お茶会にやって来た婚約者が、とびきり可愛いお嬢さんを侍らせています
ひとりぼっちのふたご
『お茶会にやって来た婚約者が、とびきり可愛いお嬢さんを侍らせています 』の後日談を童話風に書いたものです。
双子の女の子、アリーヌとフルールは大の仲良し。
普段はお父様とお母様、そして兄弟のいる領地で暮らしていますが、今日は隣の領地に遊びに来ています。
隣の領地には、大好きなコンスタンスお姉様がいて、いつも美味しいお菓子を作って迎えてくれます。
去年、双子たちの叔父様がお姉様のお婿さんになったので、お姉様とは親戚になりました。
それで、時にはお姉様の家で、お泊りしてもいいことになったのです。
ところが、楽しみにしていたお泊りなのに、フルールが熱を出してしまいました。
お医者様は感染するものではないけれど、念のため、とアリーヌに面会謝絶を言い渡しました。
アリーヌはひとりぼっちです。
いつも一緒のフルールが隣にいないと、寂しくてたまりません。
でも、お医者様の言いつけは絶対です。
「アリーヌ、一緒にお菓子を食べましょう」
お姉様が誘ってくれますが、食欲が出ません。
「アリーヌ、綺麗なボタンを見たくない?」
お姉様の侍女が、素敵な箱を開けて見せてくれます。
中には宝石みたいなボタンがたくさん入っていましたが、あまり興味が持てません。
「じゃあ、一緒にお見舞いのお菓子を作りましょう」
お姉様と手を繋いで厨房に行くと、キラキラした瑞々しい果物が籠に山盛りになっていました。
「きれい」
「このままでも素敵だけれど、この果物でムースを作りましょう」
「はい」
熱を出したフルールは、きっと冷たいお菓子を喜ぶでしょう。
メイドさんに手伝ってもらって、お砂糖を計ったり、グラスを並べたり。
お姉様が材料を混ぜている時に、美味しそうな香りに鼻をヒクヒクさせながら見守ったり。
氷の入った箱に入れて固まるのを待つ間、お姉様にご本を読んでもらいました。
うっかり転寝してしまいましたが、お姉様が優しく起こしてくれます。
グラスの中で綺麗に固まったムースの上に飾る果物を選ばせてもらい、お姉様が飾り付けるのをじっと見つめます。
「後は、おまじないをしましょう」
お姉様が、アリーヌに優しく微笑みます。
「おなじない?」
「フルールが、元気になりますように」
お姉様が指を組んで、言葉を唱えました。
アリーヌも真似をします。
「早く……ううん、ゆっくりでいいから、ちゃんと元気になりますように」
指を組んで一生懸命祈ると、お姉様が頭を撫でてくれました。
フルールが寝ている部屋の前まではついて行きましたが、まだ中には入れません。
しばらく廊下で待っていると、お姉様が出てきました。
「フルールがありがとうって」
「ムース食べたの?」
「ええ、少しずつ時間をかけて食べているわ。
さあ、わたしたちもお部屋に戻っていただきましょう」
「はい」
後は、部屋の中に居るメイドさんに任せて、おやつの時間です。
ムースは甘くて冷たくて、とても美味しいのでした。
ご馳走様の後、アリーヌは、フルールが元気になったら一緒に、綺麗なボタンを見せてもらおうと思いました。