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契約せし者の双剣  作者: 葵セッカ
新しき選定者
8/21

思惑交錯

「おいリセファ、これはどういうことだ?」

「どうも何もこういうことですよ、レナトさん」


「レナトさんはどうしてこんな奴らと一緒に行動しているんですか?こいつらはサーシア王家と同類なんですよ?」

「俺は、俺らは弱い。それはリセファ、お前も分かっているだろ?」

「ええ」

「だからな、同じ結果を望む強者にへばりつくことしか出来ないんだ」

「それは、私たちの志を挫くということでしょうか?」

「ああ、もう俺にはこの国の王になろうという気はないし、王も必要ないと思う」

「ずいぶんあっさりしてますね。自分が言い始めたくせに」


「まあ、別にいいですよ。私たちは私たちでやりますから」

「って、おい!リセファ、お前…まさか…!」

「まさかって程でもないでしょう。当初の目的を果たしますよ。相手が誰であってもです。もちろん、あなたが相手であろうが躊躇無く殺しますよ?あなたはもう仲間ではないのですから…」

リセファと呼ばれた少女は口元に手を当て、微笑を漏らしながら、少女と来ていた昔の仲間たちと共に帰って行った。その中には寂しい表情をしていた者や呆れていた者、憎らしそうに見ていたものなど、それぞれがレナトに抱いていた心を全く隠さずに表していた。


「最後に一つ言っておきます。私の名前はリセファではありません。苦痛を与えし堕落者(ペイン・フォイルニス)が一人、サラ・ロゼと言います。以後、お見知り置きを」

最後にサラ・ロゼと名乗った肌の焼けたみすぼらしい少女は一人、汚いスラムへと足を運んで行った。




「レナトさん?どうかしましたか?」

「いや、なんでもない」

「あの方々はレナトさんの仲間ですか?」

「正確には仲間だった(、、、)だな」

「すみません、こちら側に巻き込んでしまって」

「いや、いいんだ。結果としては俺が入りたいって言ったんだからな。それに、あんたに力を貰ったしな。もうルリア王国から離れることはできねえだろ?」

「そうですね。黙っていてすみません。眷属というのは、離れ過ぎては使えません。精々半径二十キロメートルが限界でしょう」


「と、そろそろ行きましょう。もう、皇真さんが国民たちを止めてくれているでしょうし」

「ああ、分かった」


レナトとジンがその場を離れた後、そこにいたのはリセファ、もといサラ・ロゼだった。


「ルリア王国と言えば、沙玖夜の従姉妹の国でしたよね?」

『うん、そだよ〜』

「壊してもいいですか?」

『いいけど、無理しないでね〜。ヴェルズはもちろんだけど、ジャグルは眷属が武器と同化しているし、ジンも凄いよ。何しろ四大天使、ウリエルの契約者オーナーだからね、魔力が澄んでいるって証だよ』

「はい、もちろん分かっていますよ。でも、私だって堕天魔、リセファの契約者オーナーですから」

『偽名使って入り込むのはいいけどさ〜。なんで堕天魔の名前を使うかな?』

「いや〜、名前が思い浮かばなかったんですよ」

『サラのネーミングセンスは崩壊しているからね〜。じゃあ、そろそろ行ってら。良い報告を期待しているよー』




「そういや、城にどうやって入るんだ?まさか、門から入るってわけでもないだろ?」

「まあ、それぐらい考えているさ。ジャグルが」

「俺かよっ!いや、まあ、考えてはいたけどさ」

「じゃあ、早くやれジャグル」

「横暴だなヴェルズ!しかしまあ、やりますか。

力を司りし天使よ、我が魂を糧としその力を我が体に宿せ。出でよ、ゼルク!」


眷属にも憑依は存在し、使用者によっては契約者の憑依にも勝ることがある。

また、契約者の憑依は自身の魂、すなわち魔力に天魔を取り込むことで成立す

るが、眷属の憑依は、魔力を天魔の眷属に供給することで成立する。


「早くしろよ〜、ジャグル」

「お前は黙ってろ!

