休息侵略(上)
「皇真、大丈夫か?」
「龐か…。すまないな、迷惑をかけて」
「いいんだよ、それで。俺らはお前を殺すためにいるんだ。謝られても困る」
「そうか…。サンキューな、龐」
「礼を言われるというのも違う気がするが…。まあ、ここは素直に受け取っておくよ」
「そういえば、ここはどこだ?」
「ルリア王国中央首都、ミラグラの南西部、王宮のすぐ隣の病院だよ」
「そうか…。流々華や翔たちは?」
「いるよ。お前の友人たちも一緒だ」
「そうか。俺は、動いてもいいのか?」
「ああ、少しなら構わない。会いに行くなら王宮にいるそうだ。僕も行くけど、構わないかな?」
「ああ、むしろ同行してくれ」
「お、皇真か。久しぶりだな」
「リューイと翔か…。他のみんなは?」
「奥でガールズトークだって」
「だから俺らは二人でボーイズトークしてた」
「いや、僕はしてないよ?リューイが勝手に話してただけで」
「お、おう、そうか…。あいつらのところには行ってもいいのか?」
「うん、大丈夫だと思うよ」
「入っていいか?」
皇真は扉をノックすると部屋の中からの声を待ち入った。
「久しぶりだな、みんな」
皇真は同郷と学生時代の友人を見渡すとそう言った。
「はい、お久しぶりですわね、皇真さん」
「相変わらずの女たらしね、貴方は」
「久しぶり、皇真」
「おう、皇真。おっひさー!」
部屋の中にはフィズ、フューズ、乙音、ナガレ、ツキヤ、流々華、フィリア、ジンの八人が談笑している姿があった。
「皇真も起きたんだね〜。んじゃ、いっちょやりますか!」
「何を?」
「ジンの彼氏は相変わらず態度が白々しいねー」
「確かにそうですが、私に言われても困ります」
「ま、それもそっか。皇真、手合せしよう」
「どうして流々さんは殿方のような話し方なのですか?」
「どうして、って…。初対面の時からだったよな、翔」
「うん、流々は昔からだったね。その割に少女趣味だから、そのギャップで流々に惚れる人も多かったよね」
「ああ、そうだったな…。リューイも含めて全員を振ってたから同性愛者だって噂されてたな」
「おい、皇真!なんでそれバラすんだよ!」
「翔!?なんで私の趣味もバラすんだ!?」
「「面白そうだったから」」
「おい、翔。お前は俺と戦え。ぶっ潰してやる」
「〈魔法門〉が最強の魔導師とは限らないんだよ?」
そうして、四人はジンに許可を得て、全員で王宮の庭へと向かった。
「とりあえず、俺と翔が先にやる。いいか?」
「うん、いいよ。な、皇真」
「ああ、構わない」
皇真と流々華が承諾すると、リューイと翔は向かい合い、距離を取った。
「はい、んじゃ、開始!」
流々華の唐突な開始の合図に取り乱すこともなく、二人は魔法を発動させた。
共にできる限り小さい声で。
リューイが発動したのは火属、単一魔法。KEYは〈フランメ〉
翔が発動したのは光属、単一魔法。KEYは〈シュトラール〉
それぞれの出した火球と光線は二人の中央で重なると、大きな爆発を起こした。
その瞬間、翔の体が光を放つ。KEYは原始改竄〈シュトラール〉
乙音のものと同じであり、彼がもう一人の原始改竄を使う魔導師である。
一方、それを察したリューイは〈アオフ・エアシュテーウング〉と呟くと、動くことをやめた。
翔はそれに近付くと〈シュメルツ〉と唱えた。
瞬間、リューイの体に激痛が走る。しかし、それに耐え、気を落ち着かせたまま、〈ルフトシュトローム〉と唱え気流を起こすと、上空の雲を落とし、濃霧の中に翔を閉じ込めた。
「リューイの勝ち、かな?」
「うん、そうだね」
「別に〈魔法門〉の人間だからって言いたいわけじゃないが、俺らは倭楼を守ってるんだ。お前に負けるようじゃ、務まらねえよ」
「確かに、それもそうだね。本気で相手もしてくれないようじゃ、僕もまだまだかな」
「本気を出していないのはお前もじゃねえか、翔。そのくせ、直接的に激痛走らせやがって」
「あはは。ちょっとした仕返しだよ。いつもお世話になっていたからね」
「それじゃあ、次は私らだな」
「皇真、動いて大丈夫なの?」
「心配するな、ジン。もう動ける」
「そう、ならいいんだけど…」
「やはり、ジンも惚れた男には態度が変わるんだな」
「ああ、乙音もそうなのか?やっぱそんなもんなんだろうな…。まあ、そこもグッとくるけど」
「あはは、惚れた弱みだよね」
「だな。龐にもそのうち分かる時が来るだろうけど、俺的には政略結婚はお勧めしないぜ?やっぱ惚れた女と結婚するのが一番だからな」
「お前なんかに言われなくてもわかっているよ」
「龐…まさか、お前もついに…」
「ああ、流々と婚約した」
「み、龐!?なんで今言うの!?私今から戦うのよ!?」
「ほう…」
「これはまた…」
「翔!リューイ!笑うなー!」
「流々、落ち着け。龐が好きなんだろう?胸を張っていればいいんだ」
「なんで皇真も笑ってんのよー!」
