時間の力は凄い
お待たせしました。
意気込んだ俺は早速屋上へと向かった。
前は暗くてよく見えなかったが、屋上には人口のものと思われる芝生が広がっている。
中央には凝っていることに木まで植えてある。
駄目元で来てみたところ、必然か偶然なのかわからないが彼女は居た。
望月先輩……。
日の下で照らされるその白い四肢と整った顔立ち。
手足はギリシャ彫刻よりもほっそりとしていて、とても弱々しく見える。
顔も病的な程に痩せこけていて昔の面影はほとんど残っていない。
寧ろ俺が望月先輩だと気づくことが出来たのが奇跡なのではなかろうか、と思う位に。
俺は緑の多い屋上から街を一望する先輩の元まで行く。
肩には力が入ってしまいその歩きは何処かぎこちないものとなっているだろう。
幸か不幸か先輩は気がつく様子もなく、俺は横から外を一緒に眺めた。
「昨夜ぶりだね」
先輩はすでに気がついていたのか俺が手すりをつかんだ瞬間に口を開いた。
「私、いえ……俺としては数か月ぶりですけどね」
俺が一人称を正すと先輩は驚愕に満ちた目でこちらを見つめる。
流石にもう気づいただろう。
あんなに察しの良かったあの先輩なのだ。
気づかないわけがない。
「まさか、慧、君か?」
案の定の台詞を言う先輩。
そして俺はその言葉に無言で頷く。
「そう、なのか……」
「……」
現状についての告白まではした。
次に俺は先輩に何を話すべきなのだろうか。
話題が見つからない。
ああ、それにしてもやっぱり先輩は美しいなあ。
げっそりしているはずなのに、痩せこけているのにどうしてだろう。
いつの日かの面影が重なって見える。
夢を、幻想を見過ぎているのだろうか。
「私のことは放っておけ。お前は好きなことをすればいい」
先輩はただそう言った。
そして何も俺のことなど聞いて来なかった。
俺が女になったこと、そして離れてからのこと。
何一つたりとも。
「聞きたいんじゃないですか。俺のこと」
もしかして忘れられたのだろうか。
一瞬脳裏にそんな考えが浮かんでくる。
……俺は何を考えているのだろうか。
昔の片思い相手なんだぞ。
今はなんにも思っていないと言うのに何を心配しているのだろうか。
「そりゃあ聞きたいに決まってるだろう。私は我慢してるだけさ」
その言葉を聞き、俺は何故か安堵してしまった。
知り合いから俺だった存在を忘れられるのが怖いのかもしれない、俺は。
「……どうしたのさ、そんな綺麗な顔でうれしそうにしちゃって」
「別になんでもないです」
なんだかそれから後は気が楽になったのかもしれない。
覚えててもらったからか、それとも先輩の方から気を遣ってもらったからかはわからない。
俺はいつの間にか肩から力が抜けていることに気が付いた。
もしかすると、俺は先輩と過ごすこの時間を楽しいと感じて過ごせているのかもしれない。
連続更新記録は途切れたけど、最後まで気力を振り絞ります。
完結させねば……!




