第3.3話: 別行動
「下がれっ!」
カルミーンが叫び、セレネの腕を掴んで強く引いた。
次の瞬間、巨大な石の板が彼女たちの目の前に落下し、轟音とともに光る紋章の光を反射させながら、粉塵と破片が空気を切り裂いた。
「ゼッド、危ない!」
セウルの声が混乱の中を突き抜けた。
考えるより早く、セウルは身を投げ出した。
ゼディを力いっぱい突き飛ばす。直後、天井の大きな岩塊が彼らのいた場所を叩きつけ、地面を揺らした。
二人は床に転がり込んだ。
セウルはむせながら手で埃を払い、なんとか身を起こす。
「大丈夫か?」
ゼディは肩についた砂を払い、荒い息をつきながら答えた。
「……ああ、助かった。お前が押してくれなきゃ、今ごろ俺はトーストみたいに潰れてたな。」
セウルは息を整えながら短く返す。
「気にすんな。」
視線は崩れ落ちた石壁へと向かう。そこが、彼らと仲間を分断していた。
その向こうから、セレネのくぐもった声が響く。
「そっちは無事?」
ゼディが声を張る。
「大丈夫だ! でもちょっと……閉じ込められたかも!」
セウルは手で髪をかき上げ、ため息をついた。
「最悪だ……これで分断か。」
石の向こうからカルミーンの落ち着いた声が届く。
「いい? ここを掘り返す時間はないわ。私とセレネは目の前の通路を進む。あなたたちも自分の道を進んで。必ずどこかで合流できるはず。」
ゼディは眉をしかめた。
「ほんとにそれでいいのか?」
「いいの。」
カルミーンの声は揺るぎなかった。
「気をつけて。何が潜んでるか分からないから。」
ゼディは苦笑して壁の向こうに向かって軽く敬礼した。
「わかった、わかった。そっちも幽霊とか呪いとかに食われんなよ?」
かすかに笑う声が返ってきた。
セレネの、少し楽しげな笑いだった。
「約束はできないけどね。」
音が遠ざかり、代わりに遺跡全体が低く唸るような音を立て始めた。
セウルは背負ったバッグを整え、暗い通路の先を見つめる。
「……さて。」
その声は小さいが、確かな強さを持っていた。
「俺たち二人だけだな。」
ゼディは拳を鳴らし、にやりと笑った。
「だったら、しっかりやるしかないな。」
二人はゆっくりと暗闇の中へ歩み出した。
壁に刻まれた古代の紋章が、かすかに輝きながら彼らの足元を照らしていた――。




