第3話 勇者様(笑)
結論から言うと俺死んではいなかった。聞くところによると、彼女が切ったのは刃ではないところ、いわゆる峰打ちという奴で俺は気絶させられたのだ。
「……いてぇな」
まだかなり痛む。峰打ちと言ってもかなり痛い。どれ位痛いかというと、あ、俺死んだわ……と思えるレベルである。
あ、そうそう実は俺、今すごいところにいるんです。どこだか分ります?
牢屋ですよ。しかもまだ彼女の家(実はお城)の中に牢屋があったんです。さっき看守さんに聞いた(かなり俺と会話することをいやがってた)んだけど、ここは、この世界、ガイアっていうらしいんだけど、その中でもかなり発展した街で、カーテベルっていうらしい。んで、俺が今いる場所はカーテベル城の牢屋というわけだ。と、ここまでいえばもうすでにみなさんご理解していただけていると思いますが、俺が胸をもんだ彼女は、この城の王女様、ユリス=カーテベルさんなのでした。
これなんてエロゲ?
異世界にきて最初に会った女の人が、王女様だぜ。これもう絶対むこう俺に恋してる感じだろ。
だから、俺は今生きている。憧れのエロゲの主人公になれたんだ。これで、あとユリスさんの専属メイドとか出てきたら、最高だね。俺個人としては年上希望。
で、話を戻すけど、このガイアって世界には、魔王がいるってことだったじゃないですか。そいつを俺が倒さないといけないんだけど、今その魔王はこのガイアを5割ほど支配してるらしいんだよね。いつ現れて、どんな名前なのかも、看守さんは知らないらしいけど、そういう事を勉強してるひとは、知ってるらしい。なんか魔王について研究してる人がたくさんいるらしいよ。
さすがに、人間側としてもなにもしていないわけにはいかないから、いろんな国から騎士団を出して、交戦してるらしいけど、少しずつだけどおされてきているらしい。
とここまでが、俺が看守さんから聞いた情報。
「でも、どーすっかなぁ。」
俺は今捕まえられていて、魔王を倒しようにも何もできない。
「おい、勇者様(笑)ユリス様がお呼びだ」
ちなみに、勇者様(笑)とは俺の事だ。こうなったのも、俺がユリスさんに、俺は勇者だとしか名乗っていなかったせいでもあるんだが、ちょっとどころではない恥ずかしさがある。だが、今はそんなことより、ユリスさんが呼んでいるという事が大事だ。
「あいよー」
「お身体の方はもう大丈夫で?」
「あ、はい、もう大丈夫です。」
ちなみに俺が今話しているのは、ユリスさんではなくユリスさんの専属メイドをやっているアリス=カーテベルさんだ。すこし大人びた感じのする、まさに俺のタイプな人だ。年上のメイド……やっぱエロゲなんじゃね?
「よかったです。ユリス様も、お気になされたようなので。」
「あ、そうなんですか。」
以外だ……。正直、「不埒者を成敗してやりました」的な感じで清々しているんだとばかり思ってが、根はいい人なんだな。
「ここです。」
少しとはお世辞にも言えない距離を歩いて、やっと目的地に着いたようだ。この城どんだけ広いんだよ。
「中で、ユリス様がお待ちです。」
「はい。」
俺はこれまた、どでかい扉を開け、中に入った。
「ユリス様、勇者様(笑)を連れてきました。」
あんたもか!
「ありがとう、アリス。下がっていいわ。」
「はい。」
そういって、アリスさんは、奥の方へ消えていった。
「あの~「既にご存じかも知れませんが、名乗っておきますね。私の名はユリス=カーテベルです。」
かぶせてきやがった。なんて小さいことをしてくるんだ。
「えっと、なんで俺を呼んだんですか?」
「質問するよりも、名乗る方が先だと思いますが?まさか、勇者が本名では、ないでしょう。」
そんな名前でたまるか。
「あ、すんません。え~と、桜舞希です。」
「サクラ=マイキ?変わった名ですね。」
俺からしたら、あんたらの方が変わってるけどな、とはいわず、はぁと言っておいた。
「では、サクラと呼べばいいのですか?」
「いや、マイキでお願いします。」
なんか、桜だと、女の子っぽいから昔からいやだったんだよな。
「そうですか、では……マイキ。」
「はい、なんでしょうか?」
なにを改まっているのだろうか……。
「その……これから行く先なんてのは決めてますか?
「は?なにここに住ませてもらえんの」
なんという急展開。いきなり高感度MAXですか?どんなイージーモードですか?このエロゲ。
「いや、別に私としてはどうでもいいんですけど、お父様が妙に貴方を気にいってしまって、その……うちではたいてもらおうって……。」
「え、でも俺がここに住むのってユリスさんは嫌じゃないんですか?」
なんてったって、胸をもまれてるからな……俺に。
「嫌か嫌じゃないかでいうと、1000億%嫌ですが、お父様の事ですから何か考えがあるのでしょう。その辺は我慢しますわ。」
我慢って……。俺は害ですか?そうですか、そうですね。
「そうですか、ユリス様がそこまで俺と住みたいというんなら、ここで働かせてもらいます。」
そ、そんなこと言ってないですわって顔真っ赤にして言ってくれると思ってたが。
「あ、そうですか、残念ですがそういうことでしっかりはたらいてくださいね」
と全く感情のない声で返されてしまった。ボケ殺しってつらい。
「ところで働くってなにをすればいいんですか?」
ちなみに、俺は一人暮らしだったこともあるから、常人よりかは、遥かに自信がある。
「では、そこの庭でも掃いていてください。」
「まぁ、そんなとこだろうとは思ったよ。」
最初の仕事は、庭の掃き掃除だ。これをちゃんとこなせば、もっとましな仕事をさせてもらえるかも……。何気に、家事がけっこう好きな俺だけど、庭を掃いたりするのは、あまり好きではない。
さっさと終わらせるに尽きる。
俺は箒とチリトリを持って、庭にいった。(アリスさんに案内してもらった)
いつになったら、魔王を倒しに行くんだろう、俺。
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