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恐怖  作者: 仲島香保里
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悪夢を見た後は

 うわぁ!と声を上げたかもしれない。飛び起きた勢いで掛け布団がベッドの横へずり落ちた。パジャマの首筋が既に汗臭い。前髪も汗で額や頬に張り付いてくる。瞬きをすることも忘れるほどの動悸だった。今日の夢も嫌に現実じみている。死体との距離が妙に近かった。今までで一番顔を近づけていた。

 せっかくの休日なのに……

 汗で濡れたパジャマで二度寝する気がしなかった。一旦起きてパジャマを脱いで洗濯機に放り込み、タオルを濡らして全身を拭き、新しいパジャマを出して着替える。この調子で、悪夢を見てその度に着替えるようでは、もう一~二枚、パジャマを買い足したほうがよさそうだ。

 ベッドにもう一度横になったのはいいものの、体を拭いて目が覚めてしまった。二度寝はやめて、眠くなれば昼寝をしよう。今日は何の予定も入れていないのだから。

 カメも顔負けの遅さでのそのそと歩いて1Kの一人暮らしにちょうどいい広さの室内を進んでソファに座って一息つく。心臓がこのまま破裂するのではと思えるような激しい動悸はなかなか収まらないし、さっき見た夢を思い出すだけで汗が滲み出るようだ。

 新しい夢だった。正確に言えば新しい登場人物だったのだ。これまであきらに話してきた夢に出てきたのは男性だった。しかし、今回はおそらく女性だ。おそらくというのは、夢の中で顔をかなり近づけたのは間違いないのだが、顔の印象が全くないのだ。顔に特徴がないからではない。理由はわからないが、見たはずの顔を覚えていない。ただ、ビニールシートにくるまれた躰がほっそりとしていたような感覚があるのだ。

 夢で見ただけなのに、何故かその内容が、既に知っている――いや、認識している〝概念〟として記憶、あるいは意識に組み込まれているような違和感が頭をもたげる。

 今日の夢に出てきた女性も当然知らない(はずの)人だ。それ故に恨みも憎しみもない(はず)。

 夢に驚き、飛び起きたその瞬間は恐怖しかなかった。現実世界における「人を殺した」という罪の重大さに呑まれた結果だった。しかし、頭のどこかで、あの女性を殺したという結果に満足しているような達成感を感じたのだ。

 何故このような夢を見るのだろう……?

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