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戦隊ピンクに復帰したけど、やっぱり引退したい  作者: 安田景壹
第三章 五代目戦隊の戦い

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五代目戦隊の戦い 10

《それ》は、太陽系の暗黒の中から転送され、傍目にはゆっくりと、だが、実のところは驚異的なスピードで進んでいた。

《それ》に、意思と呼べるものはなく、ただ胸の裡に抱え込んだ衝動があるばかりだった。


 ――破壊。内側で熱く鼓動する強い破壊の衝動。


《それ》は、自身が生命であるかどうか、という意識を持たなかった。《それ》は、ただ一つの目的のために生み出され、急成長させられ、そして今は宇宙の中を進んでいた。


 ――あそこに行けばよい。あそこに向かえばよい。


 衝動に突き動かされながら、《それ》は宇宙を進む。


 ――あそこに行けばよい。あそこを壊せばよい。


 進路の先にあるのは、青く輝く星、地球である。



『三分前の映像だ』


 優一郎の言葉とともに、小型モニターに軍事衛星が撮影した映像が映し出される。

 宇宙空間のようだった。月に近い位置に、巨大な白い影があった。全長百メートル以上はあるだろうか。筋肉を白い表皮で包み込んだ人型で、頭部には一つ目らしい部位が見える。


『月の軌道上に、巨大な怪物が出現した。以前に出現したギャンギャングのホムンクルスと同タイプだ。だが、以前よりもサイズは大きく、観測されるネガティブエネルギーの量も比べ物にならない』

「どのくらい?」


 私の問いに、優一郎は硬い表情のまま答える。


『……仮にこのホムンクルスが爆発した場合の推定威力は五〇メガトン以上。アラタ市はおろか、日本列島が消し飛ぶほどの威力と試算が出ている』


 バーニンマシンの格納庫に集ったバーニンジャーの面々に緊張が走った。


「それが真っ直ぐ地球に向かっている。このままのスピードだと、おそらく五時間後には到達するだろう」


 バン・バーニヤンがあとを引き取った。

 ――あと五時間。


『万が一にもこれを地球に侵入させるわけにはいかない。君たちバーニンジャーには、バーニンマシンでこれを宇宙空間で迎撃してもらいたい』

「皆にはすでに確認してもらっているけれど、今回の作戦では爆新合体が不可欠だ。じゃあこれからの作戦を説明するね」


 説明された作戦内容自体は単純なものだった。問題は、多くの要素が練習なしのぶっつけ本番である事だ。合体、ロボット、そして宇宙での戦闘。


「十五分後に全員宇宙へ上がる。準備して」



 格納庫では、五体のバーニンマシンが整然として横並びに収まっていた。自然と、私たちはそれぞれ己の専用マシンの前に立っていた。

 最初に口火を切ったのは、侑夏だった。


「……宇宙、かあ。わたし、初めて行くよ」


 言葉とは裏腹に、その声には緊張が含まれている。


「俺、二回目」


 泉君がさらっと言うと、


「あ、僕も……」


 おずおずと灯火君が手を挙げた。


「え!? 二人とも行った事あるの? 宇宙って案外身近だな!」

「人類が宇宙進出してから十年だからねえ。行った事がある人も、そんなに珍しくないんだろうね」


 夜見君がしみじみと言った。


「えー。冬二さんも行った事ある?」

「私はないねえ。姫木さんは何度目です?」

「……数えた事ない」


 三回も戦隊に所属していたのだ。宇宙に上がるのもそう珍しくはなくなった。


「……まあ、宇宙での実戦は、姫木さん以外は全員初めてなわけですが」


 夜見君の言葉に、三人の表情が硬くなる。


「緊張する事ないよ。バーニンスーツのアシストはしっかりしている。ロボでの戦闘も始めたらあとは身体が動くよ」


 土壇場というのはそういうものだ。始めたら、やるしかない。


「みさとさーん、それ感覚的過ぎてフォローになってないですよ~」

「説明書読まずに家電に触るタイプですね」

「……何か、雑な人間だと思われてない? 私」


 ははは、と灯火君が笑う。


「でも、何だかやれそうな気がします。今の皆でなら……」


 そんな事を言う灯火君を、私たちはじっと見つめ、


「何しみじみと言ってんだ」


 とん、と泉君が灯火君の肩を小突いた。


「え!? 何で!?」

「春彦、さっきめちゃくちゃ大暴れしてたじゃん。今回もあの調子で頼むよ~~」

「頼りになる若手が出てきて嬉しいよ」


 私も調子を合わせて言った。


「みさとさんまで! もう、皆で頑張ろうよ~~!」

「ははは、もちろんさ。ここが踏ん張りどころだ」


 そうとも。夜見君の言う通り、ここが正念場だ。私は格納庫の時計を見た。灯火君も同時に時計を見ていた。

 そろそろ搭乗時間だ。


「じゃあ――」


 灯火君に続いて、夜見君がバーニンチェンジャーを付けた左手をおもむろに構える。


「行きましょうか」

「ええ。――緊張するなよ、風祭」

「するでしょ、こんなん! そっちこそ、合体ミスらないでよ。アッキー!」


 泉君と侑夏も、言い合いながらもバーニンチェンジャーを構えた。


「よし。行こう、皆」


 私は、言った。

 五人の、全く別の人間たちが、一つの戦隊としてまとまっていく感覚――


「「「「「バーニンチェンジ!」」」」」


 クリスタルをタップする音が重なる。格納庫に光が満ちる。

 爆新戦隊バーニンジャーが、バーニンマシンに乗り込み宇宙へと出撃する。

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