力業ムスケル・マハト!」


「ただのパンチじゃん!刀使わないのかよ!」

「魔力で筋力を増大させたんだよ。ただのパンチじゃゼルクを憑依させた意味がねえじゃねえか」

「じゃあなんで刀にしなかったんだよ?」

「それは、まあ気分?」


「おい、ジャグル、レナト。先を急ぐぞ!」

「先って言うより、地下じゃねえか?これ」

レナトたちの前には城への地下通路がジャグルによって整備されていた。




「みんな、武器は持った?」

サラの問いかけに反国王勢力の面々が大きく肯定する。

「それじゃあ行くよ。国を壊しに」

サラの一言を合図に彼らは一斉に城の裏手に突撃を開始した。



「乙音、フィズ、ここは任せてもいいか?」

「うん?いいよ」

「…どうかした?」

「いや、少し城の裏に回ろうと思ってな」

「分かった。それじゃあこっちは私たちでなんとかする。って言っても、ねえ?」

「うん。多分何も起きないよ?」

フィリアの演説に武器を持たない民衆たちは心を奪われていた。第一段階の作戦、一般民衆の侵入の防止は無事に成功した。

「まあ、そうだろうな。それじゃあ、よろしく頼む」



「やっぱりこっちは誰もいない。思った通り。みんな、出来るだけ静かに進入するよ」



「ルリ、フウカ」

「らじゃあ」

「オッケー」


西側にいたフィリアの側近は城の裏にある警鐘を鳴らした。



「警鐘、ってことは裏に侵入者か」


「奏皇真殿とお見受けする。この事態は何事か?」

「城の裏手から侵入者です。恐らくは反国王勢力と。それより、あなたは?」

「おっと、失礼した。私の名はセイン・ロー。セルフィア王国の軍人であり、フィリア王女に忠誠を誓った者だ」

「ああ、初めて来た時のドアに立っていた人か。それじゃあセインさん、急いで軍を…ってそうか、戦争の準備で人が」

「いえ、フィリア王女の忠誠軍ならば動かすことは可能、急いで手配いたす」

「よろしくお願いします」

「奏殿はどうするつもりで?」

「先に裏へ行って、足止めをしておきます」

「会得した。では、急ぎ軍を」

「よろしくお願いします。では」

「ご武運を」




「さて、これから俺たちは何すんだ?」

「あれ?レナトに話して無かったのか?ジン」

「いえ。話しましたよ?」

「ああ、戦争」

「なんだ聞いてんじゃねえか。そんなんだから眷属使えねえんだよ」

「自分が使えるからって人が気にしてる事に触れるな!」

「やかましいぞお前ら。

あ〜。ほら、敵が来たじゃねえか。ジン、宣戦布告は済んでるか?」

「はい」

レナトの怒声を耳にした、王国軍の兵士たちが彼らのいいた城の東側広場に、二百人程集まってきていた。

「んじゃ、いいか。見たとこあの王女様の兵でも無さそうだし。

おーい、レナト、ジャグル。そろそろやるぞ」

「「ああ?」」

「うーわ、こっわー」


「ったく、なんでこんなに敵が来てんだよ」

「それはお前の所為だろうが」

「どちらでもいいので、二人ともヴェルズと一緒に戦って下さい」

「ジンも結構口煩く言うようになったよな。ま、やりますか。な?レナト」

「俺はあんたに言われなくても分かってるよ」

「あ、レナトさんは眷属使えないので無理に参加しなくても構いませんよ?」

「なんだか俺への風当たりが強い気が」

「気のせいです」

「気のせいだろうな」

「ああ、気のせいだろう」

「おいこら」


「まあ、半分は冗談です」

「残りの半分は本気だったのか?」

「いえ、残りの半分はレナトさんで遊びたかっただけです」

「あんたそんな人じゃなかったよね!?」

「ジンはこんな奴だぞ?なあ、ジャグル」

「ああ、こいつは若いくせに腹黒くて、ドSだからな」

「なんか、今になって凄い後悔してる」

「ま、さっさと諦めて、俺の仲間になれ」

「いや、なるけどさ」


「おーい!レナト、ヴェルズ。そろそろ戦わないと敵増えてるぞー」

「うわ、マジか。しゃあねえ。やるぞ!二人とも威力は控えめにしとけよ」

「はい」

「分かってるよ」

「レナトは……まあ、頑張れ!」

「雑いな、おい!もっと士気上がること言えよ!」




