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第9話 飯抜きってなんですか?

「お前は不合格だ!」


フゴウカク?おれが?

俺はなにをしてたんだっけ?確か強くなるためにゴリアさんが教育してくれるって話だったけど、なぜか質問されて、不合格?質問だけで教育もとい訓練に付いていけるかどうかが分かったのだろうか?

そうだとしても納得できない。


「なんで不合格なんですか?」


わからない。さっきまでそこまでやる気はなかったけど、なんだかこうしてお前はダメだという風にいわれると、やりたくなってきた。


「どうして強くなりたいのかを俺が聞いただろう。そのときお前は『自分のためです。』と答えたな。そして魔王を倒すと。」


「え、ええ」


たしかにそう言った、。それがいけなかったのだろうか?でも今の俺にそれ以外に強くなる理由はない。元の世界にもどるためには魔王を倒さなくてはいけなくて、魔王を倒すためには強くないといけないわけで……。


「このことについては、正直言って驚いた。今の世の中に魔王を倒すとかいう男がまだいたとは。いや、別に悪い意味ではない。むしろ目標を持つというのは良いことだ。だが、お前のいう強さはあまりにも弱い。確かに力が強いことや勝負に勝つものも強いと言えないわけではないが、そういう肉体的なものではなく、どんな困難にも立ち向かうこと、あきらめずに戦い続ける心の強さを持っているものこそ、本当の強き者であるといえる。」


正直、綺麗事だと思った。たとえ、どんなことにも立ち向かい、あきらめない体の弱い男が、ムキムキマッチョに勝てる訳がないように、肉体的な強さが一番必要だ。それを土台とし、自信として、立ち向かう勇気をもち、あきらめない心が付いてくるというものではないのだろうか?


「一歩踏み出すというのは、確かに不安もあるだろうし、勇気もいる。だが困難に立ち向かわないと、まず強くはなれない。どんなに大変であろうとそれが自分にとって大切なことならば、挑戦するべきだ。挑戦してみなくてはなにも得ることはできないのだ。そしてあきらめないということ。どんなに素晴らしいことをしていたとしても、途中で投げ出してしまったら、なんの価値もない。全てが台無しとなってしまう。時間も、それままでの努力も。」


……。確かにそれはあるかもしれない。最初から強い人間などいない。努力して努力を重ね、やっと人間は強くなれる。だが、それは並大抵の、気持ちでは、踏み込めないばしょにある。そして、もうやめたいと思うこともあるだろう。だがそこで諦めずに進むから先に行ける。そうして、挑戦することを覚え、諦めずにつづける精神を定着させることで、自然とつよさというのは付いてくるということだろう。俺が考えていた事とは全くの正反対の考え方だ。凡人の俺には、やっぱりゴリアさんの言ってることの方が正しいと思えてくる。こういう気持ちを持っていたからこそ、今のゴリアさんがあるのだろう。正直言って眩しかった。いつも俺は挑戦することからさけ,最後には諦めるという生き方をしていた。そんな生き方も悪くはないだろう。でも、今ゴリアさんの考えを聞いて、俺はそういう風に生きてみたいと思った。正直かっこよかった。挑戦する、あきらめない、口で言うのは簡単だが、行動として示すことができる人間は少ないだろう。

