第1.8話:地震か、運命か?
六人の“ありえない”者たちが古代の遺跡へと引き込まれた時、彼らは世界を生んだ力――ネクサスの砕けた欠片と秘められた絆を知る。
運命に縛られた彼らは、失われた欠片を求めて諸界を旅し、迫り来る影の秩序と「創造」と「破壊」の狭間に挑むこととなる。
夜空はまだ神秘に満ちていた。惑星が見えない糸に吊るされた宝石のように輝いていた。
だが、その美しさの裏で、何かが蠢いていた。
ルメイラの笑顔が消える。胸を押し潰すような重苦しさが広がり、感覚が鋭くざわめく。
彼女は周囲を見回した、その瞬間――ポケットの中で携帯が震えた。
素早く取り出し、耳に当てる。
「はい、ママ?」
受話口から、母の張り詰めた声が響いた。
「ルメイラ……感じるの。何かが……」
「私もよ。」ルメイラは電話を握りしめ、声を潜めた。
「何かの力が――」
ブツッ。
通話はノイズにかき消され、途切れた。
「ママ?……ママ?」
応答はない。
ルメイラはゆっくりと携帯を下げ、眉を寄せる。
「問題か?」ソレスが身を乗り出して尋ねる。
「……ただ、電波がないだけ。」彼女は答えたが、声はかすかに震えていた。
だが、その言葉とは裏腹に、彼女の右耳の下に刻まれた紋章が淡く光り始める。脈打つように。
ソレスの笑顔が崩れる。
「ルメイラ……大丈夫か?」
彼女は光る紋章に触れ、瞳を鋭くした。
「……何かが来る。」
大地が震えた。
ソレスはよろめきながら踏ん張る。
「じ、地震か?!」
***
別の場所。芝生の上で星を見上げていたセウルとゼディが跳ね起きる。
「じ、地震だ!」セウルは身体を支えながら叫んだ。
「タイミング悪すぎだろ……!」ゼディは歯を食いしばり、周囲を見回す。
近くでは、セレネがカメラを抱え込み、倒れかけていた。
「ち、地面が怒ってる!カシャ、カシャ……あぁっ、今は撮ってる場合じゃない!」
「カメラ置けっての、セレネ!」カルミーンが彼女を引き寄せ、身を挺して庇った。
教師たちがマイク越しに叫ぶ。
「学生は落ち着いて!遺跡から離れ、広場へ移動しなさい――急いで、でも秩序を保って!」
しかし、その声より早く、大地から閃光が弾けた。
稲妻ではない。別の何か――霊的な光。心臓の鼓動のように脈打ちながら。
セウルは動きを止めた。体が見えない糸に縛られたように硬直する。
「な、なんだ……!?体が……動かない!」
ゼディが彼に飛びつこうとしたが、自分の手足も固まった。
「おい!俺も……動けねえ!」
カルミーンは必死に前へ進もうとし、足を震わせる。
「くそっ……!セレネ、後ろに下がれ!」
「や、やっぱり幽霊のせい!?」セレネが怯えた声をあげる。
「誰が取らせるか!絶対にお前だけは守る!」カルミーンは光に飲まれながらも、彼女を庇おうとした。
そのとき、ルメイラの紋章がさらに眩しく輝き、地面から溢れる光と共鳴した。
「ルメイラ!」ソレスは彼女に手を伸ばすが、腕ごと固まる。
「ちくしょう……体が……!」
六人の体が、眩い光に包まれ、宙に吊るされる。
そして、大地が裂け落ちた。
彼らは一斉に、遺跡の闇へと呑み込まれていった――。




