退院
お久しぶりです。
あれからというものの、毎日のように和美が訪ねて来るようになるなどちょっとした変化が起こった。
とはいえども、和美の本質は変わらずいつものように俺を疲れさせてくる。
「久しぶりのお天道様だな」
「慧ったら、どこでそんな言葉を覚えて来るの? とはいえ、退院おめでとう」
「退院おめでとう、お兄ちゃ……、じゃなくてお姉ちゃん!」
家族の面々が俺にお祝いの言葉をかけてくれる。
父さんは今日は急な仕事があるらしく来れないそうだが、帰りにケーキを買ってきてくれるそうだ。
「ふふふ、褒められてまんざらそうでもない慧ちゃん可愛い。ふふふ」
よく見ると家族にさりげなく混じってるのが1人。こいつ、自然と溶け込みやがって……。
「和美、お前はもう少し慎みというものをだな……」
「私も同意するわよー? 慧ったら褒められるといつもこうなのよ」
「……はぁ」
母さんが介入してきたらもう泥沼に突入してしまう。
さっさと会話を切ってから家に帰ろう。うん。それがいい
「にゅふふ」
「お姉ちゃんかわいい……ポッ」
何故だろうか。
このツッコミを入れないと止まりません的空気が流れている。
「「うずうず」」
「……」
期待の視線がいたい。
「だーらっしゃあ! いい加減にしろ、お前ら!」
「「うわっほーい!」」
「キレられて喜ぶなよ!」
ああ、またこんな日常に戻るのか。
というか優と和美の奴、変に意気投合してやがる。
「……はぁ」
「あれ、お姉ちゃんため息? どうしたの?」
「あぁ、ちょっといろいろとね」
あの後、俺は望月先輩とは全くと言っていいほど出会わなくなった。
偶然出会わなかったのか、それとも意図的に避けられていたのかは分からない。
「慧ちゃん、心残り?」
いつもの明るさに似合わず心配そうな目つきで俺を見つめてくる。
今まで見た事のない表情にドキッとしてしまったのは内緒だ。
可愛かっただなんて言った暁には調子に乗ってしまい、どうなる事かわかったもんじゃない。
「まあな」
「キャー、私への恋慕の感情だなんてそんなぁ……!」
「……言ってねえ、自重しろ」
俺が短く返すと和美は両手を頬に当てていつもの調子に戻っていた。
でも、やっぱりこれくらいが俺には丁度良いのかもしれない。