などと流々華は男性陣に弄ばれていたが、龐は女性陣に弄ばれることはなかった。
「流々、落ち着いたか?」
「うん、大丈夫。でもあんたの記憶は程よく消す」
「怖いな、それは」
「まあまあ。二人とも、準備はいい?__じゃあ、始めっ」
「〈リュストゥング〉!」
「憑け、覚」
それぞれが戦闘の準備をすると、両者共に軸足が地面に埋まる程に踏み込み二人の中点で鬼と鎧装の拳がぶつかった。
「やっぱり、鬼を使うか」
「リューイさん、皇真さんは多くの天魔と契約していながら、あまり多くの天魔を使わないように思うのですが」
「あ、私もフューズと同じこと思ってた」
「その辺は龐に聞いてくれ。俺は戦略家じゃねえんだ」
「皇真は基本的にはそれほど強くない相手にはイロウエルを使うよ。理由は力を誇示するため、かな。イロウエルは恐怖の天使で、皇真は自然現象を扱うんだけど、実際には殺傷能力の低いものが多い。だから、自分の噂を広めるため、ということに繋がるんだ」
「では、ファヌエルは?」
「皇真がファヌエルを使ったのは今までに一度だけ。それは、倭楼を抜けた時」
「うん、ジンの言う通り。皇真が最初に契約したのは実はファヌエルなんだ。まあ、直後にイロウエルも彼と契約したんだけど。知っていると思うけど、皇真は堕天魔を封印されている。それでも最初は奏が周りに隠していたんだ。でも、ある日皇真はイロウエルとファヌエルに出会った。俺はそこまでしか知らないけど」
「皇真たちはその事実が他の〈魔法門〉に知られて、処分されることになりました」
「ちょっと待って。皇真たちって?」
「美乃梨さんと真希の二人」
「二人は皇真と違ってあの頃はまだ契約者ではなかったんだけど、駄目だった。俺ら子供には何もすることができなかった」
「それで、二人も殺される事になったから、三人は夜逃げ。そして、見つかった時に使ったのがファヌエル」
ナガレやツキヤもこの話に耳を傾けていたが、フィズやフューズのように口を挟む事はなかった。
「シパクナーは対大多数での戦闘に使う。ブファスに関してはよく分からない」
「そして、鬼は対少数での戦闘です」
「ジン、皇真の試合をよく見ないでいいのかい?」
「二ノ宮流々華の鎧装に皇真が敗北を喫する事はありませんから」
「ジンは龐とは違って大物だな」
「婚約者的には流々が殴れるのは見たくないからね。必死に応援しないと」
「〈コンプレーション・ラケーテ〉!」
「軌道が甘いよ、流々」
「鬱陶しい!〈リュストゥング〉ファランクス!」
流々華は半透明の鎧装を一層巨大化させると、一体の巨人と化した。
「面白い、憑依、シパクナー」
「宿れ、ファヌエル、イロウエル」
皇真はシパクナーを憑依させると、更に両手をファヌエルとイロウエルに憑依させた。
左腕をシパクナーの蒼穹の鎧に纏わせ、右腕をイロウエルの白銀の鎧と剣を纏わせた。
「おいおいおいおい、皇真のやつ。どこまで強くなるつもりだ?」
「何かが、皇真を必死にさせているんだろうね」
「龐、何かではありません。彼の成長は母国への哀憐です」
「そうだったね。翔、リューイ、乙音、俺たちも国か幼馴染のどちらかを捨てなければならないだろうね」
「ちなみに俺は皇真を選ぶぜ」
「僕もそうなるだろうね。乙音は寝てるどう言うかは分からないけど、いざとなれば乙音とも敵対する覚悟だよ」
「乙音はなんで寝てるんだ?」
「さあな。まあ、翔とお楽しみだったんだろう。翔がお父さんになる日も近いかもな」
「リューイ、〈シュメルツ〉」
瞬間、リューイの体に激痛が走る。
「効果は五分ぐらいかな」
「今のはリューイさんが悪いですわ」
「翔、龐、リューイ、、ジン、フューズ。試合終わってるわよ?」
「まじか!?流々は?勝ったのか?」
「負け、だね。残念だけど皇真の方が強いよ。多分、龐やリューイや乙音よりも皇真が強いよ。まあ、ジンの実力はよく知らないから、この中で一番、とは言えないけれど」
「ジンは誰かと手合わせしねえのか?何だったら俺が相手するけど」
「リューイさん?まだ魔力が全快していないようですが。全快してもいない状態でジンさんに勝負を挑むなんて侮辱にあたりますわ」
「お、おう。すまん」
「謝罪は私ではなく然るべき人に然るべき態度で、です」
「ああ。ジン、すまない、非礼をした」
「いえ、構いません。ですが、やはりどなたかと手合わせをするべきでしょうか」
「ジンさん。それでは、私と手合わせしてくださいませんか?」
「あれ、フィリア?美乃梨さんの方に行っていたんじゃ…?」
「はい、その通りですよ、フィズ。話は終わりましたので、もう一度顔だけでも出しておこうかと思ったのですが、偶然耳に入ったので、僭越ながら首を突っ込ませて頂きました」
「なあ、流々」
「分かってる。みなまで言うな皇真」
「はあ…」
「まったくだな」
「とりあえず、戻るか」
「だな」
to be continue...




