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猫と戦車とビニール傘

作者: ゆうすけ
掲載日:2026/01/23

ビニール傘が好きだ。だから雨も好き。傘させるからね。


その日も雨が降っていた。私は傘がさせるので外に出てぶらぶらと歩いた。


戦車が落っこちていた。

こんな街中の道路のど真ん中に何故?


考えてもしょうがない。

考えるのは好きじゃない。


なんとか拾って帰れないかと試行錯誤した。

どうすればいいの?そもそも戦車ってどう動かすの?

ポチッとボタン押したら動くの?

自動車みたいに鍵さして回せばエンジンかかるの?

鍵どこにあるの?


一体どうやったら動くんだろう?

それにしてもごつい戦車だ。

雨も上がってきたので傘をたたみ、戦車によじ登る。いい眺めだ。背伸びをして遠くを眺める。


雨もすっかり上がっている。

戦車のへりに腰かけのんびりする。

足をぶらぶらさせながら鼻歌を歌っていたら猫がやってきた。


ニャー ニャー。


どうしたの?何か言いたいことあるの?

しかし猫は不意にそっぽ向くと離れて行ってしまった。

猫の後を追っていった。猫の後についていく。

猫もちゃんとついてきてるか確認するように、時折後ろを振り返る。


猫を追いかけてずいぶん遠くまで来てしまった。

その時傘を持っていないことに気がついた。

しまった!戦車の上に置きっぱなしで来てしまった。

最悪だ。お気に入りだったのに…。


猫は私を見つめると急にそっぽ向いて

素早く走ってどこかに行ってしまった。


傘がない。猫もどっかいってしまった。

おまけに戦車のあった場所もどこかわからなくなってしまった。


特に戦車がどこにあったのか

わからなくなってしまったことが1番きつい。


なぜ猫なんか追いかけてきてしまったのか?

猫と戦車どちらが好きかと言われれば

ギリギリ、猫<戦車くらいなのに…


おまけにビニール傘までない。

そもそもここはどこ?

あたりをうろついていると警察がやってきた。


警察は別に私を助けるために来たわけではない。

殺人事件がありその捜査のために来たのだ。

私も一応事件について聞かれたが心当たりは何もなかった。


保護してくれて家まで送ってくれた。

ペコリと頭を下げて礼を言って別れた。


お気に入りのビニール傘をなくしてしまったことを伝えた。

だがとても真剣に探してもらえるとは思えない。

そのため「母のかたみなんです」と言った。


なんであんな嘘をついてしまったのか。


嘘をつく必要のないところで嘘をついた。

そのせいで疑われるかもしれない。

こいつは殺人事件となにか関係してるんじゃないか?と。


不安で夜も眠れないと思ったらぐっすり寝れた。


今日は雨は降りそうもない。

太陽の光が心地よい。

また戦車を求めふらふらと歩く。

どこにあるんだろう?

どこにもない。


そもそも戦車は本当にあったのか?

私の妄想じゃないだろうな。

まさかねぇ。

なんだか不安になってきた。


この景色は…?

ここを抜けると…


あった。

昨日と変わらずそこに戦車はあった。

よかった、戦車は本当にあったんだ。

ビニール傘も変わらずそこにあった。

ひょいと背伸びをしてビニール傘を手に取る。


しかしこの戦車なんとか持って帰れないものか?

ビニール傘を手首にかけて戦車の脇に両手をつける。「えいっ!」渾身の力を込めて押す。

ダメだびくともしない。

あきらめよう。家に持って帰るのは無理そうだ。


しばらくすると片目が潰れた野良猫がふらふらとやってきた。

よく見たら昨日の猫だ。

ひどい。誰にやられたのか?


猫の目を潰した人間と殺人事件の犯人は同じだろうと私は思った。


猫の目を潰すなんてなんでそんなことができるのか?

許せない。


私は猫を持ち上げ抱きしめた。

猫は抵抗せずにおとなしくしている。

優しく頭を撫でてあげた。


家に帰り思う。

一体何を手に入れ、何をなくしたのか?


まず戦車を見つけ、ビニール傘をなくし、猫を追いかけ、猫を見失い、戦車も見失った。


後日、戦車を見つけ、傘も見つけ、猫を手に入れた。


結局何も失わず(戦車は手に入らなかったが)、

むしろ猫を手にした分、プラスといえる。(猫は片目を失ったが)


足元に猫がやってきた。頭を撫でてやる。

猫は心地良さそうだ。

ちょこんと私の膝の上に乗っかってくる。

あごを撫でてやる。

猫は気持ち良さそうに喉を鳴らす。


猫<戦車なんて言って悪かったよ。

猫は可愛い。

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