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契約せし者の双剣  作者: 葵セッカ
新しき選定者
17/21

放出畏怖(中)

「ねえ、乙音。ふと思ったんだけど、皇真も含め、皇真の姉妹って感情のバランスおかしくない?」

「ん?なんで?」

「だって、美乃梨さんは普通に感情があるのに、皇真と真希ちゃんは無感情じゃない。全員が無感情なら、過去に何かトラウマがありそうだと思って触れないけど、美乃梨さんは感情普通にあるじゃん。まあ、皇真には色々トラウマありそうだけど…」

「やっぱ気になっちゃった?気になっちゃったか〜。ふふ〜ん」

「な、何よ。乙音」

「説明したげるよ〜。大丈夫な範囲だけならね。まず最初に!皇真がああなったのは皇真の所為ですっ」

「皇真の所為って…。どういうこと?」

「焦りなさんなお嬢さん。ちゃんと順を追って話すから」

「なにその口調…」

「まあいいじゃありませんかお嬢さん。

ちょっと暗い話になるからね。

今から、十三年前。皇真が五歳の時の話ね。〈ペイン・フォイルニス〉が活動を始めた日。初めて、ある人間が堕天魔と同化したの。堕天魔の名前は〈レイ・カルシューナ〉。災禍の象徴だった天魔だよ。その堕天魔は倭楼で出現したから」

「〈魔法門〉で討伐しないとダメだと…」

「そゆこと。それで、皇真とか、私の親がその討伐に向かったの。まあ、ものがものだけに滅茶苦茶強くてね。梓茅で二人、雛影で三人、奏、椎名、鎌那、篠波で一人ずつ。合計九人が死んじゃった」

「それで、どうなったの?」

「最終的には何とかなったんだけど、その時に篠波夏奈、御奈さんの妹がちょっとやっちゃってね」

「何を?」

「夏奈さんはもうその時は〈ペイン・フォイルニス〉の人間だったの…。それでね、夏奈さんの封印魔法で皇真の体内に封印されちゃったと」

「そんなことがあったんだ…。皇真に堕天魔が…」

「うん」

「どうにかならないの?」

「堕天魔を体から取り除くってこと?」

「うん」

「それは無理だよ。堕天魔を皇真から引き剥がせば、皇真は死んじゃうからね」

「そんな!どうしてなの?」

「皇真の心臓に堕天魔がいるから。今のところ、その堕天魔がどこまでの堕天魔かは分かってないから皇真は生きているけどね」

「それじゃあ、もし、皇真の堕天魔が大きな存在だったら、皇真は死ぬの?」

「うん。そしてそれは、私やリューくんの役目。美乃梨さんや真希ちゃん、アルアルもその役だよ」

「でも、待って。その堕天魔って強かったんじゃないの?」

「うん、そうだよ。でも、皇真だからってみんながどこかで信じてるんだよ。皇真だからちゃんと自分で判断してくれるし、堕天魔に打ち勝ってくれるって。そう思っていないと、みんな壊れちゃいそうなんだ…」

「皇真ってそんなに愛されてたの?今の皇真を見てるとそんな気がしないんだけど」

「昔はもっと無邪気で可愛かったからね。アルアルすら知らない、私たち幼馴染だけの思い出」

「そうなんだ…」

「うん。別に暗くならなくてもいいよ。今、皇真が生きていてくれれば私たちは十分。アルアルには酷だけどね」

「やっぱり、皇真は殺さないとダメなの?」

「うん、多分ね。ちょっと冷たいけど、皇真は殺すべきなんだよ。アルアルは何も知らないし、知らせないけどね。十年もつかな。その時はリーちゃんも手伝ってね」

「うん。手伝うよ…。もちろん」

「じゃあ、暗い話はおーわりっ!」

「うん。そうね」




「そういや、学園長も篠波夏奈も契約者じゃないの?皇真たちって契約者だから、国を追われたんだよね?」

「夏奈さんは封印魔法が得意な魔導師で、堕天魔を自分に封印して、使っているの。御奈さんも夏奈さんに天魔を封印されてるだけだよ」

「封印されてても普通に憑依とか出来るのね」

「うん。そうらしいね」

「そうらしいねって…」

「言ったでしょ?〈魔法門〉は魔法についての干渉をしないって。私たちはお互いを知っちゃダメなの」

「そんなものなのね」

「そんなものだよ」



「それじゃあ、私は美乃梨さんたちの方見てくるから、レナちんと模擬戦でもしてくれば?」

「そういえば、強くなったらしいしね。私も行ってくる」

「じゃあ最後にちょいといらっしゃい」

にたっと笑いフィズを呼ぶ乙音に少し気が進まないながらも、フィズはこれに応じた。

フィズ曰く、乙音のこの笑い方は面倒である事が多いらしい。

「アルアルに会ったら上手く誤魔化しておいてね」

「へっ?それってどういう__」

「んじゃねー」

「え?ちょっと、乙音!?」




「も〜。あの娘の表現はほんっと難しいなあ。誤魔化すってさっきのことだろうけど、ジンがどこまで知ってるか私知らない…しっ!?」

「フィズ…」

「ジン…。どうかした?」

「皇真について、少し聞きたいことが…」

(うわっ!や、やばい。もしかして、さっきのこと聞いてたの?それを知ってて私に誤魔化せと?まだ、まとまってないんだけどっ!?)

