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第3.5話:ロケットペンダント

遺跡のどこか別の場所――


カーミーンは目を細め、周囲を見渡した。声が広い空間に反響する。

「はぁ……今度は何なのよここ? ついさっきまで洞窟にいたはずなのに――」

彼女は淡く赤い光を放つ研磨された石壁を指さした。

「――気づいたら、なんか“魔法の部屋”みたいな場所にいるし。最高ね、ほんと。」


その隣で、まばゆい閃光が走った。


「わぁぁ、この場所サイコー!」

セリーンの歓喜の声と、立て続けのシャッター音。――カシャッ、カシャッ。


カーミーンは顔の前で手を振り、眉をひそめた。

「ちょっと! またカメラのフラッシュで目潰しする気!?」


だがセリーンはまるで聞いていなかった。

その淡い瞳は、すでに何かを見つめている。

「……キラキラしてる……」

指をさす。

「ほら、あそこ! ロケットが――浮いてる!」


カーミーンは額を押さえてため息をついた。

「また始まった、“呪われたアクセサリー”シリーズね。」


「違うってば、本当に見て!」

セリーンの声には、わずかな震えと興奮が混ざっていた。


カーミーンが渋々視線を向けた瞬間――息を呑んだ。

石の台座の上、銀色のロケットが宙に浮かび、ゆっくりと回転していた。

その表面には赤い光が脈動し、鎖はまるで時が止まったかのように静止している。


「……はぁ。」

カーミーンは低くつぶやいた。

「今度はどんなトラブルよ……?」


セリーンは恐れも見せずに近づき、カメラを構えた。

「まるでファンタジー小説の中みたい……」と、うっとりとした声でつぶやく。


「ホラー小説の間違いでしょ。」カーミーンがぼやく。

「で、呪いの物に触って死ぬ“おバカ担当”があなたってわけね。」


セリーンは完全に無視して、台座の周りを回りながらシャッターを切る。

「このライティング、完璧! もう一枚――カシャッ!」


カーミーンは深く息を吐き、出口を探すように壁を見回した。

「いい? まず脱出方法を見つけるの。ルールその一――」

彼女は振り返り、声を強めた。

「――意味もわからない物には絶対に触らな――」


その言葉は途中で止まった。


セリーンはすでに、ニヤリと笑いながらロケットを指先でつまんでいた。

「へへっ……遅かった?」


カーミーンの口が開いたまま固まる。

「あなたねぇっ! もし私たち死んだら、絶対あんたの幽霊になって呪ってやるから!」


セリーンが苦笑するより早く、壁のルーンが真紅に輝き始めた。

空気が震え、低い唸りが空間全体に広がる。

天井から一本の紅い光が降り注ぎ、台座を直撃した。


地面が揺れる。

「また!?」カーミーンが叫ぶ。床にひびが走る。


セリーンはロケットを握りしめた。

「カーミーン!」


遺跡全体が軋みを上げ、轟音と共に再び激しく揺れ始める。


「もうイヤーーーーッ!」

カーミーンの叫びとともに、床が砕け落ちた。


二人の体が、紅の光の渦の中へと吸い込まれていく。


落下する中、セリーンは必死にロケットを手放さなかった。

視界がぼやけ、次の瞬間――はっきりと映る。


嵐に裂かれた空の下、ひとりの男の影が立っていた。

頭からは小さな角が伸び、両手には鋭い鉤爪が光を反射している。

彼の瞳が赤く光り、虚空の向こうからこちらを見つめていた。


そしてその像は霧のように消え――

二人の少女もまた、光の中に溶けていった。

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