第7話 謎の男
ドアが開き、目の前に現れた謎の男は見た感じ、屈強そうで、鎧を身にまとっていた。年は恐らく30前後だろう。鼻の下にりりしく髭が生えそろっている。
「お前がサクラか?」
男は俺の名前を呼ぶと俺の返事を待たずに、腰の鞘から剣を抜いた。真剣です。
「あ、あ、あんたはだれなんだよ!?」
恐怖で声が裏返ってしまったが、ちゃんと通じたようで、返事は帰ってきた。
「お前に名乗る必要はない。」
いいながら男は剣を構えた。俺はと言うと恐怖で脚がすくんで動けないでいる。ユリスさんの時は動くことが出来たのに、なぜか脚は俺の言うことを聞いてはくれなかった。握っている、この剣も、動けないんじゃ宝の持ち腐れと言うやつだ。
「早く構えろ。」
どうやら、この男は俺が構えるのを待っていたようだ。こんな夜遅くに押し掛けてきておいて、いまさら作法とか気にされても困るんですけど。とか思いつつも俺も剣を構えた。剣に相変わらず重さは感じない。
「ふん、やっと構えたか。では…。」
一拍置いてから、男は俺に飛びかかってきた。俺と男の距離およそ5m。しかしその間合いは一瞬で詰められた。
「はやい!?」
やばいと思っても足がすくんで動けない。人生で3度目の死を覚悟した俺だが、俺の体が真っ二つになることはなかった。
「なぜ動かない?」
「え?」
俺が回避しようとしないことに違和感を感じたのか、男は剣を止めていた。
「なぜ動かない?」
二度聞いてきた。だが、俺は答えることができない。こんなときに何と言えばいいのか?足がすくんで動けませんでしたなんて言ったら、速攻で殺されしまうだろう。
「あんたから殺気を感じなかったからかな。」
なんていってますが、内心ビビりまくりです。
「おもしろい。」
そういって男は一歩で間合いを離した。
「先刻の一撃は小手調べのつもりだが、そこまで見抜かれていたとはな。」
なんか適当にほら吹いてみたけど、過大評価されたみたいだ。もしかしなくてもこれはまずいんでね?
恐らく、この男はかなり強い。見た感じ、剣が恋人です、みたいな感じだ。
「では、次からは本気でいかせてもらう。」
男の斬激がくる。なんとか極限の緊張状態からは抜けられた。体が動く。
向かってくる男の剣を、俺の剣で受け止める。しかし、相手の力は俺のそれを大きく上回っており、つば競り合いにもなりはしない。
俺のガードなんてないかのように向かってくる斬激を避けるため、真横に飛びのく。だが
「甘いわ!!」
ほぼ垂直に向きを変え正確に飛びのいた俺に向かってくる。片手持ちに相手は切り替えたため威力は下がっているはずだ。これなら受け止められる。
「っ!」
考えが甘かった。片手でも男は充分俺より力が強い。ガードしたはずのに俺は吹っ飛ばされた。そのまま背中から壁にぶつかり、呼吸が出来なくなる。
「ぐふっ。」
息ができない。だからといって、動かないわけにはいかない。閉じていた眼を開け男を探そうとするが、俺の目の前には男が構えている剣があった。
「な!」
「こんなものなのかお前の力は?」
全然太刀打ちできなかった。俺はここに何をしに来たんだ。魔王を倒しにきたんだろ。人間に負けてるのに、そんな奴が魔王に勝てるのか。
……このままでは、帰ることが出来ない。別に楽しいことばかりではなかったけど、俺の帰る場所はあそこなんだ。こんなところでくじけている場合じゃない。
剣を握る手にもう一度力がこもる。やるしかない、やらないといけないという気持ちになれる。
「こんなところでは終われない。」
気がつくと俺の体が発光していた。俺の体内にある魔力が反応しているのだろうか?いまならなんでもできるきがする。
「な、なんだ!?」
男は驚きもう一度間合いをとった。俺の発光はとまったが、これなら勝てるという自信ができた。
「こっちからいくぞぉお!!」
俺は男がひるんでいるうちに速攻をしかけた。
男は左手に剣を握っている。なので右腕を狙い、全力で剣をふるう。
「ぬぅ!」
しかし、相手の反応のほうが一歩速かった。腰にあるもう一本の剣を男は抜きそれで応戦した。
「くそっ。やっぱ二刀流か!」
男の腰には二本の鞘があった。多分そうだろうとは思っていたが、これは分が悪い。
「いまのはすこし危なかったが、もう二度目はないぞ。」
奇襲作戦は失敗に終わった。ならば実力で勝つしかない。
身体能力の底上げと魔力による補助のおかげで何とか、男とも片手ならつば競り合いができるようになった。恐ろしい男だ。
「くっ!なんてやろうだ!」
「わるいが、俺は二本の剣をもっているんだぞ。」
そんなことは分かっている。二本目の剣が来る前に俺は、一度剣をひき体制を整えようとしたが、すぐうしろは壁だった。
「な!?」
後ろに下がれない。なんとかしゃがんで、避けた俺だが、顔を上げる前に、回し蹴りが飛んできた。
こいつ…、剣だけではなく体術の方もつえぇ。
意識が朦朧とするが、なんとか耐え、次の攻撃に備える。
「そろそろ終わりにしよう。」
男はそういいながら、剣を構える。本気の一撃が飛んでくるだろう。俺もいまだせる精いっぱいの攻撃をしかけるしかない。
「ハアァア!」
俺は防御をすて、捨て身で男に一文字に切りかかる。
男は、俺の攻撃を一本の剣でうけとめ、もう片方の剣で切りかかる。
俺は即座に剣から手を離し、拳で相手の剣をおもいっきり殴る。すると男の剣はそれて、俺には当たらなかった。だが、それに一瞬驚きながらも、すぐに男は鍔の部分で俺の首の後ろを叩いた。
「あっ!」
漫画とかでよくある攻撃だったけど、俺はよけることができず、意識が遠のいていく。
「--------。」
男がなにかをいったが何をいったかは俺には分からなかった。そのまま俺は意識を手放した。
更新がまたしても遅れました。すみません。
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