「フィズ?大丈夫ですか?」

「はひっ!?大丈夫!大丈夫だよ?それでジン皇真がどうかしたっ?」

「は、はい。その前に一度落ち着いて下さい」



「ふぅ〜。うん、やっと落ち着いた。…それで?皇真がどうしたの?」

「昔の…」

(やっぱり聞かれてた!?どうしよう!?どうやって誤魔化そう!?)

「昔の皇真ってどんな子だったんですかっ!?」

「へっ?」

「さっき、乙音とジンが話してるのを聞いたんです。皇真の昔の話をしていたみたいだったので、皇真の昔の印象が気になったんです」

「え?あ、うん。その話か…」

「その話?他に何か話してたのですか?」

「いやいや!皇真を殺すとかそんな全っ然!」

「皇真を…殺、す?」

「あっ」

「フィズ、乙音は?」

「み、美乃梨さんの、ところにいます」

「そう」



(ごめん、乙音。私、ドジッ娘かもしれない)




「Mark、Connect、Request、KEYか…。面白い考え方だね。私の考えとは行程が二つ少ないね。__私の場合?…私の考えはConnectしてからRequestするのに魔力をInject、KEYと同時にCommitがあるからね。___うん、じゃあ、また報告してね。帰ったらキスしてあげる。__そっか〜。残念。ジンちゃんに言っとくね。__くすっ。二人は相変わらずね」

美乃梨は皇真との連絡を終えると後ろを振り返り、乙音と模擬戦をしているフィリアの方へ振り返る。


「フィリアちゃん、乙音ちゃん、ちょっと休憩しよっか」

「はい!」

「うん。お疲れフィーちゃん。魔法使えるようになったんだね」

「すごいでしょ、乙音ちゃん。ちょっと前まで魔法初心者だったんだよ?フィリアちゃん」

「うん。フィーちゃんは真面目だから、どんどん強くなるね」

「いえ、そんな私なんて乙音さんと比べたらまだまだですから」

「そりゃあ、〈福音の奇術師〉と比べるとみんなまだまだになるからね」

「美乃梨さん!私その呼ばれ方嫌いだって言ってるじゃん!いくら自分が〈美神〉とか呼ばれてるからって!裏では〈邪鬼〉とか言われてるくせに!」

「あら、乙音ちゃん。その名で私を呼ぶということは、私への宣戦布告ということかしら?」


「美乃梨さん。乙音は私がその前に殺します」

「あり?アルアル?どったの?」

「とうとう倭楼の犬になったのね、乙音」

「ん?もしかしなくても、リーちゃんが言っちゃった?」

「ええ。あなたが皇真を殺すと、ね」

「まあ、十年後ぐらいにね」

「いつとかは関係ありません。あなたが皇真に危害を加えるのなら、私はそれを除去します」

「もし、私が皇真に頼まれていたとしても?」

「そんなことはないでしょうけどね」

「じゃあ、私もジンちゃんに殺されないとなくなっちゃうね」

「美乃梨さんも結局は倭楼側の人間でしたか」

「倭楼側の人間ではないけど、皇真側だからね」

「はい?」

「もう、言っちゃっていいかな?乙音ちゃん」

「私はアルアルの記憶を吹っ飛ばしてもいいけどにぃ〜」

美乃梨はジンに皇真のことを話した。皇真の堕天魔は皇真を着実に蝕んでいること。皇真が生きている間に殺さなければ、世界が危機に陥ること。その理由は皇真の天魔を使役する力が堕天魔の力を抑えているからであるということ。





「だから、皇真を殺すと?」

「うん、そういうこと」

「どう?分かってくれたかな?ジンちゃん」


「はい。よく分かりました。ですが…」

最後の言葉に美乃梨と乙音は戸惑いを覚え、フィリアは少し離れたところで何を言うでなく、立っていた。


「皇真は私の夫です。美乃梨さんと乙音が言ったことでは皇真は自分が殺されることを受動的に受け入れたとしか思えません。妻には夫が必要です。ですから私は、私が妻であるためにこの世界をも犠牲にします」


「説得は無理、と。じゃあ、皇真には申し訳ないけど殺すか、半殺しにはしないとだね」

ジンに殺気を向け、歩いて行く美乃梨を乙音が制し、言う。

「美乃梨さんがやったらアルアル絶対死んじゃうよ?__それに、契約者は人を殺すための力じゃないんでしょ?私で十分だよ?」

「そう?じゃあ、フィリアちゃん。外行こっか?」

「え?あ、はい。ですが…」

本当にいいのでしょうか?そう言いたげなフィリアを美乃梨は半ば強引に連れて行った。


「あなたが私を殺す気なら、私もあなたを殺します」

「最初っからそのつもりだったくせに〜」


次の投稿は五月の三十一日になります。

しばし待ってください…!

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