表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦隊ピンクに復帰したけど、やっぱり引退したい  作者: 安田景壹
第一章 戦隊ピンクの戦後

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/50

戦隊ピンクの戦後 8

 太陽系。宇宙の暗闇のある一点。

 ケルベロス牢獄の最重要獄舎を接収した旧型宇宙戦艦クイーン・サスペリアが、小惑星帯の一部に擬態して、ひっそりと留まっている。


 希代の宇宙犯罪者、ギャン・デスペラード率いる暴虐集団ギャンギャングの本拠地である。宇宙戦艦は太陽系外の惑星から強奪したもの、獄舎は囚われた最重要囚人たちごと奪ったものだ。太陽系はまだ大人しくなったほうだが、宇宙というのは悪党どもが跳梁跋扈する邪悪の暗黒地帯である。組織を巨大に、そしてその影響力を宇宙の隅々にまで広げるには、それなりの実績が必要だった。


「どうなっている? シュレッダ・ザクギリー」


 ギャン・デスペラードは戦艦の指揮所で、手駒である囚人の言い訳を聞いていた。ギャン・デスペラードの肉体は屈強そのもの、頭には地球のソンブレロにも似た王族の帽子、青い肌に身に着ける数々の装飾品とスペースシルク製のケープ。下は竜の皮で仕立てたトラウザーズにブーツ。


 地球の人間は言うに及ばず、宇宙に慣れた者でさえ近づく事を恐れるであろう威容。


「ギャンギャンスタンプのインクが濃くなっていねーじゃねえか。このままじゃ支配が進まねえ。どうなってやがるんだ?」

『……だから、首領。すまねえ。言った通り、急に妙な奴が現れたんだ。例の戦隊はまだ戦い慣れていないって聞いていたが、新顔のピンクは妙にこなれていやがって』

「おれが聞きたいのは言い訳じゃねえ、シュレッダ・ザクギリー。今後の計画だ。人間どもの〝ピースフル〟を地獄の底まで落とす計画は立ててあるんだろうなあ?」


 酒を呷り、グラスを乱暴に置く。すかさず、度数の高い火炎の如き酒が、グラスに注がれる。

 首領の酌を務めるのは、ギャンギャングの女幹部、妖艶な肢体をレザーのボンテージで封じ込めた、ソーマ・ザ・プシュケーである。


「シュレッダ。ギャンギャンスタンプは宇宙魔術界の秘宝。絶対支配を可能とする力。お前ならできると判断したから首領は印を押したの。その期待に背くことは許されないわ」


 艶やかな声で、ソーマは言った。


『わかっている! オレ様だってこのまま手をこまねいているわけじゃない! 首領、すでに次の計画は立ててある。必ずや地球をあんたに献上しよう。もう少しだけ待っていてくれ』


 暴虐集団の首領はしばし沈黙したのち、酒をひと息に飲み干した。


「……いいだろう。シュレッダ・ザクギリー」


 コン、と軽やかにグラスが置かれる。


「お前の手腕で、人間どもに悲鳴を上げさせろ。特に新顔のバーニンピンク、そいつの悲鳴はぜひとも聞きたい。生け捕りにして、おれの前まで連れてこい」

『了解した、首領。すぐに成果を上げてみせよう』


 通信が切れた。


 ソーマがグラスに酒を注ぐ音だけが聞こえる。


「いいの? シュレッダの奴、息巻いていたけれど、所詮はただの通り魔でしょ。口ほどの事ができるかしら」

「できなきゃ死ぬだけだ。とはいえ、奴もケルベロス牢獄で千年単位の冷凍刑を受けていた囚人。少しは根性見せてもらわなきゃな」


 さっきよりも落ち着いた口調で、ギャン・デスペラードは言った。


「ドクター・ヘルタイム。次の囚人の解凍までどのくらいかかる?」


 問いかけられた人物は、のっそりと影から現れた。薄汚れた白衣には様々な計器が取り付けられ、顔面に装着したモノクルがぎらりと光っている。


「ざっと、地球時間で二四〇時間ほどですな。首領」


 懐中時計を見つめながら、ドクター・ヘルタイムと呼ばれた人物は答えた。


「やはり、囚人としてのレベルが高ければ高いほど、解凍には時間がかかります。申し訳ないが、こればかりは短縮できませんので。ご承知おきを」

「……いいさ。仕方ない。スタンプを無駄押しするわけにもいかないからな」


 今一度、酒を口にし、ギャン・デスペラードは言った。


「だが、シュレッダの後押しくらいはしてやろう。ソーマ、あの用心棒を呼んでくれ。ジャンク・ザ・ジャックを」

「あいつ――」


 ソーマは苦々しげに言った。


「『本当に出るべき時までは寝ている』なんて言って、どっか行っちゃったわよ。今頃、船のどこにいるやら」

「探せ。せっかく拾ってやったんだ。あいつにも働いてもらわないとな」


 それから、ギャン・デスペラードは独り言のように呟いた。


「地球の戦隊。噂通り手間をかけさせてくれるじゃないか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