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恐怖  作者: 仲島香保里
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悩める悪夢

 二日酔いのような違和感が若干残ってはいたが、スーツを脱いで、脱ぎ散らかしていたジャケットもちゃんとハンガーにかける。動きやすいルームウェアに着替えて水をコップに半分くらい飲む。冷たい水が喉を流れていく。喉を流れていく水が、体の熱と様々な負の感情を洗い流してくれているようだ。

 長い溜息をついて、しばらくの間、部屋のどこか一点を見つめる。いろいろな考えが頭に浮かぶ。その思考の大半は、当然夢のことだった。

 あの夢――

 何故自分は、あんな夢を見たのだろう?

 こんなことを考えていては、また脳に影響して夢をみてしまう。そう言い聞かせてはみるものの、この思考だけはどうしても止められない。

 なにかが夢に影響しているにしても、それにしては毎回の夢の内容がころころと変わっている。

 初めは男性、その次は女性。最後は別の女性看護師――おそらく、今まで、この三人に関わったことなどない(はず)。

――もう忘れよう。気にはなるが、夢なのだからどうしようもない。

 台所に行って、一人用の土鍋に水を入れ、野菜や豆腐やうどんなどを適当に入れ、醤油や出汁た酒で味付けした鍋焼きうどんを作る。テーブルの鍋敷きに土鍋を置いて、テレビを点ける。なんでもいいから、雑音が欲しかった。雑音があれば、その音で変な考えを打ち切られると思った。

 しかし、今回に限り、それは逆効果だった。

 たまたまバラエティ番組とドラマの間のニュースをしていた。T県に住む女性が行方不明になっており、その女性が今日の朝、遺体で発見されたという内容だった。

 女性は、奈須詩織、二十四歳。二十日程前から連絡が取れなくなっていて、家族が警察に相談。遺体発見現場を通りかかった女性によって発見されたという。

 この女性だ。

 男性の次に見た夢に出てきた女性。

嘘……何で?どうして?

 どうして夢に出てきた人が行方不明になっている人で、その人が殺されてるの……?しかも二人が二人ともなんて……こんなことってあるの?

 偶然と言われれば偶然だ。何せ、夢では女性の顔はわからなかった。それは伊達沼という男性のときと同じだ。

 しかし今、こうやってテレビで奈須という女性の写真を見ると、「この人だ」と確信できるのだ。

 ……何故、伊達沼という男も、この奈須という女も知人などではない。知人にこんな名前の人はいない。当然、顔も知らない。会社の関係者でもない。なのに夢に出てきて、その夢に出た二人が死んだ。

 なんだか私が殺しているみたいではないか。私が、彼らが殺される夢を見たから彼らが本当に殺された。

 罪悪感――

 そう。罪悪感という言葉が一番近い。

 直接危害を加えたわけではないのに、感じる罪悪感は、なんとも居心地の悪いものだった。

 恐怖に息が上がるのを感じ、慌ててテレビを消す。そして、無理矢理忘れようとするかのように、目の前に置いた土鍋の蓋を取り、うどんを食べているのか、豆腐を食べているのか、卵を食べているのかわからない。鍋に入っている具材をなくすという目的だけで口に運んだ。

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