第3.1話:遺跡!
「セウル! セウル!」
ゼディが必死に彼の肩を揺さぶる。セウルのまぶたがゆっくりと開き、呻き声が漏れた。頭の奥で、まだ地面が揺れているような鈍い痛みが響いていた。
「よかった……」ゼディは安堵の息を吐き、声がかすれたままセウルを起こした。
近くではカルミーンとセレネが立っていた。二人ともほこりまみれで疲れた様子だが、まだ警戒を解いていない。セレネの首から下がるカメラのレンズにはひびが入っていたが、どうにか壊れずに残っていた。
「生きてるか?」とゼディがもう一度尋ねる。
空気は湿った石と苔の匂いが混ざり合って重く、広大な空間が彼らの周囲に広がっていた。折れた柱、崩れた壁――そこには奇妙な文様が刻まれ、ほのかに光を放っている。高い天井の割れ目から、わずかな光が床に届いていた。
セウルはまだぼんやりとしながらつぶやく。
「……ここはどこだ?」
セレネは首をかしげ、落ち着いた調子で壁を観察する。
「たぶん……深部遺跡ね。」その声は、この状況に似つかわしくないほど穏やかだった。
「遺跡?」ゼディが眉をひそめる。
セレネは柱のそばにしゃがみ、光る線を指先でなぞった。
「ええ。見て、この刻印と模様。古代――エルダー期以前のものかもしれないわ。間違いなく遺跡よ。」
そう言って、どこか嬉しそうに微笑んだ。
ゼディが口笛を吹く。「お前、こういうの嬉しすぎだろ。」
カルミーンは腕を組み、彼女を睨む。
「当然よ。こういう不気味な遺跡とか呪いとか、あんたの得意分野でしょ。」
セレネは小さく満足げに微笑む。
「知識は落ち着くのよ。それに……」
彼女は天井の亀裂から差し込む細い光を見上げた。
「……地震で地面が崩れて、私たちは落ちたのね。」
カルミーンはため息をつき、腰に手を当てた。
「とにかく出口を探すわよ。ここに長居する気はないから。」
ゼディはからかうように笑い、彼女の肩を軽く小突いた。
「怖いのか? 大丈夫、俺がいるじゃん。」
カルミーンは笑わなかった。
代わりに拳を軽く振り下ろし、ゼディの頭をコツンと叩いた。
「黙って歩きなさい。じゃないと墓に埋めるわよ。」
ゼディは頭をさすりながらしかめっ面をする。
「痛て……ひどいな。」
セレネはゼディに近づき、囁くように言った。
「墓は秘密を守る場所よ。そして秘密は――永遠に閉じ込められるの。」
そう言って、まるで楽しい冗談でも言ったかのように微笑んだ。
カルミーンとセレネが先に進み、懐中電灯の細い光がほこりを切り裂く。
セウルはその後ろ姿を見送りながら、ゼディに無表情で言った。
「今ので今月、三発目だね。」
ゼディは肩をすくめた。
「どっちの味方なんだよ、裁判官セウル?」
カルミーンの声がトンネルの奥から響く。
「あなたたち、来るの? それともそこでおしゃべりでもしてるの?」
四人はゆっくりと歩き続けた。カルミーンとセレネが前を行き、ゼディとセウルが少し後ろをついていく。足音が石の床に反響し、静かなリズムを刻む。
ゼディがちらりとセウルを見る。
「本当に大丈夫か?」
セウルは小さくうなずいた。
「ああ……平気だよ。」
それ以上言葉を続けず、ただ前を見つめたままだった。
ゼディは軽く笑う。
「心配すんな。ちゃんと出口は見つけるさ。しかも俺がいるんだ、何も問題ない。」
そのとき、カルミーンとセレネが急に立ち止まった。
ゼディが眉をひそめる。
「今度は何だ? ミイラでもいたのか?」
カルミーンがため息をつく。
「それより悪いわ。」
彼らの前には三つの暗い道が広がっていた。
カルミーンは腕を組み、苛立ちを隠せない声で言った。
「三つの道……さて、どっちへ行く? 誰か勘がある人、いる?」




