猫と戦車とビニール傘
ビニール傘が好きだ。だから雨も好き。傘させるからね。
その日も雨が降っていた。私は傘がさせるので外に出てぶらぶらと歩いた。
戦車が落っこちていた。
こんな街中の道路のど真ん中に何故?
考えてもしょうがない。
考えるのは好きじゃない。
なんとか拾って帰れないかと試行錯誤した。
どうすればいいの?そもそも戦車ってどう動かすの?
ポチッとボタン押したら動くの?
自動車みたいに鍵さして回せばエンジンかかるの?
鍵どこにあるの?
一体どうやったら動くんだろう?
それにしてもごつい戦車だ。
雨も上がってきたので傘をたたみ、戦車によじ登る。いい眺めだ。背伸びをして遠くを眺める。
雨もすっかり上がっている。
戦車のへりに腰かけのんびりする。
足をぶらぶらさせながら鼻歌を歌っていたら猫がやってきた。
ニャー ニャー。
どうしたの?何か言いたいことあるの?
しかし猫は不意にそっぽ向くと離れて行ってしまった。
猫の後を追っていった。猫の後についていく。
猫もちゃんとついてきてるか確認するように、時折後ろを振り返る。
猫を追いかけてずいぶん遠くまで来てしまった。
その時傘を持っていないことに気がついた。
しまった!戦車の上に置きっぱなしで来てしまった。
最悪だ。お気に入りだったのに…。
猫は私を見つめると急にそっぽ向いて
素早く走ってどこかに行ってしまった。
傘がない。猫もどっかいってしまった。
おまけに戦車のあった場所もどこかわからなくなってしまった。
特に戦車がどこにあったのか
わからなくなってしまったことが1番きつい。
なぜ猫なんか追いかけてきてしまったのか?
猫と戦車どちらが好きかと言われれば
ギリギリ、猫<戦車くらいなのに…
おまけにビニール傘までない。
そもそもここはどこ?
あたりをうろついていると警察がやってきた。
警察は別に私を助けるために来たわけではない。
殺人事件がありその捜査のために来たのだ。
私も一応事件について聞かれたが心当たりは何もなかった。
保護してくれて家まで送ってくれた。
ペコリと頭を下げて礼を言って別れた。
お気に入りのビニール傘をなくしてしまったことを伝えた。
だがとても真剣に探してもらえるとは思えない。
そのため「母のかたみなんです」と言った。
なんであんな嘘をついてしまったのか。
嘘をつく必要のないところで嘘をついた。
そのせいで疑われるかもしれない。
こいつは殺人事件となにか関係してるんじゃないか?と。
不安で夜も眠れないと思ったらぐっすり寝れた。
今日は雨は降りそうもない。
太陽の光が心地よい。
また戦車を求めふらふらと歩く。
どこにあるんだろう?
どこにもない。
そもそも戦車は本当にあったのか?
私の妄想じゃないだろうな。
まさかねぇ。
なんだか不安になってきた。
この景色は…?
ここを抜けると…
あった。
昨日と変わらずそこに戦車はあった。
よかった、戦車は本当にあったんだ。
ビニール傘も変わらずそこにあった。
ひょいと背伸びをしてビニール傘を手に取る。
しかしこの戦車なんとか持って帰れないものか?
ビニール傘を手首にかけて戦車の脇に両手をつける。「えいっ!」渾身の力を込めて押す。
ダメだびくともしない。
あきらめよう。家に持って帰るのは無理そうだ。
しばらくすると片目が潰れた野良猫がふらふらとやってきた。
よく見たら昨日の猫だ。
ひどい。誰にやられたのか?
猫の目を潰した人間と殺人事件の犯人は同じだろうと私は思った。
猫の目を潰すなんてなんでそんなことができるのか?
許せない。
私は猫を持ち上げ抱きしめた。
猫は抵抗せずにおとなしくしている。
優しく頭を撫でてあげた。
家に帰り思う。
一体何を手に入れ、何をなくしたのか?
まず戦車を見つけ、ビニール傘をなくし、猫を追いかけ、猫を見失い、戦車も見失った。
後日、戦車を見つけ、傘も見つけ、猫を手に入れた。
結局何も失わず(戦車は手に入らなかったが)、
むしろ猫を手にした分、プラスといえる。(猫は片目を失ったが)
足元に猫がやってきた。頭を撫でてやる。
猫は心地良さそうだ。
ちょこんと私の膝の上に乗っかってくる。
あごを撫でてやる。
猫は気持ち良さそうに喉を鳴らす。
猫<戦車なんて言って悪かったよ。
猫は可愛い。




