妄想と中二病と
三日目。
まだいける。
「よ、よう。峰、和美」
今ありのままに起こった事を説明しよう。
朝、目が覚めたら腐れ縁の知り合いが二人遊びに来た。
何故にこんなに朝早くに来るのだろう。
まあそれはまだ良いとして、心配してくれたのは嬉しいがもっと別の連中に来て欲しかった。
「久しぶりだな我が眷属にして最強の友人よ」
……中二病を引きずる男。
峰頼道。
イマイチ俺の立ち位置とかがよくわからない。
「慧君、久しぶりーっ。 寂しかったんだー、撫でてーっ!」
マイペース暴走少女。
赤坂和美。
なんだ、こいつは。
人の家にやって来て早々。
犬か?
犬なのか?!
「……ブレないな。お前らは」
中学時代からの腐れ縁だ。
しかも何故か同じ高校と言う奇跡だ。
和美に至っては俺について来るためだけに高校のランクを落としたとか。
流石、自称俺の彼女は伊達じゃあないな。
いや、あいつが勝手に言ってるだけで本当の彼女ではないが。
非常に高度な妄想癖なんだと思う。
きっと現実と見間違う位に。
「撫でてよーっ、撫でないと机バンバンだぞっ!」
「いや落ち着けって、今はそんなに動き回れるような身体じゃないしさ」
いきなり和美はぶっかましてくる。
妙なコトに何時もより会話のペースが早い気がする。
「ふん、今回は俺が死者の国の女神に生贄を捧げるべく動き回ったかいが––––」
「はいはい、中二病乙」
俺のツッコミによって気分を害されたのか複雑そうな表情を浮かべるものの別段嫌そうではないので別に問題はなさそうだ。
しかしこっちは密度が薄い。な
「慧君が女の子になったから私が旦那さんにもなれるのね!」
「いや、その発想はおかしくないか」
その考えは逆転の発想どころじゃないだろ。
「女の子同士での×××も––––」
「それ以上はやめて!?」
これ以上その言葉は聞きたくない!
その先を聞いてしまったら色々と俺の中の何かが崩れ落ちてしまいそうだ。
「どうしたの慧君。受けより攻め?」
「いや、そういう問題じゃない!」
百合、悪くはないが流石に無理だ。
ってなに考えてるんだ俺!
ダメだ、和美の思考に乗せられるんじゃない。
「あ、慧君じゃダメだ。慧ちゃんって呼ばないとまどね!」
和美がいつも以上にマイペースな気がする。
逆に峰に至っては空気と化している。
いや、和美の独特な会話のペースに呑まれているだけか。
まあ今回偶然来るのが被ったらしいしな。
初見だとキツイだろう。
「あ、そんなに顔をしかめてどうしたの? 慧子ちゃんが良かった?」
「……ん、いや、そういう問題じゃ無いから」
峰が手招きをしている。
「……慧、お前は凄いな」
「慣れたもんだよ」
「っ……!」
峰が何かに気がついたのか俺から顔を背ける。
「そのだな……、顔が、近い……」
「ならどうして俺に手招きしたんだよ」
「つい、いつものノリでな……」
峰は俺から逃げる様に離れて部屋の隅で縮こまってしまう。
確か女性に苦手意識があったんだっけ。
前に言っていたような。
「おやおや、何だかいい雰囲気だね! 認めたくないけどね!」
「茶化すな」
まあなんだかんだで楽しく過ごせる時間が心地よかったわけでもあって——。