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僕と次のクニ

忘れられている小説です。

できれば、目に留めてあげてください。

更新速度は、作者の気まぐれです。

 整備された道を何の疑いもなしに唯只管に突き進む青年と、それに付き従う一人の精霊。


彼らは、特にこれといった変わりもなく別の国へと着いていた。


”大きな門だね”


「ええそうね。それが人間、ということかしら。今も昔も、ただ大きな物で守ろうとしてるんでしょ」


精霊は侮蔑の視線で門を見、青年はただすごいという感心から門を見上げていた。


「おい、貴様ら!そこで何をしている!」


そんな青年たちに声をかける門番。先ほどから視界にはいたのだが、青年にとってそんなものはただの背景でしかない。精霊にとっては特に何でもない物だ。


”どうしました?何か御用ですか?”


青年は純然たる疑問から門番へと話しかける。元より、この世界の常識については勉強はしたがそんなものは付け刃でしかなく、しかも、青年は元来物覚えが悪い方なのだ。勉強なんて、特にやる意味はない。


「何か御用なのかはこちらが聞いているのだ!そんなところにボサッと立っていられると、俺たちの仕事が出来ないんだ!早くどいてくれ!」


何のことかわからず、青年は言われた通り道を開ける。


「開門~!」


門番の声とともに重そうな大きな門が真ん中に割れ開かれる。それと同時に出てくるのは一つの馬車だった。


”やっぱり馬車が主流なんだね”


青年にとって、乗り物といえば車。馬車なんてものは古い時代の名残を置いてある所しか知らない青年にとって、真新しいものだった。


「そんなのはどうでもいいから、さっさと中へ入りましょう?ここへいても仕方がないわ」


青年の関心を無視し、早く国へ入ろうとせがむ精霊。


”わかってるよ”


青年は近くに立っている門番へと話しかける。


”すいません、入国を希望しているのですが・・・”


おずおずと、そして怯えながらも話しかける。実はこの青年、あの城にいてからというものまともに人間と話をしたことがない。自分と話のはいつでもこの精霊であり、理解者もまたこの精霊しかいなかったからだ。


「ああ、さっきからボーっとしてっから何のようなんだろうな?と思ってたんだ。何だ入国希望か?それで、何か身分を示すものはあるかい?」


先ほどの鬼気迫る表情と言葉遣いとは程遠いような感じの話し方をする門番。当然ながら青年は怯えた。


”っ!”


必死に身を守るように両の手を体を守り、門番の出方を伺う。


「おいおい!俺を強姦魔かなんかと間違えてないか?俺は至ってノーマルだ。男のお前にゃ勃つもんも立ちやしねぇよ」


ゲラゲラと下品な言葉を言いながら、笑いを取ろうとする門番。そんな門番に何もしないということは初めから分かりきっていたし、条件反射に近いとはいえ失礼なことをしたと思い青年は謝罪する。


”すいません。ついこの間も同じようなことを言って僕のことを・・・”


謝罪をしながら門番をからかう。これならば怪しまれないからだ。自分から振れば至極失礼極わりない冗談だが、向こうからなら話は別だ。場を和やかにするのに最適なのだ。


「おいおいっ!止めてくれよ!俺は普通だからな!?なっ!?」


慌てて僕に近寄ろうとする門番。そして、その様子をギロッ!と睨み付けるもう一人の門番。


「…馬鹿やってないで、早くしろ。それで、入国するのかしないのか?早くしてくれ。俺たちだって何もなければ暇ではあるが、かといってお前のような奴の相手をしなければならない道理にはならない」


なるほど、確かにそのとおりだ。彼らだって好き好んでこんな場所に立っているわけでもないだろう。まあ、好き好んでいる人も中にはいるかもしれないが…。


「ねえ、早く入りましょう?こんな暇人どもに付き合う義理はないわ」


”暇人じゃないよ、彼らだって仕事してるじゃないか”


「そうね、こんな楽な仕事なら引く手数多でしょうね」


”楽な仕事とも思えないけど…”


実際に楽ではないのだろうけど、青年にはどれほど大変なものかも分からないし、精霊にとっては青年以外の人間がどうなっていようと関係ない。青年だけいればいいのだ。


”まあ、そうだね早く入ろう。すいません、入国希望です。身分を証明できるものはありません”


すると、門番は目を見開き意外なものを見たといった感じで青年を見ていた。


「本当にないのか…?」


”はい、ありません”


「本当に本当にか?」


”はい、天地天命神に誓ってありません”


「…そうか、分かった。残念だが、これも規定なんでな」


門番は徐に懐から笛を鳴らす。


ピィーー!


小さいながらもはっきりと聞こえる小さな音で笛が鳴る。


すると、詰め所のようなところから4人の兵士が現れる。


「ちょ、ちょっと何なのよこれ!?」


”僕が知るわけないよ!ちょ、ちょっとこれは何ですか!?”


初めに話していた門番は沈鬱そうな顔で告げる。


「…この国は、身分を証明できないものの入国を認めるには、身体検査に魔力検査それに…」


門番はそこで言葉を区切った。


青年には抵抗するすべはあったが、それらは一切しなかった。もとより、この世界の常識を知らないのだ。これがこの世界の常識と誤認識し甘んじてそれを受けることにした。


実際には、そんな常識なんて存在するはずはなく、この検査は一部の貴族は暇つぶしに作ってしまったものではあるのだが。


目的はもちろん、貴族なんてそんなものだろうという理由でしかない。弱者をいたぶるためのものだ。


そんな理由あることなど、青年は知る由もなかった。




別小説の、『The Free World is Created』も更新しています。

よめれば、お読みください。

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