これより以前、ルリア王国の宣戦布告より数時間ほど前の話。セルフィア王宮にて、

「父上、フレイダ、ルリア両国との戦争に勝機はあるのですか?」

「シグマとメリアか。安心しておけ。お前たちは何も考え無くてよい」



「兄上はどう思っていますか?」

「どう、というと?」

「あのキモい親父の言っていたことです」

「ああ、デギスのことか。正直、勝機は無いだろうな」

「そうですよね。やはり、フィリアの側に付いたほうがいいと思いますが」

「いや、それはならん。聞けば、あいつは外の男に誑かされてしているそうだ。そんな覚悟のあいつに付くのは兄としてのプライドが傷付く」

「でも、最終的には支援するんでしょ?シスコンの兄上のことだし。他の男に誑かされたのが気に食わないだけでしょ?」

「はっ、妹を想うのは兄として当然だ」

「俺は優しくて綺麗なハルラ姉さん派だから、その気持ちはちょっと分からないかな」


「シスコンはシスコンで一緒よ!なんでいつも私だけその対象にならないんですか!?」

「うわっ!セリア?どうしてここに?」

「そんなことはどうでもいいんですよ、メリア兄さん。それでどうしてですか!」

「まあ、セリアは…なあ、メリア」

「まあ、そうですよね」

「何ですか、何なんですか!いつも私だけ除け者にして!」

「セリアはなんというか、娘って感じなんだよ」

「ああ、そんな感じです、兄上」

「私はメリア兄さんと同い年ですよ!双子ですよ!」


「シグマ、メリア、セリア、そのくらいにしなさい。ここは宮中とは言っても、部屋の中では無いんですよ?」

「あ、姉上。はい。分かりました」

「それで、何か話をしていたようですが」

「ああ、そうでした。メリア、セリア、それに姉上も。少しお話があります」

「分かりました。私の部屋で構いませんか?」

「はい」



「それで、話と言うのは?」

「はい。デギスについて、今の国について相談をと思いまして」

「どうして今なんですか?兄上」

「フィリアが動き出したからですか?」

「それもあるが、一番は戦争だな」

「そういえば、さっきあいつのところに行く前にも言っていましたね」

「ああ。それで、先日ルリア王国のヴェルズ王がデギスと会談をしたの知っていますね」

全員が肯定を示す。


サーシア家の構成は、ハルラ、シグマ、メリア、セリア、フィリアの順番である。


「その時の様子を同じ場で見ていたのですが、近いうちにルリア王国がセルフィア王国に宣戦布告するものと考えました」

「それは、どうしてですか?」

「何の根拠もない、只の勘です」

その後もシグマの話を聞いて最後にフィリアについての話となり、シグマの相談内容は終わった。

「そうですか、私はフィリアに助力するつもりですが、皆さんはどうしますか?」

「私はフィリア側に付こうと思います」

「俺たちは表立っては無理そうかな。ですよね、兄上」

「ああ。直接の支援は難しいと思いますがなんとか手伝ってみます」

「分かりました」


その後、シグマの勘の通り、ルリア王国の宣戦布告を受け、なんとかヴェルズとシグマの会談を可能にしようと努力するのはメリアで、相手がヴェルズとジャグル、ジン、レナトのみであると知り、驚いたのはシグマだった。また、兵たちに出兵をやめ、国のために国を倒そうと説得するのはセリアで、ハルラだけはどこへ行ったかさえ、誰も知らなかった。




セルフィア王国より少し北方。フレイダ王国にて。


「シュビレ様。アリアス女王殿下が呼んでおります」

「アリアス?戦争のことかしら?分かりました。すぐに向かいます」

淡々とした口調でシュビレは兵士と話し、アリアスの下へ向かう。



「ああ、やっと来た。シュビレ、分かっていると思うけど、あなたも参加するのよ?フレイダ王国のレイジアとして、ね?」

「ええ、分かっています。ですがアリアスやカレアたちは?」

「私ももちろん行くわ。私も契約者だしね」

「もちろん、俺たち兄弟姉妹きょうだいも参加するさ」

アリアス女王のフレイダ王国はアリアス・オーディスをトップに置き、第一王子カレア、第二王子ジャウス、第三王子デリオス、第一王女レンナ、第二王女シノアの五人が王家の人間である。