心の強さ、まずは挑戦してみることからはじめよう。


「ゴリアさん……。」


「なんだ?」


もう言いたいことはいったという顔つきをしている。


「俺、分かった気がします。ゴリアさんが言いたかったこと。」


「……そうか。……ふむそのようだな。さっきとは目付きが変わった。」


ゴリアさんが俺の目を見つめそう言った。少しだけ認められた気がした。でも気がしただけじゃダメだ。完全に認めてもらう。


「で、お前はどうしたいんだ?」


ゴリアさんの質問に俺は、間髪いれずにこう答えた。


「強くなりたいんです!!お願いしますゴリアさん!!!!」


俺は頭をさげ、そう叫んだ。いままで意識的に出した声のなかでは一番とも言える声の大きさだったと思う。

もしこれでダメだとしても、俺はあきらめない。もう諦めたりはしたくない。中途半端にのほほんといきるのではなく、男らしく胸をはって生きられるように。


「……お前は不合格だといったはずだが…」


ダメか……。一瞬そんな思いが頭を駆け巡った。でも、それでも俺は強くなりたい。そのためならなんだってできると今ならそう言える。


「お願いします!俺死ぬ気で頑張りますから!だから、俺を指導してください!!」


もう一度強く言う。こんなに暑くなったのは初めてかもしれない。


「ふむ……。わかった。」


……。なんだって?わかった?フラグがたったのか?合格の。


「とりあえず不合格というのは取り消してやる。」


「え?」


「これからしばらくの間、俺と行動を共にしてもらう。その中で、お前に本当に強い気持ちがあるかを確かめてやる。」


何だこの展開?ゴリアさんと行動を共にするなんて大変だなぁ。どこのだれがそんな事をするんだ?え?俺?えェーーーーーーーーー。


「えェーーーーーーーー!!!!!」


ちょ!誰得?誰得よ、この展開。


「わかったか?」


「あ、はい。」


怖いんだけど。ゴリアさんの眼、ちょー怖いんだけど。


「ふむ。行動を共にするだけではだめだな。……よし。俺がちょっとした訓練をしてやる。」


むしろ訓練だけでいいです。行動を共にするはいらないです。


「少しまっていろ。」


そういって、ゴリアさんは奥の方へ消えていった。




30分後


俺の目の前には、物干し竿のようなものから、糸が垂れてきて、糸の先にうっすい短冊のようなものがついた、ゴリア訓練第1段で使うであろう、アイテムが作られていた。


「なんですか?これ?」


するとゴリアさんは一本の剣をさし出して


「この紙をこの剣で切ってみろ。」


といった。へ?こんなのでいいの?


「え?そんなんでいいんですか?楽勝ですよ。」


ゴリアさんから剣を受け取る、そして例のアイテムの前にいき剣をふる。


『ぺら』


結果からいうと紙は切れなかった。紙は剣が巻き起こす風により、剣をよけるようにめくられてしまう。もう一度やってみる。


『ぺら』


ダメだった。すると黙って見ていたゴリアさんが


「そんな振りじゃ駄目だ。ただひたすら早く剣を振ることだ。その程度の速さで切れるものなんて戦場にはないぞ」


そうはいわれても、俺的に最高速で振ったのにこの紙を切ることはできなかった。少しゴリアさんにお手本を見せてもらおう。


「すいません。一度やってみてくれませんか?」


おそるおそる言ってみる。


「仕方ないな。一度だけだぞ。」


そういって、俺から剣を受け取ると、さっき俺が立っていた場所に移動し一振り。


「!」


動きが早すぎて、ほとんど見えなかった。前に戦ったときより全然。だけど、紙は微動だにしていない。


「あれ?紙は切れてないですよ。」


確かに、早かったけど、切れてないんじゃ仕方がない。ちょっと笑いそうになったが、俺は驚愕の瞬間を眼にする。


「なにをいっている」


「!」


時間差で紙に線が入ったと思ったら、次の瞬間には、紙が裂け始め、地面に落ちていった。


「まぁ、最低でもこのぐらいの速度は出してもらいたいな。」


ゴリアさんのドヤ顔。ホント、どやぁって声が聞こえそうだ。でもそんなことが気にならないほど俺はびっくりしていた。これは俺の中でのゴリアさんをもっと格上と設定しないと。


「なにをボーとしている。早くやれ。」


いつのまにか、ゴリアさんから受け取っていた剣を強く握る。さっきのゴリアさんをイメージする。ゴリアさんを自分に置き換え、よし!いける。


「うおおおお!!!」


『ぺら』


……くっそーーーーー。あたんねぇー。


「はぁ、それが切れるまで飯は抜きだからな。」


「え?」


「じゃあな。できたら呼んでくれ。」


「え?」


そのままゴリアさんは、またしても奥の方に消えていった。え?飯抜き?

なんかここの人ってなにかと飯抜きにしようとするよね。なんなの?

だけど文句言っても勝てる訳がない。今は言うことを聞いておくしかない。そして強くなったら……。


「くひひ」


俺は、邪悪な野望を手に入れ、やる気を燃やしていた。俺ならできる。そう信じて、今はやるしかない。


「やってやるぜぇえ!!」





3時間後には泣きながら、飯をねだる俺がいた。




久しぶりの投稿です。楽しみにしてた人なんていないとは思いますが、すみませんでした。でもまた次の投稿は遅れるかもです。

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