気遣いと気遣い
お久々です。
ってか何回久々って書く気だこの作者。
あれから望月先輩と会う勇気もわかずに自宅への帰り道を歩んでいた。
母さんは夕飯の食材を買いに行ったので別行動というわけだ。
まあ、病院からも近く、タクシーは使わずに徒歩だ。まあ暫く歩けてもいなかったしリハビリも兼ねている。
「……ふむ、お姉ちゃん。何か病院で嫌なことでもあったの?」
優が俺の心を見透かしたかのように見つめている。
「……え、そうかな?」
「だって、なんかつらそうな顔してるもん」
心配されるのは嬉しいんだけど初恋の相手と今更出会って気を遣われた、だなんて言えないよなあ。
「いま他の女の事を考えてるね、慧ちゃん」
和美からの横槍が入る。図星で吹き出しそうになったがどうにかこらえきれた。
「そ、そんなわけないだろ」
「……看美ちゃんのこと?」
面倒になりそうなので和美を誤魔化そうとしたが、次の一言で言葉が詰まってしまった。……なんでそんな寂しそうにしてるんだよ。
「……そうなるな」
そんな顔なんてされたら嘘なわて言えないだろう。
「……? 看美さんってお兄ちゃんの元カノだよね?」
優が不思議そうな顔をしている。
ああ、そう言えば家族に自慢とかしてたな。あの時の俺をぶん殴りたい。
「そうだ。その、病院で偶然会ったんだ」
病院での出来事をかいつまんで説明する。短期間ではあったがまさか再開してしまうだなんて思ってもみなかった。
「偶然、ねえ。お姉ちゃんはさ、今は望月看美さんのことをどう思ってるの?」
「……? どう思うってなぁ。旧い初恋の人だよ。甘いけど最後は苦い記憶なんだけどね」
優はそっか、と短く返すと顔をそっと近づけてきてこう言い放った。
「どうしたいかはお兄ちゃん次第だよ」
「え、……優?」
「切なそうな顔して、心残りがあるんだよね?」
完全に見透かされているような気がする。俺は和美の方に視線を向けると、ぽぉっと俺を見て複雑な表情を見せている。
「っひゃあ! わ、わわわたしははは、いいいいからららら」
いや、めちゃくちゃ動揺しているじゃないか。心なしかぐるぐる目になっているようにも見える。
「俺はなあ……」
俺は……。
望月先輩のことをどうしたいんだろう。どう思っているのだろう。
今更会ってどうする?
俺の初恋は既に終わったのだ。
あの時をもって甘い時間は儚くも砕けた。
「ねえ、慧ちゃん。看美ちゃんからは言わないでって頼まれたんだけど。もう、長くないんだ」
「長くない?」
俺は思わず聞き返す。
和美は静かに頷く。
「私も看美ちゃんやお母さんからは教えてもらってないけど、治らなくて徐々に体が弱っちゃう病気なんだって」
和美は寂しそうにそう絞り出す。
……なんだ、そういう事だったのか。もっと早く言って欲しかった。
「……お姉ちゃん、私たちは先に帰っておくね。」
「おう」
決心はついた。
なら絶対に会わないとな。
気を遣われたままいなくなるなんて許さない。せめて一言くらい文句を言いたい。
いろんな意味を込めてバカヤロウって。
「慧ちゃん、看美ちゃんをよろしくね。多分今の慧ちゃんと私のことに気を遣っちゃたんだと思うんだ。私にも会ってくれてなくて」
「なら無理にでも会うだけだよ、任せろ」
そう言って俺は病院への道へ、今来た道を逆方向に進んでいくのだった。




