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第6話

ちょっと短いです……


 俺たちが駆け寄るにつれ、はっきりと見えてくる姿。

 それは緑色をした小柄な姿。

 身体中に大きなイボがあちこちと出来て、服装は粗末な腰ミノだけだ。

 それぞれ棍棒や錆び切った剣、あるいは木の棒などを手に持っている。


 それが六人いた。


「え? あれ人間か?」

「ど、どうなんだろう」


 何か危険な香りを感じて思わず足を止める。

 しかしそれは遅かったようだ。


「ギギッ?!」

「ギィィィ!!」


 奇妙な叫び声をあげこちらを指し、そして手にもった武器を振り上げて向かってきた。 どう見ても友好的な態度ではない。


「ひっ、なにっ?!」


 エミが恐怖の声とともに身を震わせている。

 俺は「逃げろ!」と彼女の手を取るが、止まったままだ。

 足が竦んで動けないようだ。


 日本に住んでいる限り、敵意むき出しで武器を振り回しながらこっちに迫ってくる集団に遭遇する、という経験なんてまず無いから仕方ない。

 でも、この状況下でそれは致命的だ。


 あいつらとの距離は、もう百メートルもない。

 オリンピックの陸上選手が走れば十秒もかからない。

 このままだと囲まれて袋叩きだ。いやあんな武器で殴られたら死ぬ。


 ……やってみるか。


 湖に向けて打ち出した光線。

 あの時の感触を思い出しながら手に力を籠める。

 手からあの不思議なオーラが漂ってきた。


 いける!


 大きく息を吸い込み、右手を腰に据え、正面から寄ってくる緑色の敵を見つめる。

 残り距離は、あと二十メートルくらいか?

 想像以上に緊張する。

 これ失敗したり、外したりしたら、フルぼっこされるんだろうな。

 目を細め狙いを定めつつ、そして吸い込んだ息を一気に吐き出して拳を突き出した。


 その瞬間……閃光が走る。


 凄まじい轟音と共に、地面が抉れ、土砂が舞い、こちらへ向かってきた集団を巻き込みながらはるか遠くまで光線が飛んでいった。

 ぱらぱらと舞った土と一緒に、ちぎれた腕や足が次々と地面へ落ちてくる。


 うぇっ?!

 や、やりすぎた?


「…………」


 エミの方をみると、彼女もぽかんと口をあけて固まっている。


「……こ」

「こ?」

「殺しちゃたの……?」


 吐き出すように呟き、大きく目を開いて俺から距離を取るエミ。

 彼女の目には恐怖が浮かんでいた。


「いやまてっ、これは正当防衛だ! あのままだと俺らがさっきの奴らに殺されていたぞ!」


 必死で弁解するもさらに後ずさりしていく。


「こ、こっちこないで……」

「だからっ!」

「い、いやあぁぁぁぁ!」


 突然走りだすエミ。

 慌てて追いかけるものの、足が縺れてうまく走れない。

 全身の力が抜けきった感じだ。

 もしかして、さっきの光線出した影響か?

 その間にどんどん離れていくが、追いかけることもできない。

 どうしよう。

 正直に言えば、ここで無理までして追いかける義理はない。

 冷たいようだが、所詮は赤の他人だ。

 しかも俺が彼女から離れた訳ではなく、彼女が俺から離れていったのだ。


 ……しかし。


 昨夜、一緒に人里を探そうと言ったしな。

 しかも、あの武器を振り回してきた奴ら。

 あいつらと同じようなものが、他にも居る可能性が高い。

 俺だけなら、まださっきの光線で何とか対応はできる。

 ちょっと頑張りすぎたのか、今は身体があまり言う事効かないけどな。

 手加減すれば相手を殺さず戦意を奪うことだって可能だろう。


 でも彼女には何もない。

 もしかすると俺のように何らかの力が生まれた可能性は否定できないけど、使えなければ力がないのと同じだ。

 となると、彼女だけでは危険だ。


 仕方ない。出来る限りは頑張るか。


 ふら付く足を無理やり立たせて、エミが走っていった方角へ少しずつ歩こうとしたときだ。


「おいおい、お前さんちょっとやりすぎじゃないか?」

「え?」


 俺の背後から少し低い声が飛んできた。

 慌てて振り向くと、そこには中世ヨーロッパのような鉄の鎧を着込んで、更に腰に帯剣をしている、三十代前半くらいの男が一人佇んでいた。

 ついさっきまで誰も居なかったはずなのに。


 それにしてもでかい。


 百八十cmある俺より更に拳一つ分は高く、かなり鍛えている身体つきをしている。

 無精ひげを生やしていて、穏やかな雰囲気を発しているものの、目は油断なく俺を見ている。


「あ、あの……」


 恐る恐る声をかけようとしたが、遮られた。


「お前さんの龍気でかいな。あれだけのモン出すなんて、相当訓練しただろ? それにしてもたかがゴブリン数匹程度に、あれは出しすぎじゃないか? しかしエルフ族のようだが……なんというか雰囲気が俺ら人族に似てるなぁ」

「え、えっと」

「俺も結構龍気法は訓練したつもりだったが、お前さんに比べりゃ雲泥の差だな。もっと精進しなきゃだめだな」

「龍気って? いやそれより、あなたはどなたですか?」


 そう問いかけると、男はウェストポーチのようなバックからカードを一枚取り出して見せてきた。


「俺はアズイレードの討伐ギルドに属してる、Aランク冒険者のライドノルだ」




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