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第3.6話:墜落

遺跡のさらに奥深く――


ジェン、シュー、リースの三人は、巨大な空間へと足を踏み入れた。


その部屋は――広大で、円形で、まるで“生きている”ようだった。

赤い脈が石壁を走り、まるで古代の巨獣が鼓動しているかのように壁全体が脈打っている。

中央には巨大な水晶の欠片が浮かんでいた。透き通る白の結晶、その内部には螺旋状に絡みつく紅い光の筋。

ひとつひとつの鼓動が空気を震わせ、低く深い振動が骨の奥まで響く。


ジェンはゆっくりと前へ進み、息を呑んだように呟く。

「……これね。」

その瞳には、畏怖と興奮が入り混じった光が宿っていた。

「“ネクサス・シャード”――」


リースが眼鏡を押し上げ、口元をにやりと歪める。

「やったな。あの罠も、モンスターも、あと君の最悪なリーダーシップも乗り越えて――」


ジェンの視線がピクリと動いた。

「……今、なんて?」


リースは慌てて両手を挙げ、引きつった笑みを浮かべる。

「い、いや、君の“完璧な”リーダーシップだって言ったんだよ! 本当に!」


シューは震える手で装置を構え、結晶を見つめる。

「……すごい。エネルギー反応が尋常じゃない。まるで、生きてるみたいだ!」


ジェンは再び自信に満ちた笑みを浮かべた。

「なら、奪うまでね。ここまで来て、誰にも邪魔させない。陸だろうが空だろうが、何があっても――」


ガァァァァァンッ!!


言葉を遮るように、頭上の天井が爆発した。


破片と光が雨のように降り注ぎ、何か――いや、“何人か”が叫びながら落ちてきた。


――そして、勢いよくトリオの真上に直撃した。


「ぎゃああああああっ!!」


最初に地面に叩きつけられたのはジェンだった。

その背中の上に、セウルが派手に落下する。


「いったぁ! どけ、この即席スカイダイバー!!」ジェンが怒鳴る。


「予定外の自由落下なんだってば!」セウルがむせながら転がる。


隣では、リースが床に押しつぶされていた。上にはゼディが鎮座し、彼のバッグがめり込んでいる。

「ぐっ……お前……俺の機材がぁっ!」


ゼディはきょとんとした顔で首をかしげる。

「きざい? なにそれ?」


「俺のガジェットだよ!! どけ、この重量系ヒーロー!!」


少し離れた場所に、カーミーンが顔面から着地していた。

「もぉぉぉぉ! この遺跡作ったやつ、10回ぶん殴らせなさいよ!!」


ゼディが辺りを見回し、仲間の姿を確認する。

「カーミーン! セリーン!」


カーミーンはため息をつき、こめかみを押さえた。

「やれやれ……全員そろったみたいね。今日唯一の良いニュースかも。」


セリーンは、奇跡的にカメラを握ったまま、髪の埃を払った。

「……私たち、今、天井から落ちてきた?」


ゼディがむせながら笑う。

「そうかもな。もしくは、宇宙が俺たちを“ドラマチック登場”させたんだろ。」


6人はよろめきながらも立ち上がる。


セリーンはカメラを構え、笑顔で言った。

「はい、スマイル。再会記念~♪」カシャッ。


ジェンは砂を払い、険しい目つきで睨みつける。

「……あんたたち、一体何者よ!?」


ゼディはにかっと笑い、肩を払った。

「えーっと……観光客?」


リースが床に倒れたままうめく。

「観光客が天井から落ちてくるかぁぁ!?」


カーミーンが腕を組み、ぼそっと言う。

「まぁ、落ちてきたのは“どこか”の方が先だったけどね。」


セリーンはまたもシャッターを切る。

「タイトルは――『偶然のヒーロー、落下式登場の図』っと。」


リースが目を細めて呆れた。

「写真撮ってるの!? ここ、超不安定なエネルギーに満ちてるんだぞ!? お前――」


「――パニック顔、可愛いかったから♡」セリーンがさらっと返す。


リースは顔を真っ赤にして口ごもる。

「なっ……そ、そんな……! ちがっ、違うし!」


その時、ネクサス・シャードが再び光を放った。

今度は穏やかではない。

白い光が赤く染まり、空気そのものが悲鳴を上げる。

稲妻のようなエネルギーが壁を這い、部屋中を暴れ回った。


セウルが目を瞬かせ、まだ半分放心状態のまま言う。

「なぁ……これって普通なのか?」


ゼディが無表情で返す。

「うん、めっちゃ普通。」


地鳴りのような轟音が響き、床が激しく震え始めた。


カーミーンは両手を天に向けて叫ぶ。

「もうイヤーーーーーッ! この場所、大っ嫌い!!!」

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