第5話 武器を手に入れた。
「ーー。--。」
なにをいってるんだ?疲れてるんだから後にしてくれ。
俺の心の声とは裏腹に誰かの声は大きくなっている。
「マィ―。マイキ!」
この声はユリスさんの声だ。王女様なのに、こんなに怒鳴っていいのだろうか。王女様ってのはもっとこう上品に、口元に手を当てて、「おほほ」といってるようなイメージなんだけど。
「はいはい、ただいま。」
流石にいつまでも待たせておくわけにはいかないから、ベットから起き上がり、ドアを開けた。
「おそいですよ!何をしてたのですか!?レディーを待たせるなんて、信じられません。」
レディー?とは口に出さずに、すんませんとあやまっておく。
「ところで、何しに来たんですか?王女様ってこんなところにくるほど暇なんですか?」
「グッ、べつに暇なわけではないのですが、その、きれいに部屋を扱っているかチェックを……。」
「それなら、アリスさんに頼めばいいんじゃないんですか?」
「……なんだか、私に会いたくなかったような言い草ですね。」
「いや~そんなことありますんよ~。」
「どっちですか!?」
おっと、ちょっと昨日の仕返ししてやるつもりだったがついやり過ぎてしまったかもしれない。ユリスさんはすっかり憤慨していた。
「で、どうですか、俺の部屋は?合格ですか?」
「合格?このゴミ袋だらけの部屋が?」
と、俺の後ろの部屋の中をひょいと覗き込むユリスさん。なるほど、いちゃもんつけにきたのか。だが、しかし……。
「!」
「どこにゴミ袋があるんですか?ユリスさん?(笑)」
そう、俺はあのいやがらせのように大量に置かれていたゴミ袋をすべて処分したのだ。我ながら頑張った。
「え?あ……その、すいません、私の見間違いでした。」
すごく悔しそうなこの顔。バカにしようとして来てみたら、逆バカにされてしまったこのなんともいえぬ顔。今にも、ギギギと音が聞こえてきそうだ。
「そうですか、よかったです。」
おれは、すごく爽やかな笑顔で答えた。いやーすがすがしいなぁー。この、強気でわがままそうな、王女様が、顔を真っ赤にして俺を見ているのだ。是非想像してほしい。
「では、私は用事がありますので。」
とても、悔しそうにそう言い捨てて、この場を去っていくユリスさん。その姿を俺は、さっきと同じ爽やかな笑顔で見送ったのだ。
「さてっと。」
先ほど朝ごはんを食べてきた俺は、部屋に戻り俺がこの世界に来た時に身に着けていた服(学校の制服)とそばに置いてあった剣を手に取った。正直この剣の存在には、さっき気付いた。ユリスさんがおいていったのかと思ったが、ユリスさんは部屋に入ってはいない。とすると、これはもしかしてラファエルからの、贈り物か?
「それにしても軽いな。」
思っていたよりも、剣は軽かった。ていうか、これ学生服の分の重みぐらいしか感じられない。
「まさか?」
試しに剣だけを持ってみたが、全く重さを感じない。すげー
「すげー。」
ちょっと軽く振りまわしてみる。
『ブン、ブン』
……けっこういい線いってんじゃね?
いや、他の人が使ってるのなんて、ユリスさんのぐらいしか見てないし、正直なところはよくわからないが、けっこう手になじむ。
「一応これをもっていようかな。」
今から掃除なんだけど、重さも感じないし、護身用もっていこう。
「そういや、魔法とかもこの世界にはあるんだよなー。」
俺は庭に向かいながら、考え事をしていた。
正直、魔法の事なんてほとんど分からない。分かっているのは、俺の属性は光って事位だ。
庭の掃除が終わったら、書庫室でみてみよう。こんなに広いんだから、そういう感じの部屋があるだろう。
「……つーか書庫室ってどこにあるのだろか?」
また、アリスさんのお世話になるのか?勇気を出して、他のメイドさんに声をかけてみようか。
と、考えを整理して、また新しい疑問が浮かぶ。
「そういや、特殊能力ってなんなんだろうな。」
別に身体能力が上がってることに意外に、変わったことはなかったような。しいていえば、剣の重さを感じなかったことかな。ん?
「もしかして、あれが俺の特殊能力なのか?」
物の重さを感じなくする?いや、服の重さは確かに感じたから、武器の重さを感じなくする能力か!?
まだ確信はできないが、おそらくそんな感じの能力なのだろう。もしかしたら、ラファエルが特殊な剣をれにくれただけかもしれないし……。
「なにはともあれ、この剣とは、長い付き合いになりそうだな。」
腰にかけてある剣を眺めて、俺はこの剣を大事にしようと誓った。
その時、一瞬だが剣が光ったような気がした。
「?」
見間違いだろうか、試しに剣を握って、素振りしてみると、かなり気持ちが良かった。空気抵抗をほぼ感じずに振りきれ、この風切り音がすがすがしい。
「す、すげぇ。」
なんだか、これなら魔王でも倒せそうな気さえする。そんなに甘いものじゃないとは分かっているのだが、そう感じてしまうほど、この剣は使いやすかった。だが、俺は剣術なんてものは知らないし、まだまだへっぽこなんだろう。だが、この剣と一緒なら、強くなれる気がした。
一旦剣をしまい、また庭へ歩き始める。
「なんか、楽しみだな。」
はやく剣を使ってみたくて仕方がない。
そんなことを考えているうちに、庭に着いたようだ。
「さぁて、さっさとおわらせるか。」
少しみじかくなりましたが、ようやく武器を手に入れました。そろそろ戦わせないと……。
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