頑張って下さいね〜」
そう言うと、野村は缶コーヒーを買って去って行った。
なんと!?
嫌味を言おうと思ったら、逆に言われ逃げされた出はないか!?
チクショ〜、何が「器用だからこなせる」だ。完璧俺の事、小馬鹿にしてるだろう??
まあ、あいつの生意気さは配属当初からだ。新人の初々しい時はあったんだろうか??
"こなせる"かぁ…。
自分で選んだんじゃないか。
何を少し、へこんでいるんだ。
まだ俺は割り切れていないのか?懲りたはずだろう?
それにしても…あいつ(野村)も結構朝早いんだな。
神谷はボンヤリとそんな事を考えながら、席に戻ると新人君が、待っていた。
「神谷さん!何かやる事あったら遠慮なく言ってくださいね!僕、雑用でも何でもやりますので!!」
真っ直ぐな瞳でこちらを見る真田に、神谷は、さっきまで邪な事を考えてた自分が、少し後ろめたくなった。
「あっ、あぁ、うん、わかった」
「神谷さん、真田君は素直でイイ子なんで、しっかり教えてあげないとダメですよ〜」
そんな様子を、横目で見てた野村がニヤニヤしながら言ってきた。
こいつ!また嫌味か!
今のお前の方がよっぽど悪い顔してるじゃないか!
野村を軽く睨むが、野村は全く気にしないといった様子でパソコンに向かい直した。
真田君の瞳は相変わらずキラキラしている。
あ〜あ、足して二で割ったような同僚が欲しい。
神谷はパソコンを起動させると、新規フォルダにOJTと打った。