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脳移植したら世界が変わっただと?!  作者: 猫夏れい
第一章「脳移植と変化」
2/21

新たな自分と親の想い

連続投稿一日目。

これがいつまで続くか。

「う、ん……」



 目が覚めるとそこは真っ白な清潔感満載の病室。

 しかも個室というお値段の張る素晴らしい部屋だ。


 実際、最低でも二人部屋の方が良いと思ってはいたのだがな。

 一人はキツイ。

 夜とか随分と寂しがり屋なのだ。



 ふと、全身に違和感を感じる。

 どう言い表すのだろう。

 身体がなんだか馴染んで無いというのだろうか。

 体の各関節が錆び付いたかのごとく動かし辛い。



(けい)お兄ちゃんっ」



 ドアが二回ノックされる。



「入って良い?」



 妹が見舞いに来てくれたらしい。



「どうぞ」



 俺は自然に応える。


 あれ。


 自分の言葉にどこか引っかかるものを感じた。

 どこかが前と決定的に違う。


 口は先ほどと変わらず動かし辛い。

 でももっと別の何かが違う。


 しかしそんな思考は部屋に入ってきた妹によって打ち消された。



「失礼します。あれ、慧お兄ちゃんはどこ?」



 妹の発言に言葉を失った。



「あ、ごめんなさい。間違えちゃいました。うーん、部屋番号まちがっちゃったかな……」



 謝る妹が少し可愛く見えた。

 それよりも血の繋がった兄の顔を忘れたのだろうか。

 いや、それは無いはず、だ。



(ゆう)、……お前なにを言ってるんだ?」


「え? もしかして、慧お兄ちゃん、なの?」



 優は驚きに見開かれた表情で俺を見つめている。

 どうしてそんな目で見るんだ。



「これじゃ、お姉ちゃんだよ!」



 ……は?

 思考停止。


 こいつ今なんて言ったんだ?



「お姉ちゃんってなんだ! って声高い?」



 ようやく違和感の正体について気づく。

 女声になっている。

 無駄に癒し系な声だ。

 前のようなしわがれ声じゃない。



「な、なにが起こって……」



 ……ということは、だ。

 俺が女になっているならば、付いているものも付いていないってわけだな。

 試しに太ももをこすり合わせてみるが例のアレの感覚は無い。


 む、むぅ……我ながら鈍いとしか言えないな。



「お兄ちゃん、事故にあって脳移植をしたらしいんだけどてっきり男かと思ってた……」


「脳移植?」



 あの困難を極めると言われたあの手術だよな。

 この前、ニュースで2回目の成功が報じられてた。

 その時点までで既に150回以上も試行されてきたらしく、成功率は単純計算で約2%となる。

 確かにこれは困難を極めていると言える。



「こら優、慧の部屋には先に入るなって言ってたでしょ。ってあら、こんなに可愛くなっちゃって」



 柔和な表情を浮かべた母が部屋に入ってくる。

 相変わらず洗練されている歩き方だ。如何にも伊達に令嬢をやっていただけのことはある。

 うちの母は何を隠そうとある大企業の令嬢だったのだが、今の父と恋に落ちて紆余曲折を経てついに駆け落ちして現在に至っている。


 駆け落ちなどをして親を怒らせてしまったらしく未だに勘当され続けている。



「慧、大丈夫か? 後遺症とかは無いよな?」



 父が病室に入ってきた途端に俺のことを心配し始める。



「一応性別が変わってしまったということだけは聞いていたが……。ショックというのは思ったより大きいものだなあ」



 父はそう言うとうつむいて黙り込んでしまう。



「もう、みー君ったら二人でじっくりと考えての結論でしょ?」


「確かに、そうだが……慧にも説明してやる必要があるか」



 ドナーとなる人体が運よく見つかったがそれが女の子だということで、最初は両親が反対していたらしいが二人で数十分くらい話し合いをしそれに踏み切ったのだそうな。



「ドナーの女の子の家族は?」


「それは……」



 いつもは実直かつ素直で真面目な父が珍しく言葉を詰まらせた。

 何か言いづらいことでもあるのだろうか。



(りん)ちゃんにはもう家族は居ないらしいの」



 へ?



「凛ちゃん?」





「ドナーの尾崎(おざき)凛ちゃんの家族は交通事故でみんな死んでしまったの。ちょうど慧と同年代だったからドナーとしてここに運び込まれたの」



 母はいつものどこか間延びした声はどこに行ったのか、真剣ではっきりとした声だった。



「慧、心配掛けないでね? 貴方が居なくなったら私は……」


「母、さん」



 その声はとても細くて、今にも折れそうで、寂しそうだった。

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