五代目戦隊の戦い 3
コメットガンの銃身が熱を帯び、バーニンブラスターが奇妙な音を立てる。様子がおかしい。高い出力のまま連射し過ぎたせいか。
「仕方ない!」
バーニンブラスターを投げ捨て、クリスタルを素早く叩く。エンゲイジアックスを取り出し、コメットガンで弾幕を張りつつそれを捨て、迫りくる剣の一撃を迎え撃つ。
「本当に腕を上げたな! メグルンピンク!」
鍔迫り合いは拮抗。私とガルドランは弾かれたように一度距離を取る。
「あの時は、まるで小娘だった。とても生き残れるような戦士ではなかった」
よく覚えている。十年前、メグルンピンクとしてこいつとここで戦った時、私には到底勝ち目がなかった。双子怪人をほかのメグルンジャーがこの場所に引き連れてくる事で、無理矢理混戦状態を作り出し、何とかガルドランに怪人を一人倒させたのだ。
「昔の事を忘れられないクチか。先に進めないね、そんな性格じゃあっ!」
エンゲイジアックスを振り下ろす。刀身の根元でガルドランはそれを受け止める。復讐の女神がぎょろりと私を見る。
「お前……一人になったな」
「何を……!」
「その強さ。他者を拒み、自分だけで強くなろうとした者の強さだ。メグルンレッドを失ったのがそんなに堪えたか!」
「黙れ!」
エンゲイジアックスで相手の首筋を狙う。ガルドランはふわりとそれを躱してみせた。返す刀で、ガルドランの魔剣が私の顔を裂く勢いで振るわれる。軸をずらすように回避。反撃に出る。
「あの男は俺にとっても得難い男だった! ガルゴルの息子ではなく、騎士ガルドランである俺と戦った男! 俺が仕留めなければならなかった男だ!」
――こいつ!
「やはりレッドを殺したのか!?」
「知りたいか! ならばもっと怒りを燃やせ! 憎しみを滾らせろ! 仇敵はここいるぞ! 貴様らにとって大事な男を奪った者だ! その斧で、我が首を落としてみせろ!」
嵐の如き剣撃の連続。斧で弾くのがやっとだ。だが、隙は必ずある。倒す。今日こそ、こいつを倒す。彼らが、この舞台を用意してくれたのだ。今ここで、倒さなければ!
胴体ががら空きだ。咄嗟に前蹴りを放つ。バーニンで強化された蹴り足はガルドランの甲冑にさえ響く一撃となる。苦悶の声を上げて、ガルドランが跳びずさる。
「――そうだ。その調子だ。お前も戦いだけの存在となれ。余計な事など、全て忘れろ。俺やお前のような者に、仲間など必要ない」
「……一緒にしないでもらいたいね」
「そうかな」
剣士が、襤褸のようなマントを脱ぎ捨てる。マントの下は剥き出しの肉体だった。かつては威厳さえあった鎧は半身分が破壊され、その破損部分はいくつもパイプやケーブルが飛び出たままの機械の身体だ。
「その身体……」
「あの暗闇から生き延びた代償よ。俺の肉体は、今や半分以上が機械だ。エネルギーエキスを摂取し続けなければ動く事もままならぬ。修めた魔術も大半が失われたわ」
相変わらずの皮肉気な笑みを浮かべて、ガルドランは言った。
「苦労を重ねたようだね。レッドの話だけは聞かせてもらう。余生をゆっくり送りたいわけでもないだろう。お望み通り戦いで倒してやる」
「聞いてどうする。それでお前の怒りが収まるわけではない。メグルンレッドが消えた事は、お前にとって戦い続ける理由となったはずだ。あの時の真実を聞けば、お前はそこで止まってしまうかもしれぬ。戦いを失い、老いさらばえていくのはみじめだぞ」
「お前に心配される事じゃない」
「俺が言いたいのは、喪失は理由になるという事だ。心に穴が開き、その穴を埋めるために戦い続ける。俺や、お前のような生きるのに暴力を使ってしまう者にとっては必要だ。取り返しのつかない変化をもたらすほどの喪失がな」
「一体何を……」
……いや、待て。
こいつはさっきから何でこんな話をしている?
「……お前の仲間」
復讐の女神を柄に持つ魔剣が、ゆらりと持ち上げられる。
「今は、プリィズンと戦っているな?」
「何を……」
邪装騎士ガルドラン――かつてそう呼ばれていた男は、かつては見せる事のなかった凶悪な笑顔で、言った。
「ロック・ロック・プリィズンのエネルギーは間もなく臨界点を突破する。お仲間のバーニンジャーごと、街一帯を滅ぼしてやる」
「はあ、はあ……!」
スタンプで支配されつつある肉体が重い。バーニンレッドは、敵に操られたバーニンブラックの攻撃を寸でのところで躱す。バーニンブラックの棍棒――グランドスマッシャーがコンクリートの塀を破壊する。
「ぐっ……! すまない!」
バーニンブラック――夜見冬二が言う。意識は支配されていない。操られているのはあくまでも肉体だけだ。何とか、このスタンプを消す事ができれば。
「うぅ…ぐっ……あがっ!」
肝心のロック・ロック・プリィズンは、今や苦悶の表情で地面に伏し、身体を丸めている。岩石のようなその肉体の隙間隙間からは青い妖光が漏れ出ている。
「ねえ……っ! あれって!」
重たい身体を引きずり、何とか仲間同士の攻撃を躱しつつ、バーニンレッドは叫んだ。レッドだけではない。ここにいるバーニンジャーの誰もが気付いている。何かがおかしい。あの怪人の肉体の中で、何かが起こっている。
『――皆、ごめん!』
バーニンチェンジャーの通信機能が起動する。バン・バーニヤンの声がした。
「バンバン!?」
『ギャンギャンスタンプによる――ネガティブエネ――ルギーが渦巻いている! 通信が――安定――しない!』
途切れ途切れになりながらも、バン・バーニヤンは話し続ける。
『その――怪人の中――で、ギャンギャンスタンプのエネルギー――が――臨界――点に到達し――ようとしている! あと、一分くらいで爆発する!』
「ええっ!?」
全員の声が重なった。




