表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦隊ピンクに復帰したけど、やっぱり引退したい  作者: 安田景壹
第三章 五代目戦隊の戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/50

五代目戦隊の戦い 14

 いちはやく分析を終えた泉君が叫ぶ。


「地球へ向かっている! 衝突した瞬間爆発する!」

「っ、バーニンジャーロボ!」


 私たちの意識が、ブースターを再起動させる。もはやバーニンの残量を気にしている場合ではない。極大加速したバーニンジャーロボは赤く熱されながら、地球へ迫るネガティブエネルギー・コアを追う。


「必殺剣は!?」

「あと一回!」


 私は答えながら、バーニンジャーロボに構えを取らせる。地球はもうすぐそこだ。ネガティブエネルギー・コアが大気圏へ刻一刻と近付いている!


「ゲート形成!」


 ネガティブエネルギーによる僅かな時空の歪みを利用し、バーニンで素早く移動ゲートを形成。距離を縮める。剣の届く範囲まで――!


「「「「「バーニンジャーロボ必殺剣!!」」」」」


 最終加速――最後のバーニンが刀身を流れる。


「「「「「爆新ワープ斬り!!」」」」」


 コアと刀身が接触する。その瞬間、ぶつかり合うエネルギーが渦を生み出し、巨大な衝撃波を生んだ。耐えられない。バーニンジャーロボは剣とともに弾き飛ばされる。

 地球へ――青い星へ。


「うわあああああっ!?」


 もはや誰が声を上げているかもわからない。バーニンジャーロボはぐるぐると回転しながら大気圏へと突入。猛スピードで落下する。その到達地点は――


「海だ!」


 落下予想地点を確認した私は叫ぶ。


「衝撃に備えて!」

「いや、無茶――!?」


 侑夏がそう言った瞬間、猛烈な衝撃とともに、バーニンジャーロボは海へと落下した。



 静かだった。

 コクピット内は照明が消えている。真っ暗だった。システムがダウンしている。警報さえ鳴っていない。

 私は手探りで、コクピットの緊急開閉レバーを探す。落下の衝撃で気を失っていたらしい。ふらふらとするが、幸いスーツは無事だ。身体機能を回復させるだけのバーニンがスーツに残っている。


 レバーを見つけ、下方へと動かす。コクピットのドアが開錠された。

 外へ出ると、やはりそこは海上だった。温かなオレンジ色に染まった空が見える。真っ赤な夕日が、水平線の向こうへと沈もうしていた。


「あ、みさとさん!」


 ヘルメットマスクを外した侑夏が私に気付いた。ほかのメンバーも、すでに外へ出ていた。皆、ヘルメットマスクを外している。どうやら怪我をしている者はいないようだ。


「大丈夫ですか!? みさとさん!」


 灯火君が駆け寄ってくる。私は、頷いた。


「大丈夫、何ともない。皆は?」

「平気です。バーニンジャーロボが守ってくれたみたいで」


 近くの岩礁にバーニンソードが突き刺さっている。私は、空を見上げた。


「……ネガティブエネルギーは?」

「そっちも問題ありません」


 答えたのは泉君だ。


「つい今、バンバンと連絡が取れました。地球へのネガティブエネルギーの飛散、および地球近辺にネガティブエネルギーの反応はなし、だそうです」


 すぐに迎えがくるみたいですよ、と泉君は付け加える。

 よかった。

 作戦は成功し、戦隊メンバーは皆無事だ。誰も欠けていない。


「つまり、あの夕日を今しばらくは眺めていられるって事ですよ」


 そう言って、夜見君が笑った。

 バーニンジャーロボが夕日に照らされている。海は穏やかだった。


「いやー……でもボロボロすぎ」


 侑夏がちょっと疲れた様子で笑った。


「地球を守るって、ホントに大変だね。先輩戦隊たちなら、こんなにボロボロにならずにやれるのかな?」

「そんな事はない。最初は皆、こんなもんだよ」


 私は即座に言った。


「何はともあれ、地球は守れたんだ。まずはそれでいいんじゃないかな」

「まあ……それはそうなんだけど」


 夜見君の言葉にも、侑夏はどこか不安そうだ。


「――もっと、強くなりたいな」


 そう言ったのは灯火君だ。


「これから、もっと強い敵が出てくるなら。そんな奴らとも戦えるように、強くならなくちゃ」

「焦ってもしょうがない。今はやれる事をやるしかないさ」


 泉君が夕日を眺めながら言う。


「……ねえ、なれるかな」


 侑夏もまた夕日を見ながら言った。


「うん?」

「わたしたち。今よりもっと強い奴とも戦って、何度宇宙に行っても、どこに行っても、最後はこうやって皆で夕日を眺めていられるような戦隊に……。わたしたち、なれるかな?」