セルフィア王国より、遥か西方。フェイル帝国。


「呼んだか?エレイネ」

「呼びましたか?母上」

「イリアナ、そんなに畏まらないで。お母さんとか砕けた言い方でいいのよ?」

「は、はい」

「仕方ないさ、エレイネ。イリアナにとってお前は母親であると同時に皇帝なんだ。畏まりもするさ」

「私は皇帝などではないわ」


「エレイネ様、リリシア、ローズ両名、到着しました」

「ありがとね。突然の呼び出しに応じてくれて」

「いえ、エレイネ様のお呼びでしたら…。ですが…」

「セトとファーラのバカたちは来る気配は全くありませんでした。セトはリリシアの説得に応じず、ファーラは私が行った時には行方知れずで」

「そう…。仕方ないわね。始めましょうか」


フェイル帝国はレイジアのエレイネを皇帝に、その夫であるディオラ・モーディス、娘のイリアナ・モーディス、リリシア・ソフィア、ローズ・オラトリスが仕えている。リリシアの弟のセト・ソフィアそしてファーラ・セブルスの二人もいるが、この二人は現在、フェイル帝国の反エレイネ主義者である。




フェイル帝国の南の隣国。紅穹皇国。


「ニュクスさーん。秀焰兄様が呼んでいます、よ?あれ?ニュクスさーん?いないの?ニュークースーさーん!もしかしてまだ寝てる?入るよー!ニュクスさーん」

紅穹皇国の皇帝、星秀焰の妹の星秀悠は若干の想像との相違を感じた。

というのも、レイジアであるニュクスは寝ていたのだが、その隣には秀焰の弟で、秀悠の兄である秀藍が寝ていたのだった。

「秀藍兄様!どうしてニュクスさんと添い寝しているんですか!?」

「ん?…ぁ…あん?ああ、秀悠か。悪いな。ちゃんとニュクスと焰兄のとこ行くから、先行っといてくれ」

「ダ・メ・で・す!今日は大事な話なんですから、すぐに起きてください!ほら、ニュクスさんも!」

「うにゅ?秀…悠?なんでここに?」

「秀焰兄様に頼まれて呼びに来たんです!」

「うん?えんえん?やだー、えんえんの話って面白く無いから行きたくなーい」

「誰の話が面白く無いんだ?ニュクス」

「ふあ!?え、えんえん?なんでここに?」

「秀悠がお前を起こすのに手こずってると思ってな」

「すいません、秀焰兄様。私のせいでわざわざ」

「いや、気にするな。秀悠。お前は悪くない。悪いのはこいつらだ」

「あれ?焰兄、俺も?」

「もちろんだ。秀絆、秀流、秀明。いるか?」

「はい」

「いますよ」

「どうしました?秀焰」

「戦争だ」

「「「はい?」」」

見事に秀悠、秀藍、ニュクスの声が被った。

そして秀焰は続けた。

「このバカップルを討て」

と。

「はい、兄様」

「御意」

「ええ、分かったわ」

「まじで言ってる?皆様」

「逃げた方が良さそうじゃない?らんらん」

「そうだな」


結果、秀焰、秀絆、秀流、秀明にしごかれた秀藍とニュクスは王宮にて正座させられていた。

「なんでしょうか、お兄様」

「どうしたの?えんえん」

「会議だ。東で戦争が起きる」


紅穹皇国は星家の長男である星秀焰が皇帝、その弟に秀藍、秀絆、秀流。妹に秀明、秀悠がいる。また、母親である、星燐奏もいるが、その顔は星家の者以外は知らないほど、部屋に籠っている。



to be continued...

クリスマス、皆さんは素敵な日を過ごしたリア充になりましたか?(後書きを書きたい派の人間なので、余計な事を口走ってますがw)

私、葵はですね……。

クリスマスしました…のかな?クリスマスだからといって家で何か特別な事をしたという事もありませんが、まあ、クリスマスしました。(クリスマスだねって言いました!)

はいっ!この話終わり!

年末ですね。そろそろ24時間耐久でお尻を引っ叩かれる番組とか延々と歌を歌い続ける番組とか見る時期ですねー。

ああ、あとインフルエンザとかノロウイルスとか気を付けて下さいね。

無駄に後書きしましたが、8話でした。

本編も後書きも長くなってしまって申し訳ないです。

次回は厳しいかもですが1月11日に投稿頑張ります!


じゃっ!

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