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恐怖  作者: 仲島香保里
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あの時に見た夢・・・

 今日は水曜日なので、会社の近くのカレー専門店でナンの無料サービスがある。お互いがカレー好きということもあり、水曜日になればこの店に入る。そのおかげで、店員ともすっかり顔馴染みになった。二人ともカレーは辛口派である。あきらは肉がゴロゴロと入ったカレーを頼み、私は野菜を長時間煮込まれたカレーを頼む。

 ほどほどの辛味は代謝をよくする。初め、あきらは辛いものが苦手と言って甘口のカレーを頼んでいたのだが、一緒にカレーと食べにいくようになってからは、辛いものを好んで食べるようになった。

 もっちりとした巨大なナンをちぎってカレーにつけて食べる。女子トークを交えながらカレーを充分に楽しんだ。会計の時間も節約してお茶も飲みたい。会計は二人一緒にいつもどちらかが支払い、次回は片方が支払うということにしている。

 カレー店の近くにあるセルフサービスの喫茶店に入り、カレーの辛味を洗い流すようにブラックコーヒーを二つ注文する。空いていた席に座って、尽きることのない女子トークを再開させる。その女子トークの中で、今朝見た夢のことを聞いてもらった。あまりに怖い夢は、誰かに聞いてもらった方が正夢にならずにすむ……とかなんとかの都市伝説的な事を聞いたことがあったのだ。

 「あのね、今日すっごい変な夢見ちゃって」

 「ほうほう。よし、当ててやろう。さては山内課長にセクハラされた夢だな?」

 あきらは、見た目に相応しい、女性にしてはハスキーな低めの声で、おどけたように言う。

 「あー、それはそれで悪夢だわー」

 「違うの?」

 「残念。ハズレ。結構、ガチで怖かったんだよね」

 「オバケとか幽霊関連?」

 「ううん。……私が、人を殺しちゃった夢」

 「えー!なんかストレス溜まってるんじゃないの?具体的には?」

 そう、あきらは、具体的には?などというように、あきらの方から詳しく教えてくれというように進めてくれるので話しやすい。

 「私が夢の中で、男の人を追いかけてるの。途中でその人が転んで、私が笑いながらその人に近づいて手を振り上げて……ってとこで目が覚めたの」

 「結構リアルだね。その男の人って知ってる人?」

 「ううん、顔がわからないの。男の人ってわかるだけで」

 「顔もわからないから、恨んでるとかもわかんないね。凶器でも持ってたとか?」

 「それもわかんない。でも、夢の中でもはっきり〝殺意〟を感じるんだよね。このままだとこの人殺しちゃうなって夢の中でも考えてるから、疲れるというか」

 「そりゃ、寝た気にもなれないなぁ。それで今日は髪ボサボサだったのか」

 「そんなにボサボサだった?」

 恐る恐る尋ねると、あきらは、はははと明るく笑った。

 「大丈夫大丈夫。普通だったから。でもさ、そんな感じの夢見るの、初めてじゃないよね?」

 「うん……それがちょっとね……」

 そう。これが初めてではない。

 実は、今日の夢で三回目なのだ。一回目の夢は、既に誰か分からないが男性を殺した後、死体をバラバラにして、ダンボール箱に詰め、ガムテープで封印し、その箱を隠すことに必死になっている夢だった。二回目は、すでに事切れた男性をこれでもかと云わんばかりに、ナイフで滅多刺しにしたり、鉄パイプのようなもので何度も執拗に殴っていた。相手が緋色の醜い塊になったことを確認し、満足げに微笑む夢だった。何日経っても、この夢は本当に後味が悪い。

 この夢は、回数ごとに、一つの出来事を遡っているのだ。

 この夢は毎日見るわけではない。一回目と二回目は十日ほどは開いただろうか。二回目と三回目は五日ほどしか経っていない。

 三回にも渡った夢に出てくる男性は、顔は見えないのに、全て同じ人だという自覚があるのだ。男を襲っている人物の顔も当然見えないのだが、そのシーンは、第三者が男を殺しているのを外部から眺めているような景色ではなく、自分の目が見ている景色そのものを夢に見てきた。そうでなければ、朝にパジャマが汗でぐっしょりとなるほどではないだろう。

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