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戦隊ピンクに復帰したけど、やっぱり引退したい  作者: 安田景壹
EXエピソード 1 宇宙で一番小さな……

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宇宙で一番小さな…… 3


     3


 昼の公園には幸いな事に誰もいない。

 鉛筆を削り、削りカスをビニール袋に捨てる。スケッチブックを開くと、当然、真っ白な最初の一ページが目に映る。

 描けるだろうか。頭の中には絵がある。ぼんやりとしたアニメ調のキャラクター。剣を持つ主人公に、魔術師の少女。


 わからない。でも、そっと鉛筆を動かしてみる。想像通りに、頭の中のイメージを描けるように。

 没頭というよりは、試行錯誤だ。わからない。うまく描けているとは思えない。だが鉛筆を動かす。顔が描けてきた。髪型はよくわからない。余計な線をずいぶん描いている。消しゴムをかけると、鉛筆の跡が黒く引っ張られる。真っ白なスケッチブックの最初のページが、見栄え悪く汚れる……。


「……」


 出来上がった絵を見て、しばし無言になる。いやまあ、自分が今しがた描いた絵に対して、わざわざ口に出してコメントする必要はない。

 下手だ。

 これは才能がない。


 頭と身体のバランスはてんでばらばらで、持っている物がかろうじて剣と判別できるが、その刀身は妙に湾曲した線だ。仮に作品というものが、それを作り出した作者自身を示すというのなら、この絵は春彦自身を表している。

 出来が悪い。


「はあ……」


 一気に後悔が押し寄せる。いくらセールだからってスケッチブックなんて買うべきじゃなかったんだろうか。鉛筆はおろか、鉛筆削りまで買ってしまったというのに。しかも、全て使用してしまった。もはや返品もできない。


『お前の絵、やっべえな』


 頭の中で、昨日春彦を殴った不良が言う。


『喧嘩も弱いうえに絵も下手なのかよ。やっべえよ、お前。ぎゃはははは!』


 その後ろで、不良に絡まれていた女子学生が、ドン引きした目で春彦を見ている。


『……きしょい』


 ――ああ。ああ。全てが終わっている。全てが駄目だ。全てが――


「――ああ、芸術活動だね。地球じゃわりとやる人いるんでしょ?」


 子どもみたいな声が、唐突に耳に聞こえる。思わず顔を上げると見慣れないシルエットが、目の前にあった。

 大きな頭に、少しばかりの小さな棘がついている。ぎょろりとした大きな目はぐりぐりと動いて、スケッチブックと春彦の顔を見比べる。妖精とかそういう感じの、大きな尖った耳。濃い感じの肌色の皮膚。


「これは狙って描いた画風なの?」


 冷静に聞いていたら眩暈(めまい)がするような質問も、今は頭の中を突き抜けた衝撃のせいで、咄嗟に答えられない。


「……う」

「う?」


 きょとんした顔で聞き返されたその瞬間、声のほうが勝手に春彦の飛び出した。


「宇宙人だーーーーーーーーーーーっ!?」


 自分でも信じられないような大声が公園の中に響き渡った。

 宇宙人が、咄嗟に耳を抑えながら顔をしかめる。


「え、何。今時珍しくないでしょ、宇宙人なんて。ちょっと、ユーイチロー。何か話違うよ?」


 不満そうな声を上げた宇宙人が後ろを振り返ると、スーツ姿の男性が困ったように頭を抱えていた。


「バンバン、いくら何でも急に話しかけるから……」

「な、な、何なんですか、あなたたち……」


 気が動転するという感覚を春彦は実感していた。こんなの子どもの頃以来だ。驚きで、頭が回らない。


「ボクはバン・バーニヤン。通称バンバン。銀河エネルギー管理庁から派遣されて地球にやってきた科学者だよ。こっちの彼はタツマキ・ユーイチロー。今度地球防衛連合内で新設される、ある組織の総司令をやっている。今日は君に用があって来たんだよ、トモシビ・ハルヒコ君?」


 バン・バーニヤンは次々と言葉を繰り出し、春彦の頭を混乱させた。まるで呪文のようだったが、単語だけは聞き取れるので頭の中でリフレインしてしまう。科学者? 銀河エネルギー管理庁? それに地球防衛連合?


「何で……僕の名前を……」

「事は地球防衛に関わる重要な話だ。超法規的措置という奴だね。とにかく、ボクらは君の事をある程度までは知っている」


 宇宙人という事を忘れさせるくらいの滑らかな日本語で、バン・バーニヤンは言った。


「地球防衛って……」

「バンバン、先走り過ぎだ」


 スーツ姿の男性が諫めるように言ったが、バン・バーニヤンのほうに気にした様子はない。


「本題にはさっさと入るべきだ。こうしている間にも、危機は迫っているからね」


 そう言って、バン・バーニヤンは服のポケットから、ブレスレットのようなものを取り出した。


「いきなりですまないけど、芸術活動はしばらくできないかもしれない。戦いが始まるんだ。かつて四度この星で起こったような戦いが、おそらく、もうすぐね」

「ごめんなさいホントに何の話ですか……」

「任命だよ」


 ブレスレットに取り付けられた青いクリスタルが、陽光を受けてきらりと光る。


「トモシビ・ハルヒコ君。君に新しい戦隊レッドをやってもらいたい」


 バン・バーニヤンの大きな目が、春彦をしっかりと見据えていた。鉛筆がぽとりと手から落ちて、からからと乾いた音が聞こえる。何を言われている? この宇宙人は春彦に一体何を求めている?


 ――戦隊レッド?


「……はい?」

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