 それは――

 わからない。この地球でかつて戦った四つの戦隊は、必ずしも戦いを終えて幸せになったわけではない。

 辛い結末だってあるのだ。この戦いが地球を守る戦いである以上。

 だが、もし――


「それは、すごい事さ。戦いを終えて、無事に帰り、こんな気持ちでいられるような戦隊は。ただの戦隊じゃない」


 夜見君がそう言うと、少しして灯火君が、私を振り返った。


「あの、姫木さん……もしそんなチームになれたら。僕らがギャンギャングとの戦いを終わらせて、またこうして夕日を見られたら――」

「どんなふうに呼ばれるかな、世間の人からは」


 泉君が独り言のように言った。

 私は夕日を見つめる。数多くの失敗をした。私は、とても立派な人間とはいえない。でもそんな人間が、またこうして新しい仲間と戦隊をやっている。もし、今度こそ(あやま)たず、誰も失わず、使命を全うし皆と一緒にいられるなら――


「……そんな戦隊になれるなら。もしも、そんな戦隊がいるのなら――」


 岩礁に突き刺さったバーニンソードが、夕日に煌めいた。


「〝スーパー戦隊〟とでも、言うんじゃないかな」



 旧型宇宙戦艦クイーン・サスペリア艦内――その指揮所に集った三人、ギャン・デスペラード、ソーマ・ザ・プシュケー、そしてドクター・ヘルタイムは事の顛末をモニターで見ていた。

 ホムンクルス、爆散。

 ネガティブエネルギーはバーニンによって打ち消された。


「……やれやれ」

「ちぇ~~。つまんなーい。地球、爆発しなかったじゃな~~い」

「ふん」


 ギャン・デスペラードは酒を呷り、モニターを眺める。バーニンジャー。予想以上に、やる。いや、しかし予感はあった。あの五人なら、この程度の危難を退けるだろうという予感が。逆に言えば、まだまだ楽しめるという事。ギャンギャングと爆新戦隊バーニンジャーとの戦いを――……

 ふっ、と。

 蝋燭の明かりを消すかのように、指揮所の照明が落ちた。


「――何事です?」

「ちょっと、急に何なの!? 動けないんだけど!?」


 ……動けない? 確かに、そうだ。玉座に座ったままのギャン・デスペラードも、そこから立ち上がる事ができない。何か、見えない力で抑えつけられているかのような。

 魔術の波動――


「首領」


 ぱっ、と。ひとつの照明だけが灯った。

 その下で、襤褸のようなマントを纏った者が跪いている。傍らには異形の剣。復讐の女神の顔を彫刻した大剣がある。


(いとま)をもらうぞ。俺は旅立つ事にする」


 ジャンク・ザ・ジャック――流浪の剣士となったギャンの手下が、鋭い切っ先のような目を向けて、そんな事を言った。


「おれの元を離れるのか、ジャンク」


 身動きは取りづらいが、酒くらいは飲めるようだ。ギャン・デスペラードは酒瓶を口に運ぶ。

 この魔術――おそらくジャンク・ザ・ジャックが放ったもの。発動まで一切気が付かなかった。やはり、こいつは凄腕だ。ギャンが見込んだ通りの。


「ああ、そうだ。やりたい事ができたのでな」

「邪装騎士に戻るってか?」


 ジャンク・ザ・ジャックは、首を横に振り、剣を持って立ち上がる。


「過去を見るのではない。未来に向かいたいのだ」

「……ふん。未来、ねえ」

「お別れだ、首領。短い間だったが、世話になったな」

「お前の事は買っていた。どうしても行くのか? ここでなら好きなだけ暴れられるってのに」


 ジャンク・ザ・ジャックはくるりとマントを翻した。


「誰かの元で探せる道ではない。さらばだ、デスペラード」


 言って、ジャンク・ザ・ジャックは虚空に消えるかのように、その姿を消した。

 照明が元に戻る。身体を抑えつけていた超常の力が、消える。


「……ねえちょっと。今の、ジャンクの奴?」


 動けるようになったソーマ・ザ・プシュケーが問う。ギャン・デスペラードは鷹揚に頷いた。


「ああ。暇乞いだ」


 酒瓶を呷り、ギャン・デスペラードは皮肉気に嗤う。


「……まったく。頂点(てっぺん)を獲るのも楽じゃねえな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