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恐怖  作者: 仲島香保里
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悪夢、再び

 ギリギリセーフ。

 今日もこの間悪夢を見たときのように、パンが焼けるまでの間に着替えを済ませる早業を成し遂げ、出勤のための準備の全てを二十分足らずで終えて無事出社できたのだ。

 やれやれ……

 年に合わない年寄りじみたことを思う。

 たかが夢。されど夢。

 嫌に現実味に満ちた夢に翻弄さているかのようだ。

 頭の上に小さな米袋を乗せて仕事をしている気分だ。それでもなんとか午前中の仕事を終えた。効率が落ちていないかが不安なところだが、ランチをすればマシになるだろう。


 「さては今日も夢、見ぃたぁなぁ~?」

 安っぽいホラーアニメの幽霊のように両手ぶらぶらさせながらあきらは言う。

 「オバケみたいに言わないでよぉ。ほんっと怖かったんだから。でもなんでわかったの?」

 「遅刻ギリギリだし、髪ボサボサだし」

 「なるほど」

 「んで?聞いて差し上げよう。どのような夢じゃ?」

 「んーと……今まで見てきた夢の、始まりの部分って感じ?だから夢の初めは、まだ男の人は逃げてないんだよね」

 「ほうほう。それから?」

 「男の人を見つけて、歩いていくんだけど、その速さが、車で走ってるみたいに速いんだよね。そこからの、殺気がものすごく伝わってきて、起きたときも心臓バクバクだったの」

 「リアルだね~。今回も男の人の顔、見えなかったの?」

 「うん」

 「ふーむ。見えたんなら、関係とかわかりそうなのになぁ」

 「うん……なんか怖いドラマでも見ちゃったのかなぁ?」

 「あ。それじゃない?子どもが怖い話聞いて、そのまま夢に見ちゃうってのと同じなんだよ」

 「なんか……私が子どもみたいじゃん?」

 「ん?違うの?」

 「おーい」

 お互い本気で言っているように会話し、その後は二人とも笑い出した。


 いつもと同じように仕事をし、電話対応もし、特にミスもなく今日も仕事を終える。今日も仕事終わりにあきらと夕食を食べに行く。

 あきらが居酒屋の割引クーポンをスマホアプリで見つけたからと言い、居酒屋に行くことにした。全てのドリンクメニューが通常の半額になり、席の時間制限はないというもので、女性に人気のクーポンだったようだ。一番安いメニューでは、焼き鳥が一本九十円。安い割にはボリュームもあるし、何より美味しい。もっと会社に近い場所にできてほしいものだ。あきらは相変わらずソフトドリンクしか飲んでいない、烏龍茶とオレンジジュースとカルピスソーダを繰り返している。

 他愛もない話に花が咲く。ふと言ってみた単語などからもどんどん話が広がっていき、なぜ、その話になったのか、どちらにもわからない。

 楽しい。

 夢に悩まされている自分が馬鹿馬鹿しく思えてくる。こんなに楽しめているのだから、あんな人を殺す夢など必要ないのだ。



 重い……何故死体はこんなに重いのだ。解体してでもいいが、余計な血が流れる。自分の服やカバンが汚れるのはごめんだ。使えなくなるし、もったいないし、何より汚らしい。

 一応ブルーシートにくるんでいるが、こうやって引き摺っていて破れないだろうか……?あぁもう。肩が外れそう。手も切れそう。

 ――ここまで来れば大丈夫かな。

 周りには誰もいないことを確認して、ブルーシートから死体を取り出し……

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