人と俺と、それぞれの想い
五日目。
GWです。
どうにか粘ります。
「お買い上げありがとうございましたー!」
自動扉が開くと店員の声が聞こえた。
いや店員ではなく店長の八重さんだ。
そして丁度お買い上げしたところの和美がいる。
「あれ、慧く……じゃなくて慧ちゃんと峰っち?」
「み、峰っち……?!」
峰が和美の言葉を何故か復唱しているが、俺の知った事では無い。
「お、和美か。母さんからお使いを頼まれてね。峰はその成り行きで付き添うことになっただけ」
「やっぱり慧ちゃんは良い子だなー。ナデナデしたい!」
「ナデナデ……」
「和美、公衆の面前でそういうのは控えろ」
基本こいつはストッパーとなる人物が居ないとエスカレートし、歯止めが効かなくなる。
そして峰はどうして和美の言葉を復唱しているのだろうか。
「女の子同士なんだしいいじゃーん」
「精神衛生上での問題なの!」
先ほどチャラ男の時は声が出なかったが、気心をしれた相手だったからなのか比較的大きめの声が出せた。
初対面の相手でも普通に接せれる様になるのが急務かもしれない。
「そっかー。慧ちゃん慧ちゃん。ここでは声を小さくね!」
「お前が言うな……」
あんなこと言ってるが結構声が響いている。
決して大きいのではなくて響いているのだ。
女声合唱部の部長直々に熱心な勧誘を受けていたのを記憶している。
当の本人は歌う時に顔が気持ち悪くなっているから遠慮しておくと言っていたがあれは多分嘘であろう。
「慧よ、一つ良いか?」
「何……」
どうせくだらないことだろうと思っていたが違った。
実際こいつは和美よりマトモなのだ!
「目的のモノは買わなくて良いのか?」
「あ、そうだね。サンクス峰」
サンクスはサークルとかの方じゃなくこれは感謝の意味の方だ。
「あ、あぁ……」
今、照れているのか?
茶目っ気のある奴め。
あれ、急に峰が可愛く見えて来たぞ。
「むぅ〜……」
「ど、どうした和美」
「なんだかズルい……」
へ?
和美は何のことを言っているのだろう。
よく分からないぞ。
「……あの二人は相性が特別良いのかな? わ、私だって……」
「おーい、和美?」
「え、あ、慧、ちゃん?」
和美が声を掛けただけで急にテンパり始める。
意味の分からない俺。
峰は再び空気。
「む、俺はこの辺で自宅へ帰還させてもらう。慧よ、次は学校で会おう!」
「お、おう……」
「ばいばーい、峰っち」
峰は去り際に何か和美の言葉を復唱していたがもう気にしない。
そう心に決めた。